魔法を使うということ




末の妹が生まれた時、母は生死の境をさまよった・・・
命はとりとめることができたが、母はその時以来床に伏せがちになった

母はバンハムーバの女神官に育てられた捨て子だった
人は皆、火・大地・風・水
この何れかの属性を持つのに、母は無属性だった・・・
―――というよりも、全ての属性に変化した


それゆえ、母の運命は決まっていたのかもしれない


娘を4人生んだ
わたしとシェリーとシスティーナとオリビア
属性が全て違うフィラーハの娘たち・・・
いずれバンハムーバでそれぞれの巫女になる

そう教えられて育った












・・・わたしの魔力は弱い・・・
わたしはそれがわかる

わたしが炎神の加護を受けたのは、十を過ぎてからだった・・・
わたしの中の魔力が溢れるのがおそかったのだと思う。
母はよく聞いてきた
ジョソネルに会ったかと・・・
最初は何の事か分らなかった

でも、夢の中でジョソネルが現れてわたしは彼女と契約した。
彼女はわたしに要求した  
誓いと祈りとその代償・・・

誓ったのは
祈ったのは
捧げたのは



シェリーは七つでバーサと契約し
システィーナは九つで契約をした
オリビアは・・・まだ四つだった。

小さな妹は生まれる時、母の魔力を吸い取って出てきた

オリビアの青い目の奥に時々わたしは魔力の澱みを見る

強すぎたために、魔力をもてあまし
幼すぎたために、使いこなせず
力を封印された妹


あの時、グルーザと契約したオリビアは
まだ知らないはずの魔法で人の命を奪った・・・
恐ろしいほどの魔力で
小さな妹は平然と・・・
笑いすら浮かべて命を弄んだ

きらきらと絶対零度の氷が輝きながら弾ける
オリビアにとっては魔法は新しい遊びに過ぎなかった

両親はオリビアの魔力を封印した


オリビアがグルーザに誓ったのは・・・

シェリーがバーサに捧げたのは・・・

システィーナがハーネラに祈ったのは・・・







バンハムーバで
わたしたちはいつか巫女になる・・・

わたしたちが
わたしたちでなくなる日













わたしは何故
泣いているのだろう?

魔力の少なさを補うために
必死になって武器を扱う自分を哀れんでか

誰よりも傷つきやすい魂を傲慢な態度で守ろうとするシェリーにか

誰からも愛されて育ったシスティーナの優しすぎて悲しい心にか

氷の契約を忘れて今は笑うオリビアの未来にか







魔力を持つということは
哀しみを抱えるということだ・・・

武器を使わず
精神で人を殺める力

魔法を使うということは
人間であるのをやめるということだ

自然を支配し、自然を従え、
ちちなる神の傍に立つ



わたしは
わたしたちは
いつか
世界を滅ぼす呪文を持つ日がくる・・・

その時、
わたしたちは
それをどう使うのだろう・・・

お互いが暴走しないように抑制しあうのか?

火と水、大地と風、

わたしはオリビアを殺せるか?
システィーナはシェリーと戦えるか?

オリビアが強大な魔力を持った意味・・・
わたしが炎の槍を操る力・・・
シェリーが大地を割り、システィーナが風と話す・・・


今はまだ
今のままでいい



魔法を使うということ
魔力を持つ意味



いつか
わたしたちは
わたしたちでなくなる日がくる・・・・




  

なんとなく雰囲気で書いてみました。
いろんな突込みは無しにして下さいね・・・。
すでに、パラレルっぽいですが。


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