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生命


母は、ゆっくりと、大きくなった自分のお腹を抱く。
 小さな、新しい命の鼓動。
 自然に、優しい笑みが口元に浮かぶ。
『母子ともに健康です。元気な赤ちゃんが産まれますよ。
 がんばってね』
 産婦人科医の声を思い出す。
 幸せだ。
 二人目の、子供であった。
 子供は二人は欲しい。夫婦の間での望みが、遂にかなう。
 一人目は男の子だった、二人目は女の子が欲しい。
 レントゲンで性別は調べることが出来るが、
夫婦の話し合いであえてそれはしないことにした。
 早く生まれてきて欲しい。
 もう、元気にお腹を蹴るのだ。男の子かもしれない。

 昨日、母は自分のお腹に息子の顔をつけさせて、
その新しい命の動きを感じさせた。
 小学生になったばかりの息子は、お腹からの衝撃に、
びっくりした顔で母を見上げた。
「この子が生まれたら、お兄ちゃんになるんだよ」
 父の声に、息子は大きく頷いた。
 くすりと、母は思い出し笑いをする。
 幼いながらも、誇りと、緊張に満ちた、まじめな「兄」の顔をした、息子。
 良いお兄ちゃんになるだろう。
 小さく、幸せに満ちたため息をついて、まるく、自分のお腹を抱く。
 「母」の仕草であった。

「ただいまー」
 息子の声。
 小学校から帰ってきたのだ。
 母は妊婦特有のゆっくりした動きで、玄関に向かう。
 ドアを開けると、喜びに輝く息子の顔。
「お帰り、何か良いことがあったの?」
 息子はきらきらと目を輝かせて、母に抱きつく。
「お母さん、今日きみちゃんから聞いてきたんだよ!」
 母の大きなお腹に手を当てて、母を見上げる。
「これって、爆誕っていうんだよね?」

日本語は、正しく子供に伝えましょう。
んだあのタイトルはよぉ?