花言葉





 セリエ・フォリナーが自宅に戻ってくると、暖炉のある部屋に3人の妹たちが集まって何やら楽しそうに話していた。

「これはオリビアよね?」
「シェリー姉さんよ。」
「じゃあ、これはシスティーナ?」

「…?」
何の話題だろうかと思って顔を出す。

「あ、セリエ姉さん。」
「お帰りなさい。」
「何を話していたのだ?」
セリエが尋ねると、オリビアが一冊の分厚い本を見せた。

「お花の本。いろんな珍しいお花が載ってるの。システィーナ姉さんが王宮の図書室から借りてきたのよ」

花とか好きなシスティーナらしいことだと思う。

「システィーナは庭の片隅に自分専用の花壇を作るんですって。」
シェリーがセリエに告げた。

…暇なことだと思うが、まあ好きにしたらいい。

「それで、システィーナ姉さんはフォルカスに育てたお花をあげるのよね。」
「違うわ、バナヘウムが殺風景だからお花飾ったらいいと思っただけよ…」
と顔を赤らめながら言い訳する妹を見て、セリエの頭の中にクソ真面目な優等生の顔が浮かんだ。あれから何年もたつのに、全く進展はなさそうだ。

「で、どの花を植えようかと相談してたのか?」
と、セリエが聞くと、オリビアが違うと答える。

「図鑑の終わりにいろんな花言葉が載っていて、それ見ていろいろおしゃべりしていたの。」
「花言葉?」
「そう、花にそれぞれ象徴的な言葉をのせたものよ。たとえばね、赤い薔薇は“愛情”…」
「暇な人間が考えそうなことだな」
説明しようとしたシェリーにセリエはそう言った。シェリーはため息をつく。
「姉さん…。」
「駄目よ、シェリー姉さん。セリエ姉さんはそんなのに興味ないわ、ねえ?」
末妹がセリエに同意を求める。
「そうね、姉さんは薔薇とゾリアの区別つかないし…」
「役に立つのがゾリアだ。アウェイキングの原料…」
「もういいわ、あっち行ってて。」
シェリーがセリエを追い出す。2人の妹も同意見らしい。

何か言いたげだったがセリエは黙って部屋を出て行った。

「どうして姉さんはああなのかしら?」
呆れた口調でシェリーが言った。
「いいんじゃないの?花を綺麗って見つめるセリエ姉さんなんて想像できないわ」
システィーナがのんびりと言う。
「きっと姉さんの頭の中は花も草も一緒よ…。」
「情緒の欠片も無いのね、らしいと言えばそうだけど…。」
そんな会話を交わす姉たちの横で黙って図鑑を見ていたオリビアが言った。

「ああ、セリエ姉さんはこれ!」

どれどれと2人の姉がオリビアの指差した花を見る。
そして、ぶーっと吹き出した。


「絶対枯れるまでそれね!」


笑いながらシェリーはシスティーナに言った。
「あなた、これ蒔きなさいな…」
「いやよ、セリエ姉さんがこれだってわたしたちが笑ったと知ると姉さん、きっと燃やすわ…」



オリビアの指先にある花の名は、コスモス
花言葉は
        “乙女の純潔”…





END(2003.2.4)

…冗談っぽいけど、セリエはこれかなと。

戻る