アトラント |
老魔術師。ロジェロの養父で、異常な愛情でロジェロを可愛がる。
ロジェロの双子の妹マルフィサの話によれば、 ロジェロ達を保護したところまでは善人のようであるが、それが段々と偏執的な家族愛に変わてしまう。恐らく魔法使いとしての異常さと寂しい老人としての固執が相乗効果でこうなったのだろう。
やることがおかしいのは一度脱け出したロジェロをさらい、 さらに引き止めておくために紳士淑女をさらってミニ社交界を作ろうとするという発想。魔法使いの思考回路には恐れ入る。そのために魔法を駆使するのにも恐れ入る。それほど強力な魔法使いならもっと世の中のためにできただろうに。
結局ブラダマンテの活躍でさらわれた人が解放されたので、彼は一人寂しく暮らすこととなったとさ。少し可哀想かもしれないが、活動的な若者がずっと屋内に閉じ込められるのはもっと可愛そうな話だと思うし。 |
アンジェリカ |
カタイ(中国の古名)の王女。シャルルマーニュの宮廷を混乱に陥れるために、父王ガラフロンから弟のアルガリアと共に派遣された。アルガリアに勝ったら自分を献上するという昔話的な報酬で実際混乱に陥ったわけだから、その試みは成功したわけだ。
だがそのカタイ王国自身もタタール王アグリカンの軍に包囲されてしまったことが誤算だったであろう (アグリカンとオルランドの一騎討ちは本作中一二を争う決闘シーンである)。
しかしアンジェリカの不幸は、やはり彼女とオルランドとリナルドが魔法の泉の水を飲んでしまったことであろう。その影響が2章から15章まで続くのだから、 偶然とはいえガラフロンの作戦は思いのほか効果があったことになる。
その後のアンジェリカは不幸なヒロインのたどる道をいくつもたどりながら、最終的に自分の幸せを発見してイスラムの若者メドロと結婚するという地味な形で退場する。人をだまして不幸になり、改心して小さな幸せを得るという、物語に一人はいておかしくない登場人物だった。
なんか中国系の国もイスラム教国のように扱われている。 |
オベロン |
妖精王。モルガナと同じく、ヨーロッパの伝説にしばしば登場する。
彼はユオンの課せられた使命を知っていたが何故か無条件で協力し、重要なアイテムを与えている。彼の目的がキリストの敵の力をそぐことだからだろうか?それともユオンの将来に期待して、 ここで使命に失敗することによってその希望が潰えるのを防ぎたかっただろうか。
でもユオンが一度嘘をついたからって、肝心な時に現れないのは行き過ぎなのでは?
嘘はいけないという教訓も分かるが、それだと融通が効かなくて妖精らしくない。それが妖精のムラ気なんだと本編では触れていたが。私はむしろその後ユオンを助けることになるゴーディソの横領発覚こそが、オベロンの気の利いた手助けだと思いたい。 |
ガラフロン |
カタイ王。自分たちの子供であるアンジェリカとアルガリアを、 強力なマジックアイテムを持たせてフランスに送り、シャルルマーニュの破滅を狙っていた。
そんな遠くにまで領土的野心を持っていたのか、 そんな遠くでもシャルルマーニュの脅威を感じてしまうほどフランスを警戒していたのか。
さすが大国中国だけあって、情報通だし使い勝手のいいマジックアイテムを持ってる。 だがタタール王アグリカンに一時は首都アルブラッカを占領され、
要塞に篭城するまで追い詰められたが、 アンジェリカの協力要請に応じたオルランド達の活躍でタタール軍を敗走させるにいたった。 それ以降ガラフロンの登場はない。
と考えるとフランスを警戒していたが、 協力してもらったのでその警戒心を解いたということなのか? |
カラヒュー |
モーリタニア王。イスラム教徒で、やはりフランスに侵攻してきた。
恐らく指揮能力も高いのだろう。シャルルマーニュを追い詰めるところまで行ったがオジエの活躍に阻まれ、キリスト教徒への勝利の運は潰える。
