資料−日本プロ野球の用語集
(Glossary of J-pro-baseball)

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 ■日本のベースボールの始まり(Start of baseball of Japan)

  ●野球/ベースボール(baseball)

 ベースボール(baseball)はアメリカで発達した球技。9人(投・捕・一塁・二塁・三塁・遊撃・左翼・中堅・右翼手)ずつの二組が、各9回ずつ交互に攻防の位置について得点を争うもの。競技場を内野と外野とに分け、攻撃側は順次に相手投手の投げる球を打って、内野を1周して本塁へ還った場合得点と成る。硬式と軟式とが在る。
 歴史的には、アメリカに渡ったラウンダーズ(=イギリスに発達したクリケットが変形したもの)という競技を基に、1839年にA.ダブルディーが考案したもの。1840年代にH.チャドウィクA.カートライトが前後して規則の整備に着手した。特にカートライトは1845年、現在の正方形のダイヤモンドを考案し、最初の野球規則を制定し、同時に野球クラブの組織化にも着手し、やがてアメリカ全土で行われる球技に発展した。
 日本では、1873年(明治6)に初めて開成学校でアメリカ人教師ホールス・ウィルソンが生徒に教えた。「野球」なる日本語は1894(明治27)年に "baseball" の訳語として造語。
 アメリカ・中南米・日本・アジア諸国・オーストラリアで盛ん。近年はヨーロッパにも広がりつつ在り、オリンピック競技にも成った。

   ○開成所(かいせいじょ)/開成学校

 江戸幕府が創立したオランダ/イギリス/フランス/ドイツ/ロシアなどの洋学を教授した学校。1863(文久3)年洋書調所を改称したもの。68(明治1)年新政府の手で開成学校として再興され、69年大学南校、71年南校と改称、73年再び開成学校と称。77年東京大学の一部と成る。

 ■日本プロ野球の機構と制度
  (Mechanism and system of Japanese professional baseball)

 1936(昭和11)年2月5日に日本のプロ野球が「日本職業野球連盟」という名称で発足して以来、2004年9月18日(土)と19日(日)に日本プロ野球史上初のストライキが決行された時点では日本のプロ野球を管轄する機構や組織は複雑怪奇な様相を呈して居ました。私も機構側 −主に「日本プロフェッショナル野球組織」を指す− の責任所在が解り難く感じて居たので、04年9月23日に『現代用語の基礎知識(1999年版)』の記述を基に日本のプロ野球の機構と制度に関する用語集の第1版を作成しました。その後04年末にパソコンを新しくした際に最新の『現代用語の基礎知識(2004年版)』や『学研新世紀ビジュアル百科辞典』に拠り04年12月29日に大幅に改訂し第2版としました。
 この第2版で内容は充実しましたが、機構や制度は04年秋の球界再編を契機に近い将来に改組・改定・新設される可能性が大いに有る、と予めお断りして置きます。重大な変更や新規の項目が生じた時は可能な限り最新な状態を保つ様にします。

  ●管轄する機構・組織

   ○リーグ制(総当り制、league system)

 日本のプロ野球は1936年の秋のシーズンからスタートし、あの沢村栄治が活躍し幕を開けました(←当初は春秋2シーズン制でした)。リーグ制の変遷を辿ると次の様に成ります。

  1リーグ制 春秋2シーズン制            1936年秋〜
    //   1シーズン制              1939年〜
  2リーグ制 1シーズン制              1950年〜現在
        (パでは2シーズン制や前期・後期制も)

 2リーグ制を実施する当たり、1949年にセ・リーグセントラル・リーグ(Central League)、正式名称:セントラル野球連盟)とパ・リーグパシフィック・リーグ(Pacific League)、正式名称:太平洋野球連盟)が創設されました。
 尚、パ・リーグでは興行的不振 −巨人や阪神の老舗球団は何れもセ・リーグです− から2リーグ制に移行した後も2シーズン制前期・後期制を導入した年も在ります。

   ○日本野球機構(The Professional Baseball Organization of Japan)と
    日本プロフェッショナル野球組織(Nippon Professional Baseball,
                    NPB,NPB)

