神社仏閣の香り


 京都 山崎にあるウィスキーメーカーの話です。日本産ミズナラの樽で長期の熟成された原酒を「神社仏閣の香りがする」と表現しています。

「う〜ん」と唸ってしまいました。大袈裟な言い回しと思いながらも、「すごいことだ!!」と感心しました。

 ウィスキーは世界中で醸造されています。その土地の環境でずいぶん特徴があります。「神社仏閣の香り」は当に日本的な表現だと思うのです。はたして実際はどんな香りなのでしょうか?想像してみました。

1.      神社に供えられたお神酒の香り

2.      お寺や神社の線香と抹香の香り

3.      ミズナラの樹液の香り(黒砂糖のような)

 以上の3つの味が浮かびました。

1. 神社に供えられたお神酒の香り

 私は九州の山奥で生まれ育ちました。村や町には必ず神社が祭られており、長老が朝晩面倒をみていました。お茶とお神酒は毎日取り替えていました。そのお神酒数日たつとガキ共にはちょうど飲み頃です。ビンから注がれた酒や焼酎は子供には苦くて飲めません。しばらく空気に触れたお神酒は外で思いっきり遊んだ後は何か不思議な飲み物でした。祖父に知れると「ちんちんが腫れるぞ。罰当たりが」と言われた記憶があります。そんな単純な香りが先ず浮かびました<笑う>。

2.お寺や神社の線香と抹香の香り

 お寺や神社の香りといいますか線香と末香が染み付いて混じり合いむせるような香りです。祖父、父も毎朝部屋の神様仏様を拝んでいました。祈りと線香はほとんど欠かしたことがありません。朝食が始まると線香の匂いがほのかに伝ってきます。いやな香りではありません。今では遠い思い出です。

3.ドングリの木 樹液の味(黒砂糖のような)

 ミズナラは本州の高地と北海道の限られた地域にしか自生していません。もう樽を作るような大木はほとんどありません。ドングリを付ける木で身近に見かける木ではコナラやカシワが近いでしょうか?その他クヌギやクリなどの落葉広葉樹の仲間です。これらの木は夏に樹液を求めてカブトムシやクワガタ、カミキリ、ハチいろんな昆虫が寄ってきます。どんな味がするのか舐めた記憶がありますが、味は思い出しません。無味無臭に近いと思います。凝縮すれば黒砂糖をお湯に注いだ一瞬、軽い野生味の中に蜂蜜のような上品な香りとしておきましょう。

 正解は

「伽羅や白檀など、お香を連想させるその香り」

 次元がちがうなぁ〜(感嘆)

 純粋なお香の経験はありません。非常に高価な物はお寺のお坊さんでも高貴な方しかなかなかお目にかかれないと聞いたことがあります。正倉院の沈香はあまりにも有名です。お香に限らず香りの原料は古代から東西交易の主役でした。現代では食品、化粧品、医薬品、健康など、重要な工業原料です。人間の本能に直接作用する不思議な魅力があるからでしょうか。

 「日本産のミズナラでなければならない。」

 そこが神がかり的でおもしろいと思います。まさしくミズナラの大木は森の中で育ち枝ぶりも山の主にふさわしい姿をしています。香りのメカニズムはまさに「山の神のみぞ知る」でしょうか。それにしても納得のネーミングです。拙い想像力を駆り立てられました。

 本物の香りは未体験ですが、密かな楽しみです。

追伸
先ほどNHKドラマ「篤姫」の最終回をみました。
お香が象徴的に演出されていました。
感動的でした。


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