だが彼にとっては良かったのかも知れない。カラヒューはオジエに一騎打ちを申し込むが、双方を殺そうとするシャルロの邪魔を退けることによって、オジエとの友情を得ることができたのだから。しかもその後フランスに侵攻してきたアラビアのスルタン・ブリュイエ率いるイスラム軍との戦いに、自ら援軍を率いてフランスに味方するのだ。指揮能力、戦士としての能力と共に心情的にも好感が持てる人物なのだ。
恐らくシャルルマーニュ側はキリスト教に改宗して欲しいと思ったであろう。でもその記述がないのでそのままイスラム教徒であり続けたと思いたい。なんでも好人物がキリスト教徒であるという内容だとつまらないので。
なんか十字軍時のサラディンを匂わせるような登場人物ではある。シャルルマーニュの時代に、実際にキリスト教徒とイスラム教徒が手を組むこともあったという話だし。 |
グラダッソ |
セリカン(中国の古名)の国王。
一騎討ちでも強いが、もっと強いのが珍品コレクターとしての欲望。名剣ドゥリンダナと名馬バヤールが欲しくてフランスに侵入してきたのだ。この時はそれなりに礼儀をわきまえた君主との印象を受けるが、段々強欲さが前面にでてるのは気のせいかな?
同じくドゥリンダナを求めるマンドリカルドと戦って敗れてマンドリカルドの下働きをさせられていたが、そのマンドリカルドがロジェロに討たれたためドゥリンダナを手に入れることに成功する。続いてバヤールを求めてリナルドと決闘していたが、その途中で逃げだしたバヤールを運良く発見して求めていた二つのものを手に入れる。これに加えてアグラマンと協力したことがあるからグラダッソは完全にフランスの敵となった。
運が悪いのは二つの物を持って帰国の途中で、敗走するアグラマンと出会ってしまったことだ。加えてドゥリンダナを持ってることで慢心してオルランドとの決闘を持ちかけてしまうことだ。
そしてアフリカでの決闘ではようやく一騎討ちでの強さを発揮してフロリマールを殺す(フロリマールがはたして強いのか疑問だが)。だがオルランドに討ち取られて、奪ったものを取り返されて終わる。本筋とは関係ないところで活動する敵として面白かった。
ところでセリカンとカタイの関係はどうなってるんだろう?触れられてなかったなぁ。 |
サクリパン |
チェルケス王。アグリカンに首都を包囲されている時に、最初にアンジェリカが援軍要請を行った相手。
アンジェリカに惚れているので早速援軍を伴って駆けつけたが、アグリカンとの一騎討ちで負けそうになり、さらにチェルケス軍自体もタタール軍に敗走してしまうといういい事なし。
アンジェリカを追ってフランスに侵入したが、 途中で挑戦したブラダマンテとリナルドに一騎討ちで敗れる。しかも双方ともアンジェリカの目の前で。あげく逃げ出したアンジェリカを捕まえることができなかった。そしてアンジェリカがメドロと結婚したのをきっかけに忘れられたように登場しなくなる。同情すべき悲しき王。好きな女性の前で恥をかくことほど男にとって悔しいものはないはずだからね。これは地位や名誉や力では手に入らないものはあるよ、という意味があるらしい。
ちなみにチュルケス王国は黒海の西北方となっているので、ルーマニア辺りのの東欧系の国だと思われる。明らかにトルコを表しているとしか思えない国名ではあるのだが。 |
ゼルビノ |
スコットランドの王子。ガリシア王国(スペイン北西部)の御前試合に参加し、すべての試合に勝つ。そして王女イザベラと相思相愛になるが王家がイスラム教徒なので許されず駆け落ちする(名前や地理的にもスペインにいるキリスト教徒っぽいが)。
だが途中で部下のオデリックという騎士が裏切り、マガンツァ家(恐らくガヌロンの親族と思われる)につかまってしまう。 そこでオルランドに救ってもらう。
登場シーンがフロリマールに並ぶくらい情けない。
