資料-照葉樹林文化とフォッサマグナ
(Laurel forest culture and Fossa Magna)

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 ■照葉樹林文化(Laurel forest culture)

 下の図は佐々木高明氏の論考「日本文化の起源 -ナラ林文化と照葉樹林文化」(△1のp489)から採りました。

 照葉樹林文化ヒマラヤ山脈(ネパール/ブータン)/アッサム/雲南/江南地方/台湾/朝鮮半島南部/西日本に到達し(△1のp492)、文化的共通項としては納豆/茶(特に茶を食べる文化)/餅/漆(うるし)/草鞋(わらじ)/焼き畑/歌垣/婿取り婚などが挙げられます。この学説は中尾佐助大阪府立大教授が提唱。照葉樹としてはは典型で、楠(樟)樟脳が採れ船材建材として古くから利用されて居ます。
 ところで上の図で極めて特徴的なのは黄河文明長江文明とが明確にエリア(=文明圏)を異にしている事です。これは文明圏を問題にしているのでは無く照葉樹という植生(※1)を表している図ですが、それが中国の文明圏の違いをこれ程明確に表している事に驚嘆します。更に下の図を見て戴くと照葉樹林文化圏が日本の静岡県辺りで終焉して居ますが、これはフォッサマグナの断層線が南北の方向に走って居るからです。小動物の生活範囲を規制しているフォッサマグナは勢いの衰えた照葉樹林帯にとっても”壁”として作用しているのです。
 古代の大文明が大河の近くに発達したのは明らかで、であればこそ黄河文明に対し長江文明が在ると考える方が自然です、長江は黄河よりも長いのです。そして1986年に発掘された三星堆遺跡長江文明の存在を証明してくれました。詳細は下記の三星堆を見て貰うとして、それ迄のどの文明とも異なる極めて特異な文明です。

 ○照葉樹林文化(しょうようじゅりんぶんか、laurel forest culture)とは、ヒマラヤ中腹から東南アジア北部・南西中国・江南の山地を経て西日本に至る、照葉樹林地帯に共通する雑穀栽培農耕・焼畑などの文化要素が特色付ける文化で、栽培植物学者の中尾佐助が提唱。
  ・照葉樹林(しょうようじゅりん、laurel forest)とは、亜熱帯から暖温帯に掛けて見られる常緑広葉樹を主とする樹林。一般に、葉は深緑色で革質・無毛、表面にクチクラ層が発達し光沢が有るので、こう名付ける。西南日本、アジアの東南部、北アメリカのフロリダ半島、南アメリカの中部などに見られる。常緑広葉樹林。
  ・常緑広葉樹(じょうりょくこうようじゅ、evergreen broadleaf tree)とは、一年中緑色をして居る広葉樹。シイ(椎)/カシ(樫)/クスノキ(樟・楠)/アオキ(青木)/サカキ(榊/賢木)/ツバキ(椿)/チャ(茶)/コーヒー(珈琲)/月桂樹/ニッケイ(肉桂)/ビンロウ(檳榔)/オリーブ/ヒイラギ(柊・疼木)など。葉の表面に光沢が有るものを照葉樹とも言う。
  ・暖帯林(だんたいりん、warm temperate forest)とは、暖温帯に良く発達する森林帯。熱帯林と温帯林との中間に在り、常緑の広葉高木林で、日本では沖縄・九州・四国などに分布。カシ・シイなど常緑広葉樹を主とし、クヌギ・コナラ・マツなども含む。カシ帯。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>

 ○楢/柞/枹(なら)は、[1].コナラ(ナラ)/ミズナラなどの総称。カシと同属だが常緑で無いものを言う。
 [2].コナラの別称。古名、ははそ(柞)。古今和歌集[雑]「神無月時雨降りおける―の葉の名におふ宮の古言ぞこれ」。

