2006.12.27  合羽橋 なってるハウス   報告者 K.T.

出演  渡辺勝(vo.pf.cho.)

Guest  松倉如子(vo.)  

 諸般の事情で一年近くライヴ通いをサボっていたのだが、12月はサイト延命月間と銘打って、ちょこちょこと動いた。そのしめくくりとして、なってるハウスの渡辺勝のソロライヴに赴き、渡辺勝のディープな世界にどっぷりひたってこの一年の世俗の垢を洗い流そうともくろんだのであった。昼間は気温が20度を越える年の瀬とは思われないようなバカ陽気で、日が暮れてもまだその暖気の残る中、電車に乗ると車内はふだんの平日よりもかなりすいている。これで景気がいいものかねえと思いつつ電車にゆられ、鶯谷でおりて、冴えた上弦の月に照らされてトコトコ歩くこと十分あまり、なってるハウスの前にきてみれば、“ゲスト 松倉如子”と書いてある。なってるハウスのサイトのスケジュールのところにも、OLD TIMES BRASS BAND にも、ゲスト有りという記載はなかったはずなので、脳が軽くパニックを起こした。“いろいろと問題をかかえた脳であるから、想定外の出来事にはうまく対応することができない”、と以前この周縁事態の記事に書いたことがある。しかし、むりに対応することはないと考えて行動すればなんとかなる場合もある。前にもこういった想定外の事態に遭遇したことがなかったわけではない。そこでとりあえず店内に入って開演を待つことにした。
 当夜の演奏曲名は、以下のとおりである。曲名のあとには渡辺勝の担当楽器を記すのが通例だが、今回は全曲ピアノを使用したため、記載は省略する。

1.冬の朝
2.夢
3.OLD FRIEND
4.鉄橋
5.別れ来る
6.アムステルダム
7.東京
8.君を待つ
9.あなたの船
10.白粉
11.君をウーと呼ぶ
12.道草
13.八月
14.洞窟の雫
15.逢えてよかった
16.僕の倖せ

 7曲目の“東京”のあとに、ゲストの松倉如子(マツクラユキコ)が渡辺勝のピアノ伴奏で6曲歌った。
 16曲目の“僕の倖せ”は、ヴォーカルが松倉如子で、渡辺勝はピアノ伴奏とコーラスを担当した。

 “OLD FRIEND”や“アムステルダム”のようなギターの弾き語りヴァージョンに耳が慣れている曲の場合、ピアノ弾き語りということになると、印象はかなりちがってくる。テンポはおさえ気味のように聞こえるし、ヴォーカルにも抑制がはたらいて、一語一語が重みを増すように思う。“君をウーと呼ぶ”は、今回は前半のみのショート・ヴァージョンであったが、このショート・ヴァージョンだけでもかなり長かったように感じられた。この調子で後半の“今日は夏祭り”以降に突入したとしても、霊魂の感情が高ぶって烈しくほとばしるということはなかったのではないだろうか。
 ピアノでじっくりということになると、やはり聞き慣れている正調“あなたの船”や“逢えてよかった”といった30年以上も前の曲に、圧倒的な説得力をおぼえる。このところ音楽を聞いて幸福感を味わうといったことがほとんどなかっただけに、この2曲はありがたいものであった。聞けてよかったと思う。
 “僕の倖せ”は、ヴォーカルが渡辺勝ではなかったのでがっかりしたが、一年もライヴ通いをサボっていた男がぜいたくなことをいってはイカンだろう。またの機会のお楽しみ、ということにしておきたい。



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