朽ちたブナたち

1990年に北海度で撮った写真です。
元旦1月2日の事でした。
函館戸井町を流れる熊別川の雪が積もった山道を上流に向かって2時間ほど歩くと山の斜面に所どころに若い樹木に混じって大木が混在しています。
葉は落しています。それでも吹き付ける風が枝を大きく揺らしています。所々にヤドリギが寄生し、そこの所だけ青々として寄生が終わった後は、木瘤になり大きく盛り上がっています。樹齢は見当がつきません。幹直径は1mを超えています。いかにもどっしりとしています。この山の「」そんな形容がぴったりです。圧倒されました。

山全体が落葉しているために、切れないバリカンで頭を刈ったみたいに山肌が見え、ふきだまりには雪が積もり、日が当たる南側には地面に積み重なった落ち葉がクッションのきいたソファーのようです。
ナラ、カシワ、ハリギリ、クルミ、ハンノキ、ホオノキ、トチノキなどの落葉樹が息を潜めて立っています。

数年後、再び会えました。
残念な事に幹が洞になっているブナの大木はほとんど朽ち枯れていました。原形を留めないほど土に帰っていました。こんなに大きいのにすぐに腐れてしまうの。
正直な感想です。
洞のない木は数本残り元気でした。
今どうしているでしょうか。

ブナは「橅」又は「山毛欅」と漢字で表します。「橅」は国字で木偏に無と書かれるのはヒノキやスギに較べて使用価値が低かったからと言われています。「山毛欅」は中国表記をそのまま利用しているからだそうです。
ブナのひとつの特徴で水に弱い物理的性質がそのまま表れたようです。
しかし、自然の生態系から見ると非常に貴重で、いち早く微生物が繁殖し土に戻し森の維持に役立っています。ブナの林ではキノコも沢山とれますし、動物や小鳥もたくさんいます。
白神山地が世界遺産に選ばれたのはつい最近のことです。

用材としてはひとつ格下に見られますがどっこい飛騨白川郷の合掌造りの建築材や面白いところでは、山形県の立石寺の根本中堂はブナが使われています。現在のように物流技術が無い時代にはなんとかして地場の材料を使おうとした先人の知恵と苦労がわかります。
現在では加工技術、生産技術の進歩で欠点はクリヤーされパルプ、建築、家具材など広く使われています。



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