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告白
私はここに、自らの恐怖を書き記すことにする。
書くことは、正直ためらわれる。今でさえ、腕ははペンを握ることを拒否し、
体の底から来るふるえが、私の筆跡を乱す。
しかし、これを「書かないこと」こそが、真の恐怖を、
この事実を公表せず、闇にしてしまうことへの恐れが、
私にこの文章を残すこととなったのだ。
勇気ではない、真の憶病さが、逆に私を告白にかりたてる。
この事実を知るものを一人でも残したい。
この恐怖を広めることにより、私の中のこの恐れを少しでも薄めたい。
その一縷の望みだけが、私を生かしている。
恐怖のあまり、自殺することは、まだ正気の残っている証拠だと、私は知った。
真の恐怖は、そういった能動的な行動を全て封じてしまう。
死ぬことも出来ず、狂い、逃避することも出来ない、
私は恐怖という牢獄にとらわれた囚人となってしまった。
忘却こそ、真の神の慈愛だということを私は知った。そして私は
神からも見捨てられてしまったのだ。
アダムとイブは知恵の実を手に入れたために、楽園から追放された。
「知る」ということは、神の怒りを買うことなのだ。
これを読む人は、激しく私を恨むだろう。私がこれから語ることは、
あまりにも、そう、あまりにも「真実」であるからだ。
まどろみにたゆたう眠り人を揺り起こすのは罪悪だ。しかし、
私の恐怖があえてその罪を犯させるのだ。
ああ、今でもそのことを思うだけで私の首は事実から逃れようときしみをあげる、
足は椅子に座っている今でさえ、後退しようと床を蹴る。
これ以上は耐えられない。いや、私の中で荒れ狂っている「恐怖の事実」が
私の体にとどまっていることを押さえることが出来ないのだ。
書き記そう。それしかできない。
ああ、私はなんと恐ろしいことをしようとしているのだ。
でも、出来ない、沈黙を守ることが、出来ないのだ。
さあ、今こそ