2004.12.15 合羽橋 なってるハウス 報告者 K.T.
出演 渡辺勝(vo.g.pf.) 川下直広(Ts.)
Guest 有馬忍(vo.g.)
朝起きて朝日新聞の朝刊をパラパラと見ていたら、渡辺勝の写真が目に入った。“LIFE
GOES ON”という団塊世代向けのキャンペーンについての記事に添えられた、記者会見の時の写真であった。コピーを取って、なってるハウスに持参する。この“LIFE
GOES ON”に関しては、どこに行ってもいい評判を聞かない。とちぎポップ資料館で独自のマーケティングを試みたところ、やはり懐疑的な意見が大勢を占めた。ここにいくつか挙げてみることにする。
●団塊世代の流されやすい層を対象にしたビジネスなのであろうが、そういう連中はもともと素養がないのだから、あまりディープなものを聞かせても、猫に真珠、豚に小判のお月様だ。“なごり雪”や“精霊流し”程度のモノを与えておけばそれで満足であろう。
●懐メロを聞かせようというのなら、60年代70年代のアナログ音源をデジタル化して聞かせたほうが喜ぶのではないか。それだったら演奏している側も若くて勢いがあるし、聞く側も若かったころの自分に戻ったような錯覚が得られるかもしれない。しかし旧譜のデジタル化は90年代にほぼ完了しているはずだ。
●FFA が改名したものだと思ってました。興味ないっす。
●団塊世代もナメられたものですね。彼らの長年にわたる思考停止のツケを払わせるという趣旨なら賛同してもいいです。
●ハコモノ行政の遺産である××市文化会館にわざわざ足を運んで、老いの色濃いフォークだかニューミュージックだかのシンガーの歌を聞かされても、自らの老いを自覚させられるばかりだから、ホールライブはおそらく失敗に終わるだろう。
●これで渡辺勝さんの所得が大幅に増えるのならいいことだと思います。
当夜の演奏曲名は、以下のとおりである。曲名のあとには例のごとく渡辺勝の担当楽器を記しておいた。pf.はグランドピアノ、g.はガットギターである。川下直広は、すべての曲でTs.を吹いた。
1.立ち止まった夏 pf.
2.あなたの船 pf.
3.旅する亀 pf.
4.クレソンの里 pf.
5.あの頃 g.
6.夢 pf.
7.東京 pf.
8.君をウーと呼ぶ g.
9.僕の家 pf.
10.砂とシャベルの日々 pf.
11.星が生まれたよ g.
12.夏のスケッチブック pf.
13.truth pf.
14.別れ来る pf.
15.亡命 pf.
※4曲目の“クレソンの里”のあと、渡辺勝(pf.)と川下直広(Ts.har.)の伴奏つきで、ゲストの有馬忍(vo.g.)が7曲歌った。
12月4日の稲生座における野澤享司&斉藤哲夫ジョイントライヴで、斉藤哲夫のセカセカした“あなたの船”を聞いてからずっと、元祖渡辺勝の正調“あなたの船”が聞きたくてたまらなかった。2曲目でその正調“あなたの船”を聞かせていただいて、ようやく脳の中から斉藤哲夫の“あなたの船”が出て行った。よかった。これで安心して新しい年が迎えられる。
“夏のスケッチブック”は、筋金入りのセンチメンタリスト渡辺勝の本領が十全に発揮された佳曲である。抒情性に富んだ歌詞とメロディーラインの美しさにはあきれかえるばかりだ。これが30年ぐらい前に作った曲というのならある程度納得することもできるというものだが、実は今年の新作なのだそうである。
なってるハウスは PA のリニューアルが図られ、従来からのステージ上のスピーカーの上に新しいスピーカーを設置し、また、マイクも新しいものにとりかえたのだそうだ。その結果、ヴォーカルの音質が以前よりも格段によくなったように感じられた。より深くより迫力のある音だった。喜ばしいことだ。しかし、これだけお店のほうが音に気をつかってくれているというのに、今回の聴衆には呼吸器系統に疾患を持った人が多くみられ、咳、くしゃみ、荒い鼻息等のノイズが演奏中の店内に満ちていたのは遺憾であった。