ハビラムは砂に埋もれ
そこに住む人も
宿る人もいない・・・・・・






砂漠幻想・2






 「ねえ、フォルカス・・・。」
 風のセイレーンが恋人に尋ねた。
 
 「この砂漠を見て何か感じない・・・?」
 「別に。」





 「ねえ、フォルカス・・・。」
 風のセイレーンが恋人に尋ねた。

 「この弓を見て何か思い出さない?」
 システィーナが差し出したのは砂塵の弓、ハビラムから伝わってきた弓だった。
 「別に。」
 「・・・・・・・・・・・・」





 「ねえ、フォルカス・・・。」
 風のセイレーンが恋人に尋ねた。

 「時を越える想いって信じる?」
 システィーナの質問に彼は暫らく考えて言った。
 「・・・考えた事はないな、君は?」





 嘘でもいいから信じるって言ってくれたらわたしはどんなに嬉しいだろう。





 「あのバカを燃やしてやろうか?」
 そう言ったのは一番上の姉だった。

 「あの役立たずの上に岩を落としましょうか?」
 そういったのは2番目の姉だった。

 「フォルカス様にフェンリル落とす?」
 そう言ったのは妹だった。





 システィーナは淋しげに微笑んで首を横に振った。





 記憶は風のセイレーンに甦る。恋人が殺されてこの地にあった王国を滅ぼした。遠い遠い記憶だった。わたしでありわたしでない者の悲しい想い。恋人は彼と同じ顔をして彼と同じ性格で彼と同じ声をしてわたしの名を呼んでいた。
システィーナ・・・
システィーナ・・・・・・


 「システィーナ・・・。」
 笑顔も同じ。
 「システィーナ。」
 違うのは砂塵の弓でなくその手に持つのは火竜の剣。

 「何? フォルカス。」

 少しだけ元気をなくした恋人に彼は真面目な顔をして言った。
 「僕の君への思いは時を越えるよ。」

 生真面目な顔でそう言った恋人にシスティーナは笑った。
砂塵の弓を持ったあなたもそう言っていたわ・・・。





 システィーナは恋人に言った。
 「この次はあなたが先に思い出してね!」
 「・・・?」
 きょとんとする恋人に風のセイレーンは笑いかけた。

 その時思い出すのはきっと幸せなわたしたち。砂の記憶はきっと悲しみではなく喜びだわ。





 砂の王国がこの地に眠る。
 わたしの想い、彼の想い。





 砂が風に舞う・・・・・・
 








シリアスでもなくかといってコメディーでもなく・・・。
砂塵の弓が頭に刺さり記憶が甦るってなっても、
悲しみの記憶だからやっぱり中途半端な話かなあ。
(2003.11.23)



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