ハギ(萩) マメ科(ハギ属)

ハギ20091003
ハギ20020723
メドハギ20090905
イタチハギ20090522

万葉集
0120 吾妹子(わぎもこ)に恋ひつつあらずは秋萩の咲きて散りぬる花ならましを
0231 高圓の野辺(ぬへ)の秋萩いたづらに咲きか散るらむ見る人なしに
0233 高圓の野辺の秋萩な散りそね君が形見に見つつ偲はむ
0970 群玉の栗栖(くるす)の小野のが花散らむ時にし行きて手向けむ
1363 春日野に咲きたるは片枝はいまだふふめり言な絶えそね
1364 見まく欲り恋ひつつ待ちし秋萩は花のみ咲きて生(な)らずかもあらむ
1365 我妹子が屋戸の秋萩花よりは実に成りてこそ恋まさりけれ
1431 百済野(くだらぬ)の萩の古枝に春待つと来居し鴬鳴きにけむかも
1468 霍公鳥声聞く小野の秋風に咲きぬれや声の乏しき
1534 をみなへし秋萩折らな玉ほこの道行き苞(つと)と乞はむ子のため
1536 宵に逢ひて朝(あした)面なみ名張野のは散りにき黄葉(もみち)はや継げ
1538 の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花
1541 吾(あ)が岡にさ牡鹿来鳴く先萩(さきはぎ)の花妻問ひに来鳴くさ牡鹿
1542 吾(あ)が岡の秋萩の花風をいたみ散るべくなりぬ見む人もがも
1557 明日香川ゆき廻(た)む岡の秋萩は今日降る雨に散りか過ぎなむ
1558 鶉鳴く古りにし里の秋萩を思ふ人どち相見つるかも
1559 秋萩は盛り過ぐるをいたづらに挿頭(かざし)に挿さず帰りなむとや
1560 妹が目を跡見の崎なる秋萩はこの月ごろは散りこすなゆめ
1575 雲の上に鳴きつる雁の寒きなべの下葉はもみちつるかも
1579 朝戸開けて物思(も)ふ時に白露の置ける秋萩見えつつもとな
1580 さ牡鹿の来立ち鳴く野の秋萩は露霜負ひて散りにしものを
1595 秋萩の枝もとををに降る露の消なば消ぬとも色に出でめやも
1597 秋の野に咲ける秋萩秋風に靡ける上に秋の露置けり
1598 さ牡鹿の朝立つ野辺の秋萩に玉と見るまで置ける白露
1599 さ牡鹿の胸(むな)分けにかも秋萩の散り過ぎにける盛りかも去ぬる
1600 妻恋に鹿(か)鳴く山辺の秋萩は露霜寒み盛り過ぎゆく
1605 高圓の野辺の秋萩このごろの暁(あかとき)露に咲きにけむかも
1608 秋萩の上に置きたる白露の消(け)かもしなまし恋ひつつあらずは
1617 秋萩に置きたる露の風吹きて落つる涙は留みかねつも
1618 玉にぬき消たず賜(たば)らむ秋萩の末(うれ)わわら葉に置ける白露
1622 我が屋戸の秋の萩咲く夕影に今も見てしか妹が姿を
1633 手もすまに植ゑしにやかへりては見れども飽かず心尽さむ
1761 三諸(みもろ)の 神奈備山に たち向ふ 御垣の山に
   秋萩の 妻をまかむと 朝月夜 明けまく惜しみ
   あしひきの 山彦響め 呼び立て鳴くも
1772 後れ居て吾(あれ)はや恋ひむ印南野(いなみぬ)の秋萩見つつ去(い)なむ子故に
1790 秋萩を 妻問ふ鹿(か)こそ 独り子を 持たりと言へ
   鹿子(かこ)じもの 吾(あ)が独り子の 草枕 旅にし行けば
   竹玉(たかたま)を 繁(しじ)に貫き垂り 斎瓮(いはひへ)に 木綿(ゆふ)取り垂(し)でて
   斎(いは)ひつつ 吾(あ)が思(も)ふ吾子(あご) ま幸くありこそ
2094 さ牡鹿の心相思ふ秋萩のしぐれの降るに散らくし惜しも
2095 夕されば野辺の秋萩うら若み露に枯れつつ秋待ち難し
