2005.11.16 合羽橋 なってるハウス 報告者 K.T.
出演 渡辺勝(vo.g.pf.) 川下直広(Ts.)
11月はなってるハウスの近くの鷲神社で酉の市がある月なので、ライヴのスケジュールと酉の市のスケジュールの双方を検討しなければならない。今年は一の酉が11月9日、二の酉が11月21日で、渡辺勝と川下直広のデュオが11月16日であるから、ライヴの前後に酉の市に行くということになると、ちょっと間があきすぎで、その間に自宅に帰ったり仕事に出たりするようなことになりかねない。それではおとりさま気分も盛り上がらないだろうから、今年はライヴだけにした。また、鳥インフルエンザが流行している昨今である。酉の市の雑踏でおとりさまインフルエンザに感染したらたいへんなことになる。老い先短い我が身を思えば、酉の市をパスするのも妥当な選択だといわざるをえない。
当夜の演奏曲名は、以下のとおりである。曲名のあとには例のごとく渡辺勝の担当楽器を記しておいた。pf.はグランドピアノ、g.はガットギターである。
1.冬の朝 pf.
2.夢 pf.
3.あなたの船 pf.
4.僕の倖せ pf.
5.巨大な屍 pf.
6.アムステルダム g.
7.東京 pf.
8.鉄橋 pf.
9.立ち止まった夏 pf.
10.土埃 pf.
11.ヤナギノウタガ聞コエル pf.
12.ベアトリ姐ちゃん pf.
13.君をウーと呼ぶ g.
14.白粉 pf.
15.道草 pf.
16.八月 pf.
17.花嫁御寮 pf.
18.truth pf.
19.別れ来る pf.
20.斜岩病院(エンディングテーマ) g.
今回は、こちらの耳の症状が影響しているのだと思うが、なんだか音がこもり気味で、深い穴の底で演奏している音楽を地表付近で聞いているような感じがした。聞いていると穴の底にひきずりこまれそうになる。鬼趣に満ちた演奏であった。
“巨大な屍”は久しぶりに聞いた。周縁事態の過去の記事を調べてみたら、2002年12月6日の稲生座で演奏されたという記載があるだけである。
“ベアトリ姐ちゃん”は、春先のようなはじけたうたいぶりではなく、またサックスも地味に徹して笑いをとることもない。このあたりから鬼気が強まって、次の“君をウーと呼ぶ”の鬼唱で鬼気全開となる。聞いている自分ももはやこの世のヒトではない。“八月”“花嫁御寮”“truth”と続いた3曲では、ヴォーカルのほかに鬼の哭声が切れ切れに聞こえていた。
ラストはまた“亡命”かと思っていたら“斜岩病院”で暗くおわった。なんでかなと首をひねりつつ店の外に出ると、中天には陰暦10月15日の月がのぼっていた。ヤラレタと思った。