 通常、日本野球機構と言う場合はコミッショナー事務局セントラル野球連盟(セ・リーグ)及びパシフィック野球連盟(パ・リーグ)の3者の合同体を指す。しかし正確には日本野球機構とは、日本選手権シリーズ試合(「日本シリーズ」)とオールスター試合を主催する団体で社団法人という法人格を持っている。この団体は、コミッショナーを会長とし、職員はコミッショナー事務局の職員が兼務する。平常この事務局は、傘下に在るセ・パ両リーグを管理しているのだが、これと平行して、日本シリーズとオールスターを主催しているのである。そして、その収益を、コミッショナー、セ・パ3局の費用や、選手の年金資金に充てている。
 一方、セントラルとパシフィックの両連盟を総称して、「日本プロフェッショナル野球組織(Nippon Professional Baseball)」(単に[日本]プロ野球組織とも)という呼称が在り、その最高責任者がコミッショナー通常のプロ野球の世界を言う場合は、この「組織」の方を指すのが正しい
 補足すると、つまりは「機構」が興行面を、「組織」がルールや契約面を、と一応の役割分担が有る様ですが、しかし乍ら「組織」のコミッショナーが「機構」の会長を兼務して居て、両者の関係は”曰く言い難く曖昧”且つ怪奇です。20004年の球団合併騒動の収拾に不手際が目立ったのも、この曖昧さに因る責任の所在の不明確さを挙げることが出来ます。

    ★興行面の巨人偏重

 そもそも日本のプロ野球は正力松太郎(※1)が読売新聞社長時代の1934(昭和9)年12月26日「大日本東京野球倶楽部」 −現在の読売ジャイアンツ(通称:巨人)の前身− を創設した事に始まり、彼が興行主としてアメリカ大リーグ球団を招き日米対抗試合を催し人気を博した歴史的経緯から、今に至っても興行面で読売ジャイアンツの意向が強く反映される”巨人偏重”や”巨人中心主義”が罷り通る不公平性が存在します。

   ○コミッショナー(Commissioner of Professional Baseball)

 日本プロフェッショナル野球組織を代表しこれを管理統制する最高責任者。日本でもアメリカでも組織傘下の全球団の意志で選任される。プロ野球界の秩序と利益を守る上で、組織内の全ての人や団体に指令を発したり、制裁を課したりする権限を持つ。一方で日本シリーズやオールスターを主催する社団法人日本野球機構の会長を兼任する。任期は3年。

   ○日本プロ野球選手会(Japan Professional Baseball Players Association)

 1946年に設立された「日本野球選手会」という選手相互間の共通問題を協議し親睦を図る組織を土台に、1980年に現在の「社団法人日本プロ野球選手会」を設立。1985年には労働組合としての認定も受け、退職後の生活安定を図って退職共済制度も実施して居り、年金やFA制度、代理人に依る交渉権の確立等について、機構側との交渉にも当たる。
 アメリカ大リーグでは、選手労組が報酬アップを要求してストライキを武器として経営者側と鋭く対立した事も有る、日本ではそうした年俸吊り上げ目的のストライキ闘争は無いが、04年のオリックスと大阪近鉄合併問題では、選手会側が機構側の収拾能力の無能さに対し選手の総意をストライキを以て突き付け、世論の支持も得て労働組合としての力を大いに発揮した。

   ○日本プロフェッショナル野球協約

 日本プロ野球界の憲法とされる。全207条及び関連する諸規定から成り立つ。戦後間も無くアメリカ大リーグの規程をモデルに作られ、その後多くの改正を経て現在に及んでいる。本来フェアプレーの精神を根底として居り、業界内の取決めを主な内容としている。従って「〜をしてはいけない」式の禁止表記は少ない。その為外部の弁護士などに依って勝手読みをされ、問題を引き起こす事例も跡を絶たない。その都度、一般向けの平易な条文に改訂すべきだとの声も有るが、一向にに改正される動きは無く事態を一層複雑化して居る。
 補足すると、「憲法」と言わる割りには所謂一つの”笊法(ざるほう)”です。

   ○フランチャイズ制(franchise system)