 ○黄河(こうが、Huang He)は、(水が黄土を含んで黄濁しているから言う)中国第2の大河。青海省の約古宗列盆地の南縁に発源し、四川/甘粛省を経て陝西(せんせい)/山西省境を南下、汾河(ふんが)/渭河など大支流を合わせて東に転じ、華北平原を流れて渤海湾に注ぐ。しばしば氾濫し、人民共和国建国後に大規模な水利工事が行われた。近年下流部で水量の減少が著しい。全長5464km余流域は中国古代文明の発祥地の一つとされ黄河文明とも呼ばれる。
 ○長江(ちょうこう、Chang Jiang)は、中国第一の大河。青海省南西部に発源、雲南/四川の省境を北東流し、重慶市を貫き、三峡を経て湖北省を横断、江西/安徽/江蘇3省を流れて東シナ海に注ぐ。全長約6300km。流域は古来交通/産業/文化の中心。この大河の流域に栄えた文明を長江文明と呼ぶ事が有る。揚子江。大江。
  ・三星堆(さんせいたい、Sanxingdui)は、中国の四川省広漢市1986年に確認された特異な遺跡 -青銅製縦目仮面巨大な青銅製世界樹(神樹)黄金の杖など- で、1920年代から部分的に出土していたが本格的調査は1980年頃迄成されなかった。本格的発掘に拠り、紀元前3000~1000年古蜀文化に属すること、黄河文明とは異質の長江文明の遺跡であることが判明。特に青銅製世界樹からは「十個の太陽」燭陰が、黄金の杖からは西王母が、月に住むと言われているヒキガエル(蟾蜍)の彫刻からは嫦娥伝説が、「山海経」の影響を強く受けている。
 補足すると、李白の「蜀道難(蜀道の険しさ)」という漢詩に三星堆の青銅製縦目仮面のモデルと考えられている初代王・蚕叢と、魚鳧王朝を築いた王・魚鳧の名を、この詩に詠み込んでいたとは驚きです。因みに、伝説の多い李白は西域人です。
   ・山海経(せんがいきょう/さんかいきょう/さんかいけい)は、中国古代の神話と地理の書。主に洛陽(周代の洛邑)地方を中心に山や海の動植物や金石草木の他、祭祀・神話・伝説・怪談などを記し、中国神話の宝庫と言われる。18巻。禹の治水を助けた伯益の著とされるが、戦国時代~秦・漢代の作。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>

 ■フォッサマグナ(Fossa Magna)

 下の図は△2のp171から採りました。


 フォッサマグナ(Fossa Magna[ラ])は、あのナウマン象のナウマンが命名しました。今日普通に使われている東日本西日本という語はフォッサマグナが東西を分けて居ます。そしてフォッサマグナの西縁が糸魚川静岡構造線です。
 難しい話は抜きにして、源氏蛍(西日本型)と平家蛍(全国型)、アズマモグラ(東日本型)とコウベモグラ(西日本型)などはフォッサマグナを境に棲み分けて居ます。そして何と我々人間もフォッサマグナの影響を受けて居るのですゾ。皆さん、家庭用交流は東西で違うのです。交流の周波数は東日本の50サイクル(=ヘルツ(Hz))(※2、※2-1)に対し西日本は60サイクル(ヘルツ(Hz))なのです。この様にフォッサマグナは身近な所に影響を及ぼして居るのです。

 ○フォッサマグナ/フォッサ・マグナ(Fossa Magna[ラ])とは、(大きな溝の意)中部地方で本州を横断する新第三系 -新第三紀(約2300万年前~180万年前迄)に形成された地層- の地帯。日本の地質構造上、東日本西日本を分ける重要な地帯ナウマンの命名糸魚川静岡構造線はこの地帯の西縁を限る断層で、東縁は不明。
 ○糸魚川静岡構造線(いといがわしずおかこうぞうせん、Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line)とは、糸魚川から松本平・甲府盆地の西を通り、早川に沿って静岡に至る断層線で、プレートの境界と考えられて居る。フォッサマグナの西縁を成す。矢部長克(ひさかつ)(1878~1969)の命名。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
  ・ナウマン(Edmund Naumann)は、ドイツの地質学者(1854~1927)。1875年(明治8)日本政府の招きで来日、東京開成学校・東京帝国大学で地質学を講じた。化石の研究の他、日本列島の地質構造を調べて、これをフォッサマグナを境に東北日本と西南日本とに分け、後者を中央構造線に依って内帯外帯とに分けた。ナウマン象は彼の名に因む。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
   ・ナウマン象(―ぞう、Naumann's elephant)は、絶滅した化石ゾウ類(長鼻目)の一つ。約30万年前~約1万5000年前迄日本及び東アジアに生息。日本では最も多産する化石ゾウ類。マンモスよりやや暖かい地域で繁栄した。その化石を最初に研究したナウマンに因む名

