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カレーパン
「天晴れカレーパン」
このタイトルを新聞の広告で見たときには、胸が躍りました。
中学生の頃の思い出だ。
石坂浩二のラジオ番組の本だというのを知ったのは、読み始めてからだった。
期待違わず、カレーパン一色の本であった。
中学生。仁侠映画を見た後、肩をいからせて通りを歩いてしまう、年頃。
本を読み終えた僕は立派なカレーパン評論家に変身を遂げていたのでした。
それからがもう大変、自転車に飛び乗りあたりを徘徊、
いろんな店でカレーパン食いまくり。
この生地は甘すぎる。
パン粉がたってない。
油が重い。
カレー粉が蛍光色。
中身と皮のバランスがなってない。
などなど、似非専門家の視点で、バッタバッタとなぎ倒す。
嗚呼、あまりにビンボ臭いこだわり、あまりにいじましい判断基準。
中学生の頃すでに私は馬鹿だったのです。
お気に入りのカレーパンは、家からちょっと離れたところにある、
宮原パン屋のカレーパンでした。
結局地元のしかも食べなれたやつが一番なんてのたまうあたりは、
素人の真骨頂ってやつでしょうか?
これをですね、アルミホイルを敷いて、オーブントースターでまず3分
そしてひっくり返して、スライスチーズをのっけて更に3分。
地上に現れた桃源郷って、この事を言うんじゃないでしょうか?
油はじゅうじゅうと小さく音を立てて表面ではね、かりかりの表面になっています。
そして心持ちふっくらと丸みを増したボディ。チーズのとろけ具合。
あの暖めたスライスチーズに生じるしわがまたいいんですよ。
これを唇を熱で焼きながらも食べるのです。
何よりもたかがカレーパンにここまで凝ると言うのが最大のスパイスです。
もう、うまいっ。最高ですわ。
しかも焼き具合と、その日の気温、湿気、さらにカレーパンの鮮度により
ベストコンディションは微妙に変化し、
あの時にたどり着けた味。
に近づける日はめったにないとないとなると、こりゃーもう、凝りに凝る凝る。
その姿はさながら一枚の絵の様であったと。母は後に述懐しています。
題・
気温計を見ながら、トースターのタイマーと格闘する大馬鹿。
以上、若き日の、「肥満細胞の基礎生成」のエピソードでした。