 プロ野球組織に属する全ての球団は野球協約に基づき、野球上の全ての権益を保障された特定の保護地域(=本拠地) −例えば、読売ジャイアンツの東京都、阪神タイガースの兵庫県、西武ライオンズの埼玉県など− を与えられる。このフランチャイズ制は、戦後GHQ(占領軍司令部)民生局の指導で制度化されたもので、以来日本プロ野球の言わば骨格に成っている。なお「セミ・フランチャイズ」という言葉を耳にするが、実際にはその様な制度は存在しない。

   ○参加球団の加盟料

 新たに日本野球機構に参加しようとする球団はプロ野球実行委員会で承認を得なければ為らないが、更に60億円(新加盟の場合)、もしくは30億円(球団譲渡に依る加盟の場合)の加盟料を日本野球機構に支払わなければ為らない。これは野球協約第36条に定められて居る規則で、この金は、機構と他の現存球団に均等分配される仕組みと成っている。この規則は1991(平成3)年に定められ、球団の経営権譲渡をさせ難くしリーグを構成する球団の新陳代謝を妨げて居るという指摘が有る一方、新興企業に依る軽々しい球団売買(=”球団転がし”)を防ぐ「参入障壁」の役割も果たして居る。

   ○クライマックス・シリーズ(Climax Series、略称:CS)

 2004〜06年はパ・リーグのみで上位3球団に依るトーナメント方式のプレーオフ制度(優勝決定戦)が実施された。これが興行的に儲かる為に2007年からセ・パ両リーグで実施する為に名称の公募した結果クライマックス・シリーズと決まった。セ・リーグでは「クライマックス・セ」、パ・リーグが「クライマックス・パ」である。
 試合は上位球団のフランチャイズ球場で行われる為にチケット収入や放映権などの営業収入は上位球団に入る仕組み。2位と3位の争いをファーストステージ、首位とファーストステージの勝者の争いをファイナルステージと言い、ファイナルステージの勝者が日本シリーズへ進出出来る(2009年迄は第1ステージ、第2ステージと呼んだ)。
 先ずCS戦は後の日本シリーズの日程変更が無い様にする為、試合数を固定化して居る。ファーストステージは3試合制でファイナルステージは6試合制。ファイナルステージでは上位チームには1勝のアドバンテージ(有利な権利)が与えられる。12回を過ぎても同点の場合は引き分けだが再試合は行わない。全試合を終了して同点相当ならば上位チームの勝ち −これもアドバンテージ− と成る。CSで下剋上を起こすには下位チームは短期で不利な条件を引っ繰り返す幸運に恵まれる必要が有る。
 セ・パでのルールの違いについてはパ・リーグは指名打者制でセ・リーグは投手が打席に立つ。日本シリーズではパ・リーグの主催ゲームでは指名打者制で、セ・リーグの主催ゲームでは投手が打席に立つ。
 CSの問題点として「ペナントレースの矮小化」に陥る危険性が在るが、この問題は選手個々の意識に委ねられて居る。

   ○アメリカの野球組織

 大リーグ(メジャーリーグ)はアメリカン・リーグ(ア・リーグ)14球団とナショナル・リーグ(ナ・リーグ)16球団の計30球団で構成され、両リーグ共に東・中・西の3地区に分かれて居る。公式戦は162試合制で、同リーグ内では他地区とも試合し、1997年からは両リーグの交流試合(インターリーグ)が行われ人気を集めている。優勝決定方法は各地区で1位と成った3チームと2位で最高勝率を挙げたチーム(ワイルドカード)の4球団でトーナメント方式のプレーオフを行う。まず、ディビジョン・シリーズ(5回戦制)を行い、それぞれの勝者がリーグチャンピオンシップ・シリーズ(7回戦制)に進む。そしてア、ナ両リーグの代表がワールドシリーズ(7回戦制)を戦い王者を決める。日本の二軍に当たるマイナー・リーグは3A、2A、1A、ルーキーとクラス別に分かれている。

