オリーブよ大地に再び

ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘムでオリーブの木を植えなおす人々

1996,06,11.朝日新聞

非常に気になっていた「木」のひとつです。
この写真を見た時はショックでした。
複雑な気持ちです。どう言葉で表現してよいのか未だに判りません。
写真から事実が幾つか読み取れます。
1. ものすごく大きいオリーブの木である。
2. 根がもうすでに切れている。
3. 人々にとって大切な木である。
4. 数世紀にかけて、私達、おじいさん、おばあさん、そのまたおじいさん、おばあさんを
  見続けてきた。


オリーブ
モクセイ科の常緑樹
原産は小アジア地方
世界に500種、紀元前から利用
用途、 果実加工、油、健康食品など
シリア、トルコ、ギリシャ、地中海地方のヨーロッパ、北アフリカを経てアメリカ、メキシコ
南アメリカ、オーストラリア、中国、日本へ広まる。
日本には江戸末期から明治初期にかけて導入
香川県小豆島が有名
ほっとしますが、
日本のピース(たばこ)鳩が咥えている小枝、『オリーブの枝のデザイン』だそうです


上記のオリーブの木についてヒントと成る情報を得ました。私達日本人が持っている印象よりずっと深く、重く、切実な意味が隠れています。

聖地エルサレムのオリーブの山は、かって夥しいオリーブの樹林で覆われていました。普通、歴史は過去へ押しやられ忘れ去られますが、ここ聖地では歴史そのものが現実で過去のできごとではありません。

『ゲッセマネの園』はイエスが何度も何度も祈りを捧げた地として余りにも有名です。 バッハのマタイ受難曲の『ゲッセマネの祈り』中でもユダの裏切りによってイエス.キリストが捕らえられる情景を静かに悲しく、また希望に満ち、私達みんなが持っている心の弱さをしめやかに演奏しています。ゲッセマネとはヘブライ語で『油搾り』を意味します

ここにオリーブの老木があります。現地の人々の間では「キリストが休憩した」真しやかに語られています。実際は700年程だそうですが事実はわかりません。もう宗教的な時間の中で埋没した樹木なのでしょう。

パレスチナの人々にとっては、オリーブは食物であり文化であり生活そのもの歴史の象徴であります。『エリコ』では紀元前8000年のオリーブの種が発見されています。
イスラエルとパレスチナの長い紛争の中でオリーブの木はみずから何も語りません。
老木を領土の象徴としてブルドーザーで撤去し若木を植える。そんなことが繰り返されています。1993年から1995年間に14、545本の木が犠牲になっています。将に『受難』そのものです。その姿に『イエス.キリスト』が重なります。

世界中のなかでここのオリーブの木は不幸な一例です。ほとんどの木々は健康ですくすくと育ち、私達の食物になり、スパイスになり、化粧品になり生活の中に溶け込んで欠くことができないものです。
 快適で便利さの奥に語ることもなく、叫ぶこともなくただひたすら翻弄されながら根を張り生き続けているオリーブの木もあることを知って頂きたいと思いご紹介致しました。
相当の思い込みの強い感じがありますが悪しからずご勘弁くださいませ。

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