『  絡む指   − 見果てぬ夢 − 』 

 

 

 

 

「 ・・・・ このまま ・・・・ 」

「 え? 何か言ったかい。 」

「 う、ううん。 なんでも・・・・ないわ。 ジョ−こそ・・大丈夫? 」

 

振り向いたやさしいとび色の瞳に わたしはあわてて微笑みかえした。

わたしが手を添えた彼の手は 傷だらけ、でも・・・ 温かい。

 

 − この温もりを。  独り占めしたい・・・・!

 

このまま。

どこか 遠くへにげましょう・・・! そして

こっそり ふたりきりで 暮らしましょう・・・!

 

突然

わたしの口から わたしの声で

でも  わたしの意志とは全然ちがった言葉が溢れ出そうになった。

 

 − 全然ちがう・・・? いえ。 違わない、ソレはわたしの真実 ( ほんとう )の望み。

 

何もかも。

そう、 なにもかも全てのしがらみを 

すっぱりと この砂漠に捨ててゆけるなら。

全ての過去を  現在 ( いま )に縛られた未来を

すっきりと あの空のむこうに放り出せるなら。

 

 

でも それでは。

あなたが あなたでなくなり  わたしが わたしでなくなる

でも それは

あなたの 望みではないし  わたしに 許されることではない。

 

 

・・・・ それでも、なお。

 

 

全てをかなぐり捨てても 自分の欲しいモノに手を伸ばした あの女 ( ひと ) が

全てを失っても 愛する人の為に生きようとした あの地下に眠る少女が

わたしは

羨ましいのだろうか

わたしは

嫉ましいのだろうか

 

見果てぬ夢を 本気で追ったあの女 ( ひと ) たち・・・・

 

わたしは 眼下に遠ざかる砂漠に 嫉妬の視線をのこし。

そして。

操縦桿をにぎる彼の手に 力を込めて指を絡めた・・・・

 

 

 − これは。  わたしだけ、 のもの。

 

 

( 了 )                         top

Last updated:06,09,2004.

*****   ひとこと  *****

例のアノ話の 最終場面・・・・かな? 

フランソワ−ズがどうしてビ−ナの言葉を知っているか、は謎です!