2004.12.16  高円寺 稲生座   報告者 K.T.

出演  渡辺勝(vo.g.)  竹岡隆(Eb.)   

 渡辺勝と竹岡隆のデュオの稲生座におけるひさびさの単独公演であるから、喜び勇んで元KKKバスの国際興業株式会社のバスを駆って高円寺におもむいたのであった。12月4日の稲生座における野澤享司&斉藤哲夫ジョイントライヴの例をみてもわかるとおり、ジョイントライヴにしたほうが集客が増すとは限らないのであって、ジョイントライヴにした結果かえって単独公演よりも入りが悪くなったという事例はよく耳にする話だし、大体この年末の世間では忙しいといわれている時期に2晩連続渡辺勝ライヴなどという酔狂に自分を走らせたのも、12月4日のジョイントライヴでたまたま斉藤哲夫の“あなたの船”を聞いてしまったからにほかならず、あれを聞かなかったらこれほどまで烈しく渡辺勝の歌声を希求することはなかったはずだから、これはもう斉藤哲夫には深く感謝したい、ありがたいありがたい、などとブツブツと文句をいっているうちに稲生座についてしまう。野澤享司のライヴの時には厚い雨雲の下にある稲生座も、見上ぐれば細い月の冷たく冴え切った冬空の下にあった。
 渡辺勝は例のごとく稲生座のピアノを弾くことはなく、すべての曲でガットギターを弾いて歌った。この日の演奏曲名は以下のとおりである。

1.赤い自転車
2.闇に浮かんだ50の音
3.白粉
4.道草
5.八月
6.OLD FRIEND
7.土埃
8.夏のスケッチブック
9.ヤナギノウタガ聞コエル
10.チャーリーのバー
11.Long Long Ago
12.君をウーと呼ぶ
13.いつも一緒に
14.花嫁御寮
15.帰還
16.路傍
17.斜岩病院(エンディングテーマ)
18.truth
 
●アンコール●
19.僕の倖せ
20.夜は静か通り静か

 曲名のあとに印を付した3曲が、前日のなってるハウスと重複する曲であった。2日間で35曲演奏して、重複したのが3曲だけ、といっても両日とも無理をして寄せ集めたという印象はなく、いずれもたいへん内容の濃い選曲であった。“冬の朝”“アムステルダム”“春三月”“帰り道”“君と空と道と僕と”“ラスト・ヴァージン”といった曲を温存してこれだから、まだまだ余力はありそうだ。
 “Long Long Ago”は1994年のアルバム“FADELES S”におさめられている曲で、前にも稲生座で竹岡隆とのデュオで聞いたような記憶がある。ほかの編成だとちょっとむずかしい曲かもしれない。渡辺勝の迫力のあるヴォーカルに竹岡隆ののびやかなベースがからむと、たまらない快味をおぼえる。“FADELES S”所収の“Long Long Ago”を聞いたある人曰く、“この曲はフル・オーケストラをバックに布施明がクサ〜く歌ったらとてもいいだろうなあ”と。なるほどいわれてみればそんな気もする。
 2日間通しての印象であるが、“旅する亀”“夏のスケッチブック”“帰還”“路傍”といった新しい曲の充実ぶりが目立った。新作CDの制作が待たれるところである。



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