<双星伝>番外編 曲唄・幕引



 江戸が闇に包まれ、完全に、とは言えないまでも和解し、手を結んだ龍閃組と鬼道衆の主だった精鋭が《崑崙》へと向かってしばらく。
 龍閃寺に待機している円空の元に、客人があった。
「失礼。…龍行は」
 弥勒である。
「おや…惜しいのぅ。ついさっき見回りに出たばかりじゃよ」
「では、これを渡しておいて頂きたい」
 と、弥勒は担いでいた袋を縁側に置き、すぃ、と身を翻した。
「ほっほっほ、そう急かんでもよかろう? 鬼哭村の様子も聞きたい事じゃし、少しあがっていくとよい」
 少しの間の後。
「…邪魔でないと言うなら」
 迷った後でそう言うと、弥勒は足を戻した。
「しかし、重そうじゃが、それは何なのかの?」
 弥勒を案内しつつ、円空は尋ねる。
「これは…」
 隻腕で荷物を支えつつ、弥勒が答える。
「俺が彫った面と、雹が選んだ糸繰り人形だ」
「…?」
 どういう意味か、と円空が顔をしかめた。
「以前に、少々事があって。隠してはいたが…落ち込んでいたようだったのでな」
「ほほぅ…」
 円空が目を細めた。
「幸せ者じゃの、龍行は…」


―終―



後書き

ようやく終わりました。中盤間延びしてしまってすみませんでした。
心残りと言えば、登場キャラです。
火邑とか泰山とか真那とかも出したかったですね。火邑はシーンを用意してもうまく絡まなかったので没にしましたし…
…まぁ、クリスとか嵐王とか最初から綺麗に忘れていた人もいましたが。
それにしても、いつも思うんですが…何でご先祖様はそんなに仲悪くないのに、なんで子孫はああなっちゃったんでしょうかねぇ…
いえ、鬼道衆のことではなく、龍行と壬生の事なんですが。

ちなみに、この幕引は<双星伝>本編と、はるか未来への伏線になっています。
何時かそれを見た時に思い出してくれれば幸いです。

ともあれ、ここまで読んでくださった皆様にお礼を述べまして、『曲唄』終幕とさせて頂きます。
(2002,6,17)



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