その後すぐ発狂したオルランドに代わってドゥリンダナを守ろうとするが、マンドリカルドと戦って討ち死にする。いくら相手がドゥリンダナを奪っていたからといって、御前試合での実力はなんだったんだろう。不幸なイザベルはその後を追って死ぬことになるし。
話は変わってリナルドに討たれたダルディネル王子の仇討ちのために二人のイスラム兵
(うち一人はアンジェリカと結婚するメドロ)がシャルルマーニュの駐屯地に侵入するエピソードがすぐ後にある。その時にイスラム兵が遭遇するキリスト教騎士の警備隊の隊長がゼルビノという名だが、これは関係あるのかな?関係ないにしては登場時期が近すぎるし。でも同じにしては時間軸が合わない。メドロに遭遇してる頃、マンドリカルドとオルランドに会っているはずだから。 |
メリッサ |
尼僧であり善の魔法使いでもある。 言ってしまえばRPGにおける僧侶だ。
マーリンの墓標を守っているので、マーリンの弟子なのかなぁ。 マーリンも魔法使いというよりはドルイド僧の方が近いので、あながち遠くは無いかも。といっても、メリッサは間違いなくキリスト教の尼僧だろうけど。
マーリンの霊の言葉に従ってブラダマンテがアトラントの元からロジェロを救うための方法を教えるのが、二人の女性の最初の出会いである。それ以降も幾度となくブラダマンテの窮地に知恵や魔法での協力を惜しまない。
一体ブラダマンテがどんな人格かを把握しているのかは疑問だが、善人であることは確かなようなのでマーリンの命令に従うのも良しとしたのだろうか。でもどちらというと二人とも行動的な性格なので、友情のようなものを感じたのかもしれない。
イスラムからキリスト教国家を守るという目的も同じだし。
ただ誠実な騎士道然としているブラダマンテと比べて、何故か尼僧であるメリッサのほうが気転が利く。 |
モルガナ |
ヨーロッパの数々の伝説にも登場する妖精の女王。本編では二度ほど登場する。
一度目は勇士達をどこかに閉じ込める障害として。彼女の妹のアルシナも配下の魔女ファレリーナも同じことしてたなぁ(アトラントも)。障害にぶつかった英雄が行う冒険の一つを演出したような格好で、実はさして印象に残るエピソードではない。
二度目はオジエの話に登場し、こちらの方が本来のモルガナっぽいイメージがする。オジエを祝福する六人の貴婦人の中の一人として登場するが、モルガナは特にオジエがお気に入りだったようだ。一通りの成功を収めたオジエを一度自分の島アヴァロンに住まわせ、浦島太郎状態にしてしまう。そして一度はフランスに戻すがそこで活躍すると、再びアヴァロンに魔法で連れてきてしまう。
英雄に協力は惜しまないが、気まぐれな妖精としての部分も併せ持っている。
そういえばモルガナ、アルシナ、ロジェスティラの三姉妹の内モルガナは明らかに妖精だが、他の二人はどうも半妖精的なイメージがある。ロジェスティラなんか特に、『指輪物語』におけるエルロンドのような雰囲気がある。 |
レオ |
東ローマ(ビザンツ)帝国(本編ではギリシャとなっている)の皇太子。この当時の東ローマ帝国はかなりの力をもっていたはず。年表から考えるとコンスタンティヌス5世の息子で、後のレオン4世のことをさしてると思う。
作中ではブルガリア王国に奪われたベオグラードを取り返す戦いに従軍して登場。以前からシャルルマーニュの親族であるブラダマンテに求婚していたが、ブラダマンテと結婚するには剣の腕が必要といわれてブルガリア王国に味方して捕虜にしたロジェロを自分の代わりに使うことにする。
しかし、結局ブラダマンテがロジェロを好きだということを嫌というほど知らされたレオは、求婚から身を引くことを選んだのだった。
ローマ人に共通する策略家であるが、良心ある貴公子の一面を持っている。東欧の色のある国家が短い間だけど出てきたので、違う雰囲気が楽しめてよかった。 |