落ちてくるどんぐり

8月も半ばになりました。近くの公園を朝早く散歩するとすこしは涼しさが感じられます。
コナラとクヌギの下をよく見るとドングリが付いた枝が所々におちています。
昨晩たいした風もないのにあら不思議。青々とした葉が3〜5枚付いた枝が落ちています。ショックでドングリが取れているのもあります。枝の径は大きくて5mm以内切り口を良く見ると鋸で切ったようにきれいです。
『はは〜これがクヌギシギゾウムシの仕業なのか』
毎日毎日暑いのにごくろうさまです。
それにしても体長わずか1cm程の昆虫がくちばしで堅い殻に穴を開け卵を産み付けた後、噛み切り落とすとは。私達からみると大変不可解な行動です。

枝を噛み切り落とされたクヌギのどんぐり
良く見ると穴の跡が見えます
2002.08.10
枝を噛み切り落とされたコナラのどんぐり
殻斗の柔らかい所に穴の跡があります
2002.08.10

クヌギシギゾウムシ
ゾウムシの仲間は日本に約670種あります。『象鼻虫』の意味でゾウの鼻のように長い口吻(こうふん)があります。シギは鳥のシギのくちばしに似ているところから。体長約1cm弱半分近くが口吻の長さです。この口吻を使ってどんぐりにドリルのように穴を開け産卵管を差し込んで産卵します。
この後に枝を「せっせせっせ」と噛み切ります。クヌギの落ちていた枝を拾ってサイズを測りました。

3.2 3.8 2.6 3.4 3.0 4.6 3.6 4.2 4.0 3.9 3.0 3.1 3.5 3.5 4.8mm

自分の体の何倍もある枝を足で踏ん張りながら噛み切っている様子。ちょっと見て見たいものです。
このクヌギの木はよほど気に入ったと見えてたくさん落ちています。相当数のクヌギゾウムシが枝に集まっていることでしょう。秋に実る量の7割近くが食害にあうという報告もあります。今ではクヌギの実を食料に利用するそんなことはありませんから実害はないでしょう。
でもクヌギにとってこのゾウムシは本当に害虫なのでしょうか?
とんでもない仕掛けがあるのかもしれません。

川で釣りをした人は餌をいろいろ試してみた経験があるでしょう。
その中でもクリ虫は効果があります。このクリ虫がゾウムシの幼虫なのです。
落ちているドングリやクリの実を拾って密閉容器に土をいれて一緒において置きます。
一冬おき春に土を返すと幼虫がたくさんいます。これが『クリ虫』です。餌やさんで買うと1匹いくらの値段です。

栗の実に卵を産みつけるゾウムシはクリシギゾウムシですがよくも刺のある実に穴を開けるものだと感心します。
栗は刺を作ることで害虫から実を守っている筈なのですが、上手がいるものです。
この近くにいくつか落ちていました。くりの場合は柄の部分から噛み切られています。

ゾウムシの姿を公開したいのですが興味のある方は以下へ
http://www.city.nagoya.jp/10eisei/ngyeiken/insect/coleopte/cs.htm
http://www.asahi-net.or.jp/~dv5m-wd/u/umk7.htm

大変な間違いを犯したようです。
木の枝を噛み切る犯人はクヌギシギゾウムシではなく 『 ハイイロチョッキリ 』 が正解です。
いろいろ調べてみますとハイイロチョッキリはクヌギが大好物ですし8月中旬から9月にかけて発生するのに対してクヌギシギゾウムシは時期を遅らして食料採取の混乱をお互いに防いでいます。
ハイイロチョッキリはオトシブミ科の甲虫です。
2002.08.14 2002.08.14 2002.09.07
どんぐりがまだ固まっていません。
爪で押すと簡単につぶれます。
殻斗のちょうどつなぎ目あたりの柔らかい所に穴を開けて0,5mm程の卵を産んでいます。
クヌギのどんぐりから拾ってきて3日程で幼虫が出てきました。体長約2cm、細い毛がまばらにあります。どうもゾウムシやチョッキリとは違うようです。しばらく様子を見ましょう。 左の幼虫から『ガ』?に変身して生まれました。
体長15mm、良く見かけるすばしっこいガです。
結局いろんな虫がどんぐりにはいるようです。
同じ犯人なの
今回は違うクヌギの下の出来事です。小さいクヌギの木ですがふと上を見上げると枝にたくさん木こぶ(虫こぶ)が付いています。地面を良く見回すと昨年の落ちた枝でしょうか土にまみれて虫こぶがあります。大きいのは直径5cmから2cmまで非常に固くほとんんど木質化しています。持ち帰り鋸で切ってみました。まるで杢の模様です。虫は見えません。小さいアクセサリーに加工できそうです。
2,3日してまたきょろきょろ枝の下を探して見ますと、今度は新鮮な葉が付いたクヌギの虫こぶです。切り口はまったくクヌギのケースと同じです。ハイイロチョッキリが切り落としたのでしょうか?
卵が産み付けられているのでしょうか?
虫こぶとチョッキリは関係があるのでしょうか?
『まさかどんぐりと間違って切ったのではないのか?』なんだか訳がわからなくなりました。
上の3個が新鮮な虫こぶです。一つの枝に1個付いているもの、2個付いているもの、約2cm、下は鋸で半分に切ったものです。白い部分は組織が壊れてぼろぼろです。この枝は結構付いています。よっぽどおきにいりの枝なんでしょう。
ニュース
朝日新聞、10/9付、アサヒコムのネイチャーニュースを読んでいましたら、今年は関東地方でよく見られる現象だそうです。狭山丘陵ではハイカーが道に落ちている「どんぐり」に良く気づき、八王子では8月末から「どんぐり」の落下が、報告されています。興味ある方は以下URLへどうぞ。
http://www.asahi.com/nature/news/021009a.html

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