『 愛すればこそ − 後日談 − 』
さて、うさぎのフランソワ−ズにはお兄さんうさぎがおりました。
おおきな耳と強い脚を持つこのお兄さんうさぎはジャンといい、それはそれは
妹うさぎを可愛がっておりました。
ある日の午後、だんだんと雨脚が強まってくるなかジャンはまだ帰ってこない
妹うさぎが心配になってきておりました。
と、そこへ・・・
「 お兄さん、フランソワ−ズのお兄さん! 大変!!大変なの!! 」
妹の親友・カトリ−ヌが泣きながら駆け込んで来ました。
「 カトリ−ヌ、どうしたんだい?! まさか・・・フランソワ−ズに・・・? 」
「 ・・・ジャンお兄さん・・・フ、フランソワ−ズが・・・茶色狼に・・・!! 」
カトリ−ヌはそれだけ言うのが精一杯、あとはわあっと泣き伏してしまいました。
「 なんだってっ!! 」
篠突く雨が上がりようやく巣から出られたのは もう陽も傾いたころでした。
「 フランソワ−ズッ 」
ジャンは大急ぎで野原まで跳ねてゆきましたが、そこには妹うさぎの姿どころか
茶色狼も誰もみつける事はできませんでした。
― ただ しろつめ草の花冠が雨に濡れて落ちているだけでした。
「 ・・・これは・・・フランソワ−ズが編んだ・・・
せめて・・これを・・身代わりに・・・お墓に・・・
でも・・・もしやどこかで 生きていてくれたら・・・」
泣きながら妹の形見を抱きしめ、それでもジャンはこころのどこかで
諦めきれずにおりました。
― それから一ヶ月がたちました。
ジャンは知っている限りの野原や雑木林で妹うさぎを捜し、森の仲間たちにも
尋ねまわりましたが 誰もが悲しそうに首を横に振るだけでした。
「 可哀相だけど・・・フランソワ−ズは食べられてしまったんだよ・・・ 」
半ば自分でも諦めながらジャンは再びあの野原へやってきました。
「 ここに来ると 今でもお前がいるような気がして・・・
・・・もう、終りにしなくちゃいけないのかもしれないなあ・・・ 」
ジャンは哀しい吐息をはき 咲きみだれるしろつめ草を眺めていました。
すると。
― がさがさがさ・・・・
なんと一匹の茶色狼が草をかき分けあらわれたのです。
しかも その背中には真っ白なうさぎがちょこんと乗っかっているではありませんか!
その上どうやら 二人は楽しそうにおしゃべりをしているのです。
「 ふ、フランソワ−ズ !! 」
狼の存在も忘れジャンは二人の前に飛びだしました。
「 ジャンお兄さん!! 」
茶色狼も妹うさぎもお兄さんうさぎも みんなびっくり仰天です。
「 フランソワ−ズ・・お前、生きていたのか、無事だったんだね! 」
「 お兄さん・・・! わたし、わたしね・・・あの・・・」
ジャンは妹うさぎをきゅっと抱きしめ・・たかったのですが
茶色狼が怖くって少しずつ後退りしながらでもしっかり妹をみつめておりました。
「 フランソワ−ズのお兄さんですか。 僕はジョ−、見ての通り狼です。
でもでも。 僕はフランソワ−ズが大好きなんです。フランソワ−ズも僕のことを・・・」
茶色狼は照れくさそうに少し顔を赤らめ (? どうやって ? )言葉を切りましたが、
勇気を奮い起こしてまた話し始めました。
どうやら お人好しの照れ屋サンの狼のようでした。
「 お兄さん・・・ 僕は僕の命を懸けて一生フランソワ−ズを守ってゆきます!
だから。 どうか彼女と一緒にいる事を許していただけませんか・・・? 」
三人の眼差しがしっかりと交わされ会いました。
「 ・・・ジョ−君、といったね。 ― 妹を・・・頼む。 」
「「 お兄さん !! 」」
ジャンはもう一度しっかりとフランソワ−ズに視線を当てるとニコッと笑いました。
「 幸せに・・・な・・」
そうして くるりと振り向くと大きく跳ねて去ってゆきました。
「 お兄さん・・・ 」
涙ぐんでいるフランソワ−ズをジョ−はペロッと舐めてきゅうう〜っと抱きしめました。
「 幸せに・・なろう・・ね ? 」
シアワセな二人はその後も あの野原に来るたびに
遠くから見守っているお兄さんうさぎの姿を見かけるのでした。
そして みんないつまでも幸せに暮らしました。
*** おしまい ***
後書き by ばちるど
【 NORDY 】の 夢見照様・著 『愛すればこそ』 にイッパツで参りまして・・・・
即!妄想させていただきましたのが、この後日談です。是非是非、本編『 愛すればこそ』 を
お読み下さい〜い♪♪♪
Last update : 11,13,2002