2096 真葛原靡く秋風吹くごとに阿太(あだ)の大野のが花散る
2097 雁がねの来鳴かむ日まで見つつあらむこの原に雨な降りそね
2098 奥山に棲むちふ鹿の宵さらず妻問ふの散らまく惜しも
2099 白露の置かまく惜しみ秋萩を折りのみ折らむ置きや枯らさむ
2100 秋田刈る借廬(かりほ)の宿りにほふまで咲ける秋萩見れど飽かぬかも
2101 吾(あ)が衣摺(す)れるにはあらず高圓(たかまと)の野辺行きしかばの摺れるそ
2102 この夕へ秋風吹きぬ白露に争ふの明日咲かむ見む
2103 秋風は涼しくなりぬ馬並(な)めていざ野に行かなが花見に
2105 沙額田(さぬかた)の野辺の秋萩時しあれば今盛りなり折りて挿頭さむ
2107 ことさらに衣は摺らじをみなへし佐紀野のににほひて居らむ
2108 秋風は速く吹き来ぬが花散らまく惜しみ競ひ立ち見む
2109 我が屋戸のの末(うれ)長し秋風の吹きなむ時に咲かむと思ひて
2110 人皆はを秋と言ふよし吾(あれ)は尾花が末を秋とは言はむ
2111 玉づさの君が使の手折りけるこの秋萩は見れど飽かぬかも
2112 我が屋戸に咲ける秋萩常しあらば吾(あ)が待つ人に見せましものを
2113 手もすまに植ゑしもしるく出で見れば屋戸の早萩(わさはぎ)咲きにけるかも
2114 我が屋戸に植ゑ生(お)ほしたる秋萩を誰か標(しめ)さす吾(あれ)に知らえず
2116 白露に争ひかねて咲ける散らば惜しけむ雨な降りそね
2117 乙女らに行相(ゆきあひ)の早稲(わせ)を刈る時になりにけらしもが花咲く
2118 朝霧の棚引く小野のが花今か散るらむいまだ飽かなくに
2119 恋しくは形見にせよと我が背子が植ゑし秋萩花咲きにけり
2120 秋萩に恋尽くさじと思へどもしゑや惜(あたら)しまた逢はめやも
2121 秋風は日に異(け)に吹きぬ高圓の野辺の秋萩散らまく惜しも
2122 大夫の心は無しに秋萩の恋にのみやもなづみてありなむ
2123 吾(あ)が待ちし秋は来たりぬ然れどもが花そもいまだ咲かずける
2124 見まく欲り吾(あ)が待ち恋ひし秋萩は枝もしみみに花咲きにけり
2125 春日野のし散りなば朝東風(あさごち)の風にたぐひてここに散り来(こ)ね
2126 秋萩は雁に逢はじと言へればか声を聞きては花に散りぬる
2127 秋さらば妹に見せむと植ゑし露霜負ひて散りにけるかも
2143 君に恋ひうらぶれ居れば敷(しき)の野の秋萩しぬぎさ牡鹿鳴くも
2144 雁は来ぬは散りぬとさ牡鹿の鳴くなる声もうらぶれにけり
2145 秋萩の恋も尽きねばさ牡鹿の声い継ぎい継ぎ恋こそまされ
2150 秋萩の散りぬるを見ていふかしみ妻恋すらしさ牡鹿鳴くも
2152 秋萩の散りて過ぎなばさ牡鹿は侘び鳴きせむな見ねば乏しみ
2153 秋萩の咲きたる野辺はさ牡鹿ぞ露を分けつつ妻問しける
2154 など鹿の侘び鳴きすなるけだしくも秋野のや繁く散るらむ
2155 秋萩の咲きたる野辺にさ牡鹿は散らまく惜しみ鳴きぬるものを
2168 秋萩に置ける白露朝な朝(さ)な玉とぞ見ゆる置ける白露
2170 秋萩の枝もとををに露霜置き寒くも時はなりにけるかも
2171 白露と秋のとは恋ひ乱り別(わ)くことかたき吾(あ)が心かも
2173 白露を取らば消(け)ぬべしいざ子ども露に競(きほ)ひての遊びせむ
2175 この頃の秋風寒しが花散らす白露置きにけらしも
2182 このごろの暁露(あかときつゆ)に我が屋戸のの下葉は色づきにけり
2204 秋風の日に異に吹けば露しげみが下葉は色づきにけり
2205 秋萩の下葉もみちぬ荒玉の月の経ぬれば風をいたみかも
