『  星空の下  』  

 

 

ガサ・・・・

近くで葉擦れの音がする度に彼女の顔にきゅっ・・・・と緊張感がはしる。

「 大丈夫だよ、何にもいない。 このへんは昼間、何回も来てるだろう? 」

先に立つ青年は茶色の髪をゆらし ちょっと笑みを含んだ顔で振り返った。

「 きみが、そんなに驚くなんて。 なんか・・・可笑しいな。 」

「 ・・え、ええ・・・。 そうなんだけど。 やっぱり夜は・・・気味が悪いわ・・ほんの、ちょっとだけ・・・。 」

「 アタシだって003なのよ、って言ったのは誰? 」

「 い ・ じ ・ わ ・ る ! 」

「 ・・・・って! 」

珍しい彼の軽口が嬉しくて 彼女は思わずその柔らかな髪をくい・・・っと引っ張った。

<待ち>という変則的な緊張の日々が続くなかで、やっと二人きりになれたのだ。

一応は辺りを警戒しつつも 彼女は嬉しさに頬が染まって行くのを隠しきれていない。

 

「 ねえ、何処まで行くの? この先に、なにかあった・・? 」

「 うん、もうすこし。 」

獣道にちかい、ヒト一人がようやく抜けられるような細い道筋を彼は踏み分けてゆく。

左右はもちろん、頭上にまで鬱陶しく多種多様な緑が視界を塞いでいる。

大自然の中での夜には 黒暗々の闇が豊かに息づいているのだ。

 

「 ・・・・ ほら。 着いた・・・・ ! 」

「 え・・・・ わぁ ・・・まぶしい・・! 」

く・・っと腕を引かれて 最後の茂みを抜け辿りついたのは。 

はるか海をみおろす絶壁の上だった。

 

そして。

 

中天に懸かる おおきな満月。

しらじらと 不思議に冷たさまで伝わってくるその輝きに彼女は思わず目を瞬かせた。

 

「 ・・・すごい、わね。 いつ見つけたの? 天然のアリ−ナ席ね。」

「 ああ、特別招待席さ。 どうぞ、お姫さま・・? 」

「 ・・・ あ ・・・・・・・ 」

差し伸べられた手に触れたと思った途端、

ふわりと抱きすくめられ 気が付いた時には彼の膝の上で唇をふさがれていた。

「 ・・・・だ・・・めよ、 こんな所で・・・ ジョ−・・・ きゃっ・・・」

辛うじて顔をずらせば 襟元から差し込まれた手がたちまちのうちに胸を外気に晒している。

「 お、願い。 や・・・・め・・・ あ  」

熱い舌で頂点の蕾を夜気の許に花開かせつつ 彼の手は脇から下腹、太腿へと滑ってゆく。

「 そ・・・・んな・・・ああ・・・ どうして・・・そんな くっ・・・・ 」

全身を震わせ すでに抗うことを放棄した彼女の中へ彼の巧みな指がするっと忍び込んだ。

 − もう言葉は彼女の口から発せられはしない。

密やかな水音と共に愛の流れが溢れ出てきた。

 

余計なもの全てを剥ぎ取ると 彼は彼女をそっと地上に横たえた。

 

   夜のあかりの下、 そのしなやかな肢体は真珠色に輝いている。

 

「 ・・・・ さあ。 お月さまのくちづけを 全身に浴びるといい。 そうして もっと・・・もっと・・・ 」

 

中天から、そして息のかかる側から。 

白銀の、 そしてセピア色の眼差しで。

凝視されている羞恥に 薔薇色に染まりはじめた身体へ彼はゆっくりと覆い被さっていった。

 

                             ( 了 )    top                   Last updated: 10,31,2003.

 

                  *******  ひとこと *******

                     『 海底ピラミッド編 』での例のあのシ−ンの….前後を埋めてみました♪