  ●球団と選手との契約

   ○支配下選手

 球団が保有する選手数は、野球協約(「日本プロフェッショナル野球協約」)に拠って70名を超えては為らないと、厳重に規定されて居る。これは支配下選手登録以外に練習生を保有する事を禁じるもので、理由は、球団保有戦力の公平を期する事を狙いとして居る。しかし、この人数では二軍ないし三軍で充分な自前の選手を養成することも出来ず、消耗の激しい一軍要員への戦力供給にも著しい支障を来たして居る。
 戦力の均等は元より大切な考え方だが、それは一軍の公式戦に出場出来る選手数を28名と定めている事で十分に公平が維持されて居るのだから、二軍・三軍の選手数を制限することに特段の意義は見出せない。因みにアメリカの野球組織は選手の保有数は各球団の意欲と財力次第で自由とされ、豊かなファーム組織が全米に展開され、選手の養成に当たると共に、幅広い野球市場の開拓に寄与している。球団の選手数の制限は日本のプロ野球の自由競争を抑え発展を阻害する悪しき制度の典型と言える。
 補足すると、日本の各球団の若手選手の育成能力の低さは、この支配下選手数制限が一因と考えられます。

   ○統一契約書

 プロ野球の球団と選手が契約をする際の様式。全て野球協約が定める一定の書式で定められる。その様式を統一契約書と称して居る。記載内容は、来たるべきシーズンの参稼報酬(年俸)から肖像権、著作権、トレードに関わる条項、契約解除の際の取決め、更には任意引退の規則などが盛り込まれ、全35条に及ぶ。現行では複数年契約や特定のボーナスを支払うインセンティブ契約は認められて居ないが、現実ではこれらの契約を各球団とも活用して居り、特に外国人選手に対しては統一契約書よりも選手側代理人との契約書が優先しているのが現状で、統一契約書の権威は年毎に低下して来て居り、その改正が叫ばれて居る。

   ○参稼報酬

 公式戦に参加する選手の報酬(=年俸)はシーズン後行われる契約更改の交渉に依って定められる。金額を決定する基準はその選手が果たした所謂「貢献度」だが、在籍年数や知名度、球界に於けるランクなど様々な要因も考慮に入れるべきで、特定の方式が固定的に在る訳では無い。ここから、より高額の報酬を求める選手側と、年俸の高騰を抑えようとする球団側との間で、交渉が締結に至らないケースも発生して来る。これに備えコミッショナーと両リーグ会長で構成する年俸調停委員会が在る。

   ○年俸調停委員会

 球団と選手は次年度シーズンに備え支配下選手契約を締結するが、その際、参稼報酬の金額が合意に達しない場合、選手、球団の何れの側からもその旨を所属連盟会長に金額の調停を求めることが出来る。その調停に当たる委員会は、コミッショナー及び両連盟会長の3人で構成され、調停を受理した日から30日以内に妥当とされる金額を決定する。今後選手の契約更改交渉に代理人が多く登場することが予想されるが、調停委員の顔触れにプロ野球組織のトップ3人が当たっているのでは迅速な機能に欠ける恐れが有り、一般の学識経験者を加えるなど、若干の改正も望まれる所だ。

   ○代理人交渉

 選手と球団の契約更改交渉を、選手本人では無く代理人を立てて交渉するもの。現行では1選手に付き1名の弁護士にその資格が認められて居る。この内容は日本プロ野球選手会の予てからの要望で2000年秋から試験的に導入された。しかし野球協約には代理人交渉についての如何なる規制も無く、本来代理人の起用は選手側の自由である筈なのだが交渉の難航を警戒する球団側の要請で、この措置が採られて居る。

   ○インセンティブ契約(Incentive Contract)

 選手の年俸を決める契約交渉で、双方の言い分に大きな差が有って交渉が難航した場合次のシーズンでの選手の働きに一定のノルマを課し、それをクリアしたら特別にボーナス(=ボーナス特約)を支給すると約束することで、契約交渉の打開を図るには有効な手段だ。例えばホームラン20本打ったら1000万円、20本以上は1本毎に100万円という具合だ。一見選手のモチベーションを高めるのに有効な手段だが、逆にホームラン欲しさの大振りを認めることにも成り、実際の効き目はケースバイケースとされる。なお現行の統一契約書ではボーナス特約は一応禁止されて居る。

