江戸が闇に包まれ、完全に、とは言えないまでも和解し、手を結んだ龍閃組と鬼道衆の主だった精鋭が《崑崙》へと向かってしばらく。 龍閃寺に待機している円空の元に、客人があった。 「失礼。…龍行は」 弥勒である。 「おや…惜しいのぅ。ついさっき見回りに出たばかりじゃよ」 「では、これを渡しておいて頂きたい」 と、弥勒は担いでいた袋を縁側に置き、すぃ、と身を翻した。 「ほっほっほ、そう急かんでもよかろう? 鬼哭村の様子も聞きたい事じゃし、少しあがっていくとよい」 少しの間の後。 「…邪魔でないと言うなら」 迷った後でそう言うと、弥勒は足を戻した。 「しかし、重そうじゃが、それは何なのかの?」 弥勒を案内しつつ、円空は尋ねる。 「これは…」 隻腕で荷物を支えつつ、弥勒が答える。 「俺が彫った面と、雹が選んだ糸繰り人形だ」 「…?」 どういう意味か、と円空が顔をしかめた。 「以前に、少々事があって。隠してはいたが…落ち込んでいたようだったのでな」 「ほほぅ…」 円空が目を細めた。 「幸せ者じゃの、龍行は…」 |