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骨騎士部屋の奇跡


他人のものは他人のもの、自分のものは自分のもの
ジャイアンのせりふがいつまでも「異端」として認識されるとおり、
一応、日本社会ではそれが定説である。
・・・・これも時事ネタなんだろうなぁ。
それはともかく。
リッチ部屋での慣習が、少なくても、和国では、あります。
ウルティマはたくさんの「世界」があり、僕が雑文書いているのは、
その世界のうち一つ、「和国」での出来事なのです。
稼げるモンスターは、人が集まり、通いつめます。
そして何かしらの暗黙のルールが出来る。
僕はそれをゲームで体験できるというのが、非常に面白く感じています。

骨騎士部屋ってのがあります。
骸骨戦士というと、日本ではあまり強いイメージがないですが、
あちらさんのファンタジーでは、特に
ドラゴンの歯から生み出される骸骨戦士、ドラゴントゥースウオーリアー
ってのは一級品の扱いをされてまして、べらぼうに強い
ってのが定説です。(くどいね)
映画だと、やっぱり、「アルゴ探検隊の冒険」だったっけか?
作品名うろ覚えですが、こいつら強い強い。特撮もかっこいいっす。
ゲームだと、「ゴールデンアックス」ですな。
プレイヤーと同じだけの技を使いこなし、実にかっこいい。
昔はたかが骸骨が何でこんな強いかと、首をひねったもんですが・・・・・・
しかし・・・引用古くさいのばっかりだな、とほほほ。

てな訳で、ここ、ブリタニアでは骨騎士は(スケルトンナイト・ボーンナイト)は
剣技が超一流、とされているモンスターです。
強い敵から剣技を学ぶ。強ければ強いほど、学ぶことは多い。
殴ってるだけで、限界まで剣技をあげることが出来るのです。
しかも、しかもですよ。
背中から殴っても、偉大な達人になれるのですよ、これが。
ま、アメリカ人が作ったゲームだし。
文化の壁ってことで。

で、ですね。
ディシィートっていうダンジョンには、通称、骨騎士部屋ってとこがあります。
んで、狭いところに骨騎士が湧く。
新キャラ、コルム君はようやく剣の持ち方も様になって生意気盛りの
マスター・ソードマン。
一足跳びに達人になりてぇ。ってなわけで、仲間を誘っていくことにしました。
ところがこるむ君。
弱い。
タイマンではいまだに骨騎士に勝てません。
な、わけで、バックアップをしてもらいながら、
二人、もしくは三人で骨騎士を殴っていました。

そこにあらわれた、怪しい人影。

突然人の獲物に殴りかかってくるのです。しかも無言。
まぁ、ブリタニアでは良くあることです。
「俺の、俺のだ!」とは叫べない小心者ご一行様でしたし、
技能もあがるし、ムキになって縄張りを主張するのも・・・・ねぇ?
その人は次々に他の人の獲物に殴りかかっていきます。
見てるうちに、他の骨騎士がその人を攻撃始めました。
次の瞬間、その人はまさに脱兎そのものに、階下への階段に突進。
階が変わると、モンスターは相手を見失うのも、ここブリタニアでは、常識。
モンスターは他の人にねらいを定めました。
そして戦いが始まるころに、その人は戻ってきて、背後から骨騎士を殴ります。
ニガウリ談。「考えようによっては、頭いいね」
ま、ちょっとずるい感じもするけどね。
その人なりに気を使っているらしく、怪物に止めを刺すと得られる名声は、
慎重に回避している。止めが刺される前に場所を変える。
モンスターの死体からのお金は取らない、と。
「やっぱり日本人なのかなぁ」
とか思っちゃうことも。

僕たちはパーティーで狩をしていました。
「群れないとなんにも出来ないのかも」といわれるとちと痛いんですが、
楽しいんだから仕方なし、ということで。
一匹の獲物を集団で殴っています。
「他の人から見たら、彼と同じ事をしてる」といわれても、
あんまり反論できません。
一人が、彼のまねをして、僕らの獲物に殴りかかってきました。
それが暴走のきっかけでした。
突然暗黙の了解も秩序も崩れ去りました。
暴徒のごとく、我先にと現れた骨騎士に殴りかかる群衆。
いけにえに群がる飢えた狼。
餅配る神主さんに手を伸ばす参拝客(季節ネタ)。
7・8人に袋叩きにされる哀れな骨騎士。
生まれた時代が悪かった。

いつもの遠慮もなんもなし。アンモラルな快楽。
楽しい。
「うへへへ」
「ぎゃはは」
「cool!」
笑いのあふれる、いい狩場。
「知らない子はもういない。みんな仲間だ友達なんだ。」
躁状態の暴徒どもは、次々と獲物を屠っていきました。

「なんかこう、気持ち良くなってくるねぇ」
僕はしみじみ打ってみました。
「キミ、クスリやってんの?」と群衆の誰かがこたえます。
ま、陳腐な突っ込みですが、
こう、ま、普段からあんまり抑圧なんかはされてませんが、
変な開放感が脳を支配して、恍惚となっているのは確かでした。

回復用の包帯がきれる、ということで、この祭は終わりを迎えました。
「んでは僕達戻ります」
上気した頬のまま、額の汗をぬぐって、僕たちは彼らからに別れを告げました。
暴徒から離れて、僕たちを見送りに来たのは、彼でした。
「もう帰っちゃうの? せっかく面白くなったのに」
やっぱり日本人でした。たははは。

今はもう、骨騎士部屋に行っても妙な緊張の中、
人は自分だけの骨騎士を狩っています。以前とまったく変わらずに。
いつもの光景、いつもの人たちです。
ちょっぴり寂しいですが、僕は仲間とともに、狩りを続けてます。
安心してね。

あれは一瞬の「祭」でした。