  ●入退団と移籍

   ○ドラフト制度(draft system)

 ("draft"の「兵を徴募する」意から命名)プロ野球で、契約金の抑制各球団の戦力均衡化などの為に1965年から設けられた新人選手選抜制度。全球団で構成するドラフト会議(新人選択会議)は毎年シーズン終了後(当初は11月)に行われ、各球団が希望選手を指名し入団交渉権を得る。1、2位の指名では、社会人・大学生に限って本人の希望球団を選べるが、高校生や希望球団が無い場合に球団の指名選手が重複した時は抽選が行われる。3位以降は、奇数回が下位球団から偶数回が上位球団から優先的に指名を行い入団交渉権を獲得する。
 制度運用後一定の効果は見られた反面、選手の球団選択の自由を束縛するとの批判は常に付き纏う。近年は上位2名迄は選手に依る逆指名自由獲得枠を認めるなど改定したが、逆に有力選手の競合が発生し球団に依っては高額な金銭を別途用意(=裏金)するなどの弊害が生じ、最近では完全なウェーバー方式への移行も叫ばれて居る。何れにしても、抽選で選手の交渉権が決まるので各球団の新人獲得の努力は「運任せ」と成り、各球団の新人発掘や育成の意欲は低下した。

   ○ウェーバー方式(waiver method)

 英語の "waiver" とは「権利放棄」という意味で、プロ野球でのドラフト制度に於いてウェーバー方式と言う場合は、逆指名自由獲得選手の権利を放棄するという意味で使われる。この方式では、シーズン終了時の球団順位を参考にし下位の球団から優先的に選手の指名権を割り振るので、他球団との競合が起こらず”裏工作”の余地が無いのが長所。従って指名権は即ち独占交渉権獲得を意味しする。

   ○タンパリング(tampering)

 英語の字義の通り不法に手を加える事で、この場合は他球団に所属している選手に契約勧誘の目的で接触する全ての行為を指す。野球協約第68条及び第73条できつく禁止されて居る。プロ野球傘下の全選手は野球協約が定める統一契約書に拠って、契約している球団に身分を拘束されて居り他の如何なる者もこの権利を侵すことは出来ない。タンパリングに該当する行為には、例えば他球団関係者や監督に依る「誘いのコメント」がマスコミで報道されること迄、間接的交渉の疑い有りとされることが有る。タンパリングの事実が明らかと成った場合は、違反球団と該当選手との契約が永久的に禁止され、且つ、その行為の有った球団役職員は職務停止の処分を受ける。

   ○自由契約選手(free contract player)

 プロ野球で、球団から契約を解かれて、どの球団とも自由に契約できる選手。←→任意引退選手。

   ○フリーエージェント制度(free agent,FA,FA)

 自由契約権制度。通常FA選手と言われ、何者にも拘束されずどの球団とも自由に契約出来る選手の権利のこと。球団からの解雇では無く、選手が積み上げた実績に対する見返りとして一定条件を満たした時に自由契約選手に成る権利が付与される制度。
 日本でも(アメリカでも)選手の身分は球団側の「保有権」に拠って球団に厳重に拘束され、任意に他球団と契約する事は固く禁止されて居る。これでは自由が無さ過ぎると選手会が申し立て、1993(平成5)年からこの制度が設けられた。日本では新人の時に希望球団に入団し難いドラフト制度の救済措置の意味合いも有る。
 制度の規定に拠ると、新人として入団した球団で出場選手登録された日数が1シーズン150日を満たし、これが9シーズンを終了した時、その選手はFA資格を取得出来、以後一定の手続きを経てどの球団とも契約可能と成る。その後FA選手を獲得した球団は旧球団に、当該選手の前年度の契約年俸と同額の金銭を支払い、加えて選手1名を補償として提供する。旧球団が選手に依る補償を求めない場合は、前記の年俸の150%の金銭補償と成る。この制度の活用次第では、近年の読売ジャイアンツの様に金力で巨大戦力を擁する事が可能と成り、外来戦力に依存する余り生え抜き選手の育成が疎かに成る弊害も出ている。

