『   髪を梳く   − 春風に −  』  




「 ・・・・し〜っ! 」
「 あん? ・・・ ああ。 わかったよ。 」
「 美女の物想いを妨げるのは あまりに不粋 ・・・ 」
「 ものおもいぃ? ってか、ただの居眠りと違うか? 」
「 し、しぃ〜〜〜! 」


岬の先端に ぽつんと建つ洋館 − ギルモア邸。
そこに棲むのは ・・・・

春も まだ浅い昼下がり
温暖なこの地方の海にむかって大きく開いた窓から微風が ひと吹き ・ ふた吹き
窓辺に陣取る乙女の髪を ひらり ひらり と梳いてゆく


「 ・・・・なに考えているアルね? 今晩のおカズアルか? 」
「 お前さんじゃ あるまいし。 」
「 ・・・ なにか 探索しているのか? 」
「 う〜ん・・・ それにしちゃあ 緊張感がイマイチだね。」
「 はは〜〜ん・・・。 お前、昨夜しつこ過ぎたんじゃねえのか? 今夜は寝かさないよ、なんて〜 」
「 ぼ、僕たちは 別に そんな! 」
「 は! いまさら白々しい・・・ 」


流れる風は まだちょっと冷たさを含んでいるけれど
ただよう潮の香には たしかに早い春の訪れが感じられる。
ようやっと芽を覗かせてきた花たちも このところぐん・・・・っと背伸びをしようというもの。
そんな景色を 眺めているのかいないのか。
両肘で支えた白い頬には 濃いまつ毛がゆらゆらその影をおとしている。


「 やっぱり。 なにか気になる兆候でもあるんだろう。 」
「 かも、な。 イワンが眠っている間は彼女の能力( ちから )が 頼りだから。 」
「 おい。 お前、余計なコトして彼女の戦力を削ぐなよ! 」
「 だから〜〜 僕たちは そんなんじゃ・・・ 」
「 はいはい、 そ−ゆ−コトにしておこうな? とにかく 今は 静観だ。 」
「 はいな。 邪魔しないコトがイチバンの協力アルね。 」
「 静観は 最大の援護なり、か・・・。 」
「 し、し〜〜〜! 」

 
吹く風が 亜麻色の髪を梳いてゆく
たむろする姦しい??・むくつけき男どもを 歯牙にもかけず。
窓辺にまどろむ美女がひとり

ゆらり ・ ゆらり となびく亜麻色の髪が
この邸にも 春の訪れを告げていった。

ある あまりに平和な 早春の昼下がり・・・・・



  ( 了 )           Last updated: ,03,12,2004.        top


*****  ひとこと  *****
i-maさま宅の<お絵かきBBS>での フランちゃんがあんまり気持ち良さそうでしたので・・
拉致ってきてしまいました♪ ほんとにな〜に考えてるのぉ?(>_<)