『 ロッカ−・ル−ム 』
「 ・・・あ、島村かい? う〜んと。 さっきまでそこでコ−ヒ−飲んでたんだけどな・・・ 」
「 あら、たった今まで、ここにいたわよ? ねえ、ジョ−君、いたわよねえ? 」
そんなスタッフさんたちのちょっと困った声音に笑顔で会釈して。
広すぎてまるで勝手のわからないサ−キットの中を フランソワ−ズはもうかれこれ30分以上ウロウロしているのだ。
― ジョ−。 どこにいるの?
テスト走行だから。 ・・・・ あの、もし。 気が向いたら、時間があったら・・・ 来てみてくれる ・・・・?
そんな風に言われたら 何としても来たくなっちゃうじゃない?
本番まえに会いたいの。 会って 差し入れと ・・・ <courage!>の おまじないキス をあげたいのに・・・
・・・・・ ちょっとだけ ・・・・ ズルしちゃお♪
― ジョ−。 み ・ つ ・ け ・ た ・ !
・・・・・ ちがうヒトかと ・・・・思ったわ・・・。 全然知らないヒト、みたい・・
そっと<捜した>ロッカ−・ル−ム。
そこには いつもの茶色の髪とセピアの瞳の持ち主を見つけることができたけれど。
どこまでも冷徹で 強い意志に研ぎ澄まされた瞳の 【 009 】
やわらかくて おだやかな眼差しをした 優しくてちょっと淋しがりやの 【 ジョ− 】
熱く・篤く・激しく。 わたしを翻弄し愛して目茶目茶にしてくれる 【 あなた 】
・・・ そんな わたしが知っている、どのあなたともちがう、 一人のオトコ 島村 ジョ− がいたわ。
もしかして。
これが ほんとうの あなたなの。 ありのままの あなたの姿なの。 生地だけの あなたなの ・・・・
こっそり邪魔してごめんなさい。 大丈夫、誰にも言わない、教えない。 あなた自身にも 教えてあげないわ。
そうしてね。 一番大切なものをしまっておくわたしの胸の ロッカ−・ル−ムにそうっとしまっておくの。
「 ・・・おいっ! ジョ−のヤツを呼んで来いよ! あんな美人をぼんやり待たせるなんて許せんからな〜 」
そんなスタッフの ひそひそ話を 一向に気に留めるようすも無く。
蒼い目の少女は バスケットを大事そうに抱えて ざわついている控え室の片隅で 楽しそうに嬉しそうに
ちょっとだけ首を傾げて 亜麻色の髪をゆらして。
待っている ・・・・ 待っている ・・・・ ロッカ−ル−ムのあのヒトを。
( 了 ) top Last updated: 10,25,2003.
***** ひとこと *****
いえ、もう。ともちゃんのイラストが全てを語っていますので。 蛇足・駄文でした(遁走!)