    <フォッサマグナの影響を受けているもの>
  ・源氏蛍(げんじぼたる)は、ホタル科の甲虫。体長約15mm。全体黒く、前胸の背板は桃色で黒い十字形の紋が有る。雌雄とも腹部の端に黄白色をした発光器を持つ。本州・九州・対馬に分布(西日本型)。卵から成虫まで発光する。夏、各地の限られた水辺に群生する。幼虫は淡水産の巻貝カワニナヒメタニシを捕食。←→平家蛍。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
  ・平家蛍(へいけぼたる)は、ホタル科の甲虫。6月頃出る。ゲンジボタルより小形で体長約7~10mm日本全土に分布(全国型)。体は黒色。前胸背板は紅色で、中央に幅広い黒帯が縦走。成虫は断続的に光り、卵・幼虫・蛹も発光。幼虫は溜水に多く棲み、カワニナなどを捕食する。←→源氏蛍。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
   ・川蜷/河貝子(かわにな)は、カワニナ科の巻貝。貝殻は暗褐色、殻高約3cm。雌雄異体。卵胎生で夏に数百個の子貝を産む。日本では北海道南部以南の河湖に生息。肺臓ジストマの中間宿主。季語は春。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
  ・土竜・鼴鼠(もぐら、mole)は、広くは哺乳綱モグラ目(食虫類)、又、その内モグラ科の総称。10数属約30種を含み、日本には4属6種が居る。代表的な種は東日本ではアズマモグラ、西日本ではコウベモグラで、前者は体長10~16cm余り。後者はそれよりはやや大きい。毛色は黒褐色。手は外を向いて、手の平は大きく、頑丈。眼は退化。地中にトンネルを作り、ミミズ昆虫の幼虫を食べ、土を隆起させ、農作物に害を与える。むぐら。うぐら。もぐらもち。うごろもち。田鼠(でんそ)。
  ・交流(こうりゅう、alternating current)は、一定時間毎に交互に逆向きに流れる電流。通常の動力源、又は電灯用には、東日本で周波数50ヘルツ、西日本で60ヘルツの交流を用いる。交流電流。略号AC。←→直流。

 ○中央構造線(ちゅうおうこうぞうせん、Median Tectonic Line)とは、日本列島の中央を東西に、諏訪湖の南から天竜川の東側に沿い、豊川の谷を通って紀伊半島に入り、四国から九州中部に及ぶ大断層線。これより北側を内帯、南側を外帯と言う。
  ・構造線(こうぞうせん、tectonic line, structural line)とは、〔地〕規模の大きな断層、又は断層群糸魚川静岡構造線(=フォッサマグナの西縁)中央構造線の類。
  ・断層(だんそう、fault)とは、地層や岩石に割れ目を生じ、これに沿って両側が互いにずれている現象。ずれ方に因って縦ずれ断層(←正断層逆断層が在る)と横ずれ断層(←右ずれ断層左ずれ断層が在る)に分類する。比喩的にも使う。「新旧両世代の―」。
  ・活断層(かつだんそう、active fault)は、過去百数十万年間にずれた事の在る断層。将来も活動する可能性が在るもの。地形にずれが残っている事など、近い過去に活動した痕跡が存在。断層の活動は震源と成るので、活断層の調査は地震研究上重要。

 ○プレート・テクトニクス(plate tectonics)とは、大陸や大洋底の相互の位置の変動を、厚さ約100km剛体の板(プレート)の水平運動に依って理解する学問。大地形/地震活動/火山噴火/造山運動などの諸現象を統一的に解釈できる。1960年代後半以来発展。プレート構造論

【脚注】
※1:植生(しょくせい、vegetation)とは、植物を、生育する場所と一体化していう言葉。地球表層を指す植物学上の用語。植被。→植生図。

※2:サイクル(cycle)は、この場合、振動数/周波数の単位。国際単位系のヘルツに等しい。サイクル毎秒。
※2-1:ヘルツ(hertz)は、(H.ヘルツの名に因む)振動数/周波数の単位。国際単位系の組立単位。1秒間n回の振動をnヘルツと言う。記号 Hz

    (以上、出典は主に広辞苑です)

【参考文献】
△1:『歴史読本・特別増刊 日本人の起源を探る』(新人物往来社編・発行)。

△2:『県別日本人気質』(河出書房新社編・発行)。


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