2209 秋萩の下葉の黄葉花に継ぎ時過ぎゆかば後恋ひむかも
2213 この頃の暁露に我が屋戸の秋の萩原色づきにけり
2215 さ夜更けて時雨な降りそ秋萩の本葉の黄葉散らまく惜しも
2225 我が背子が挿頭のに置く露をさやかに見よと月は照るらし
2228 が花咲きのををりを見よとかも月夜の清き恋まさらくに
2231 の花咲きたる野辺にひぐらしの鳴くなるなべに秋の風吹く
2252 秋萩の咲き散る野辺の夕露に濡れつつ来ませ夜は更けぬとも
2254 秋萩の上に置きたる白露の消(け)かもしなまし恋ひつつあらずは
2255 我が屋戸の秋萩の上(へ)に置く露のいちしろくしも吾(あれ)恋ひめやも
2258 秋萩の枝もとををに置く露の消かもしなまし恋ひつつあらずは
2259 秋萩の上に白露置くごとに見つつぞ偲ふ君が姿を
2262 秋萩を散らす長雨(ながめ)の降る頃は独り起き居て恋ふる夜ぞ多き
2273 何すとか君をいとはむ秋萩のその初花の嬉しきものを
2276 雁がねの初声聞きて咲き出たる屋戸の秋萩見に来(こ)我が背子
2280 が花咲けるを見れば君に逢はずまことも久になりにけるかも
2284 いささめに今も見が欲し秋萩のしなひてあらむ妹が姿を
2285 秋萩の花野のすすき穂には出でず吾(あ)が恋ひ渡る隠(こも)り妻はも
2286 我が屋戸に咲きし秋萩散り過ぎて実になるまでに君に逢はぬかも
2287 我が屋戸の咲きにけり散らぬ間に早来て見ませ奈良の里人
2289 藤原の古りにし里の秋萩は咲きて散りにき君待ちかねて
2290 秋萩を散り過ぎぬべみ手折り持ち見れども寂(さぶ)し君にしあらねば
2293 咲きぬとも知らずしあらば黙(もだ)もあらむこの秋萩を見せつつもとな
3656 秋萩ににほへる我が裳濡れぬとも君が御船の綱し取りてば
3677 秋の野をにほはすは咲けれども見る験(しるし)なし旅にしあれば
3681 帰り来て見むと思ひし我が屋戸の秋萩すすき散りにけむかも
3691 天地と 共にもがもと 思ひつつ ありけむものを
   愛(は)しけやし 家を離れて 波のうへゆ なづさひ来にて
   あら玉の 月日も来経ぬ 雁がねも 継ぎて来鳴けば
   たらちねの 母も妻らも 朝露に 裳の裾ひづち
   夕霧に 衣手濡れて 幸(さき)くしも あるらむごとく
   出で見つつ 待つらむものを 世の中の 人の嘆きは
   相思はぬ 君にあれやも 秋萩の 散らへる野辺の
   初尾花 仮廬(かりほ)に葺きて 雲離(ばな)れ 遠き国辺の
   露霜の 寒き山辺に 宿りせるらむ
4224 朝霧の棚引く田(たゐ)に鳴く雁を留め得めやも我が屋戸の
4249 石瀬野(いはせの)に秋萩凌(しぬ)ぎ馬並(な)めて初鷹猟(はつとがり)だにせずや別れむ
4252 君が家に植ゑたるの初花を折りて挿頭(かざ)さな旅別るどち
4253 立ちて居て待てど待ちかね出でて来て君にここに逢ひ挿頭しつる
4296 天雲に雁そ鳴くなる高圓のの下葉はもみち堪(あ)へむかも
4315 宮人の袖付け衣秋ににほひよろしき高圓(たかまと)の宮
4318 秋の野に露負へるを手折らずてあたら盛りを過ぐしてむとか
4320 ますらをの呼び立てませばさ牡鹿の胸(むな)分けゆかむ秋野
4323 時々の花は咲けども何すれそ母とふの咲き出来(でこ)ずけむ
4444 我が背子が屋戸なるの花咲かむ秋の夕へは我を偲はせ
4515 秋風の末吹き靡くの花ともに挿頭(かざ)さず相か別れむ

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