杜甫詩選
杜甫詩選
黒川洋一編
角川文庫 P291

閬山歌 (閬山(ろうざん)(うた)

七言歌行。閬州 (閬中県) の山を見て思いをのべる。七六四 (広徳二) 年の春、五十三歳のとき、梓州より閬州に遊んだ折の作。
閬州城東霊山白     閬州城東(ろうしゅうじょうとう) 霊山白(れいざんしろ)
閬州城北玉台碧     閬州城北(ろうしゅうじょうほく) 玉台碧(ぎょくだいみどり)なり
松浮欲尽不尽雲     松には浮かぶ 尽きんと欲して尽きざるの雲
江動将崩未崩石     (こう)には動く (まさ)(くず)れんとして(いま)だ崩れざるの石
那知根無鬼神会     (なん)ぞ知らん根に鬼神の(かい)する無きを
已覚気与嵩華敵     (すで)(おぼ)ゆ気は嵩華(すうか)(てき)するを 
中原格闘且未帰     中原(ちゅうげん) 格闘して()つ未だ帰らず
応結茅斎著青壁     (まさ)茅斎(ぼうさい)を結ぴて青壁(せいへき)()くべし

大意
閲州城東には霊山が白く見え、閲州城北には玉台山がみどりに見える。山の松の木には今にも消えて無くなりそうな雲が浮かんでおり、大川の中には今にも崩れて流れてしまいそうな岩が揺れ動いている。この山の根もとには鬼神たちが集まって来て会合していないと誰が保証できようか、すでに山にただよう気は嵩山・華山と匹敵するかのごとくに思われる。中原の地方には戦争が打ち続き一日のばしに故郷に帰らずにいるが、あの山の青い絶壁に茅ぶきの書斎をこしらえて住みたいと思う。

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