エゴノキ(斉墩果) エゴノキ科(エゴノキ属)

2002.05.19.南区植物園

枝一面に、小さい白い花が垂れ下がってつけます。道路に落ちた花がよく目立ちます。種子をまくらの中身に利用すると良いと聞いたことがあります。

実はさすがに軽い毒があるのでヒヨドリが食べているのは見かけませんが鳩はよく食べています。晩秋にナンキンハゼの種を食べますから鳩は解毒するのでしょうか。

樹皮は灰白色から灰褐色でコナラのようにしわ状になったり、剥がれたりしません。
ニッケイやモッコクなどに似ています。



落葉小高木、若枝、葉裏、がくなどには初め星毛を生じ、葉は狭長卵形か卵形、波状鈍鋸歯縁、花は白色、果実は卵形あるいは楕円形、ともにたれる。果実には※サポニンを含む。材は床柱、ステッキ、将棋の駒、おもちゃ、こま、タバコのパイプ、ソロバン玉、楊枝、ブラシの背いた、傘の柄など。 
将棋の駒は山形天童市が有名ですが現在もエゴノキは使われています。
                       保育社、標準原色図鑑全集8「樹木」より

山野に多い落葉高木で、高さは10mほどになる。5~6月に白い花が垂れ下がってつき美しい。花は直径2,5cm、深く5つに裂ける。葉は長さ4~6cm、実は1~1、5cmである。材は建築材、器具材、玩具などに使われる。エゴの名は実の皮が有毒で、これを食べた時のどを刺激してえごいところからでたものといわれる。
                     山と渓谷社、「樹木1」より

※サポニン (ドイツSaponin)植物界に広く分布する配糖体の一群で、水溶液をかきまぜたとき、永続性の泡沫を生じる物質。一般に無定形の粉末で、非糖質部分のアグリコンによりステロイドサポニンとトリテルペノイドサポニンの二群に分けられる。赤血球に対して溶血作用をもつ。強い毒性を示し、種類によっては一〇万分の一の水溶液でも魚類を殺せるので、毒もみ漁や毒矢に用いられる。しかし人が内服してもほとんど吸収されないので、食欲増進剤、強心剤、利尿剤などとして漢方薬に用いられるほか、発泡剤、洗浄剤などに用いる。キク、マメ、バラ、ヒメハギ、ムクロジなど植物界に広くみられる。

                      小学館国語大辞典より

追加の写真
葉もなかなか趣があります。
2007.12.02.南区団地敷地内
2008.02.15 同敷地内
冬芽と枝
特徴 2年枝の表皮は糸状にはがれる。
台風や強風などで折れた枝を切りますと。新しい細胞で覆われますが、時には洞になります。
復元力は強い木です。
こうなる前に手を打ちたいものです。
同上

2006.05.20 2009.06.11
樹の文化誌 朝日新聞社 足田輝一 著

-----------------------以下引用

てまり唄の系譜----エゴノキ

道も狭に散り敷く白きえごの花
    踏むは痛々し踏まねば行けず

              泉 幸吉

万葉集にもチサまたはヤマチサという名の植物が出てくる。

萵苣(やまぢさ)の
  白露繁しげみうらぶれし
   性に深めてわが恋やまず
・・・・・ 2469

 ここにヤマチサという植物については万葉学者や植物学者のなかで、いろいろの説があった。
萵苣(ちしゃ)という漢名の野菜は、アジア西部の原産で、中国でも栽培されているが、日本の山に生えているものではないから、この歌では。チサという音を表現するために、文字だけが借りられたものだろう。

チサという方言をもっている樹をさがすと、エゴノキにはこの系統の呼び名が多い。

牧野富太郎博士は、ヤマチサを、イワタバコではないか、という説を出している。

こういう古歌の植物同定は、なかなか決め手が難しいので何ともいえないが、どうも歌の情緒から判断すれば、エゴノキの花の風情が近いような気がする。

ヤマガラを飼ったことのある人は、エゴの実が好物であることは、よく知っているだろう。
--------------------------引用おわり
2009年8月1日


2007.11.12
黄葉の様す

道の辺の
  いちしの花
のいちしろく
    人皆知りぬ吾(あ)が恋ふる妻

      
            ・・・・・・万葉集 2480

いちし→ヒガンバナ、ギシギシ、イタドリ、イチゴ、エゴノキなど。 学者で分かれる。(2009.09.13)
参考 保育社、標準原色図鑑全集8「樹木」

 万葉集
1360  息の緒に思へる吾(あれ)を山ぢさの花にか君がうつろひぬらむ

4106  大汝(おほなむぢ) 少彦名(すくなひこな)の 神代より 言ひ継ぎけらく
     父母を 見れば貴く 妻子(めこ)見れば 愛(かな)しくめぐし
     うつせみの 世のことわりと かくさまに 言ひけるものを
     世の人の 立つる異立て ちさの花 咲ける盛りに
     愛(は)しきよし その妻の子と 朝宵に 笑みみ笑まずも
     打ち嘆き 語りけまくは とこしへに かくしもあらめや
     天地の 神言寄せて 春花の 盛りもあらむと
     待たしけむ 時の盛りを 離(さか)り居て 嘆かす妹が
     いつしかも 使の来むと 待たすらむ 心寂(さぶ)しく
     南風(みなみ)吹き 雪消(け)溢(はふ)りて 射水川(いみづがは) 浮ぶ水沫(みなわ)の
     寄る辺無み 左夫流(さぶる)その子に 紐の緒の いつがり合ひて
     にほ鳥の 二人並び居 奈呉の海の 奥(おき)を深めて
     惑(さど)はせる 君が心の すべもすべなさ 佐夫流ト言フハ、遊行女婦ガ字(アザナ)ナリ

2011年6月1日更新

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