『 守られていると感じた瞬間 - 異郷の山中にて - 』
一瞬、 その凶暴なサイコ・ウェ−ブの嵐が吹き止んだ。
身体を金縛りにしていた 強固な意志の戒めがゆるむ。
そのわずかな隙をとらえて 003は素早く移動した。
力なく地面にうずくまっている青年の許へ
茶色の髪を乱し、 頭を垂れている009の傍へ
「 ジョ−・・・! 大丈夫、しっかりして・・・・! 」
自身も側に屈みこんで 彼の肩を揺すり耳許でささやく
- まどわされたてはダメ。 これはみんなワナなのよ・・・!
「 ・・・・・・ ・・・・・ 」
必死の問いかけに、セピア色の瞳はうつろに開かれたまま、
その焦点は結ばれていない。
「 ・・ちがう・・ちがう、ちがう! ママは・・そんなオンナじゃ・・ない・・! 」
「 ええ! そうよ、勿論よ! それはまやかしなの、ゆめ、悪夢なの。
あなたのお母様はすばらしい方だわ! 」
初めて見る 彼のあまりに無防備な、心許無いその姿に
たまりかねた003は そっと009の身体に腕を廻した。
- 突然、それまでぎりぎりと締め付けられていた
僕のこころは 解放された。
ふわり・・・と羽よりも軽い いい香りのするベ−ルが
僕を、 僕のすべてを蔽った。
・・・・・ あたたかい ・・・・・・
ああ ・・・ あらゆるマイナスの感情が ゆっくりと
中天の闇に溶け去ってゆく ・・・・・
誰かが あなたを爪弾きにしても
世界中のヒトが あなたに背をむけても
わたしは。
わたしだけは あなたのそばにいるわ。
だって。
わたしが わたしでいられるのは あなたがいるから。
わたしが 生きてゆけるのは あなたがいるから。
あなたは わたしの すべて だから。
わたしの全てに変えて 命にかえて
わたしは あなたを護るわ。
ジョ−。
あなたは わたし なのだから。
僕は その華奢な腕のなかで 静かに目をとじた。
( 了 ) top
Last updated: 11,7,2003.
****** ひとこと *****
テカ編、クライマックスに近いアノ場面です。 ともちゃんのイラストは壮絶です〜♪
このイラストは各務りか様の『Precious』付き特典として 頂きました。<(_
_)>