   ○任意引退選手(arbitrary retirement player)

 プロ野球で、単に「引退」と言う場合は球界の現役活動から完全に身を引く事を指し他球団への移籍など発生しないが、「任意引退」は他球団への移籍を前提に選手側から球団に願い出るもの。任意引退選手とは、所属球団との契約を解消した後も選手としての「保有権」が元の所属球団に有る選手。他球団と選手として契約をするには保有権を持つ球団の承諾が必要に成る。←→自由契約選手。
 選手が任意引退を希望する場合の手続きは、野球協約で厳重に規定されて居る。先ず選手が所属球団に引退を希望する理由を記入した申請書を提出する。球団ではそれに意見書を添付して連盟会長に申し出る。連盟では更に会長の意見書を付けてコミッショナーに提出、コミッショナーがその引退を正当なものと判断した場合、この申請書は受理され他の全球団に公示され、そこで初めて選手契約は解除される、という仕組みに成っている。
 補足すると、球団が選手を解雇し自由契約にする手続きが極めて簡単なのに対し、選手から任意引退を願い出る手続きが厳重且つ煩雑なのは、球団と選手の間に「他人の介在を許さない用心」の為とされて居るが、実態は他球団への移籍防止の為の”嫌がらせ”です。例えば、野茂英雄の様に94年の暮れに任意引退選手 −この時は未だポスティング・システムは無かった− としてアメリカ大リーグに入った場合、再び日本でプレーする場合は任意引退状態に復す為に旧所属球団にしか復帰出来ないのですが、野茂の場合は保有権を有した近鉄球団が04年秋に消滅したので日本球界復帰に際し無拘束に成ったのです。

   ○日米間選手契約に関する協定

 日米の選手を獲得する際の日米間のルール。1966年10月24日の日米コミッショナー会談で同意、67年10月17日に調印され、当初は日本の球団がアメリカの選手を獲得する一方的な内容の協定だった。日米のコミッショナー事務局を通じてアメリカの選手の身分や獲得の可能性を照会して居たが、その後98年11月3日に東京で日米代表者に依り協定が改定され、一方的な内容から双方の選手を獲得する場合の新協定に合意。12月15日に調印、発効された。

   ○ポスティング・システム(posting system)

 このシステムは1998年12月から実施された。日本プロ野球に所属する選手が、球団に拘束される任意引退選手を避けてアメリカ大リーグ入りを目指そうとする場合、フリーエージェント(自由契約権)の資格を得てから移籍する方法と、このポスティング・システムに拠る方法の2通りが在る。因みに、野茂が移籍した時はこのシステムが無く任意引退せざるを得なかった。
 ポスティングとは、そもそも遠隔地への転属という意味で所属する日本球団の事前の了承が大前提と成る。選手の意志は両国コミッショナーを通じて全米の大リーグ球団に通告され、選手の獲得を希望する球団は日本側球団への選手獲得の代償として支払われる移籍金の金額を入札する。この中から最高額を提示した球団が、その選手との独占交渉権を獲得する。以後交渉が纏まって大リーグ球団入りが決定した場合、移籍金は直ちに日本側球団に支払われる。2000年12月、オリックスのイチローがこのシステムを活用して大リーグ・シアトルマリナーズ入りを果たした。オリックスが得た移籍金は15億円と言われる。

 以上の記述でお解りの様に、2004年末の日本のプロ野球の機構や制度は”悪しき慣習”を残し、管轄体制は曖昧で、野球協約は”笊法”で”嫌がらせ”をも含む代物なので、機構側の問題解決能力が低いのは当然です。


【脚注】
※1:正力松太郎(しょうりきまつたろう)は、実業家・政治家(1885〜1969)。富山県生れ。東大卒。警視庁から1924年読売新聞社社長(後に社主)に就任して大衆的新聞に発展させ、52年日本テレビ放送網を創業、民間テレビの基盤を築く。1934年日本のプロ野球を創始し発展に貢献。衆議院議員。

    (以上、出典は主に広辞苑です)


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