2004.09.25  江古田 BUDDY   報告者 K.T.(聴覚はほぼ正常)

出演  近藤十四郎+水の底楽団
     渡辺勝 with SIL,BALLAD UNIT  渡辺勝(vo.) 森俊也(pf.) 新井秀夫(g.) 永田利樹(b.) 高田正則(ds.) 早坂紗知(sax.recorder)

 ここにきて渡辺勝のヴォーカルはいよいよパワー全開というところに至ったようである。五十代も半ばにしてこの充実ぶり、いったいどうなっちゃったんだろう、さてもさてもいみじきことよ、と口語文語とりまぜてあきれかえりつつ、このごろではライヴに行くときにしか乗らない西武鉄道の電車を駆って、秋とはいえどやたらと高湿の夕まぐれ、江古田 BUDDY にきてみれば、大相撲秋場所は十四日目、満員御礼の垂れ幕の下がった国技館のごときにぎわいよう、これまたどうなっちゃったんだろうとあきれかえるほどの入りであった。入場者の年齢はおおむね40代以上のようであったが、下は未就学児とおぼしきあたりまで走り回っている。ライヴ会場への未就学児の持ち込みは、生物化学兵器や大量破壊兵器の持ち込みと同様、厳しく規制すべきだと考える。異質なモノは排除しよう。自由より安全が大事だ。ここでブッシュに清き一票だ。19時30分ごろから近藤十四郎+水の底楽団がアットホームな雰囲気のユル〜い演奏(脱力系か?)を展開し、20時30分ごろに至ってようやく渡辺勝 with SIL,BALLAD UNIT の演奏がはじまった。演奏曲目は以下のとおりである。

1.立ち止まった夏
2.夢
3.土埃
4.アムステルダム
5.東京
6.冬の朝
7.君をウーと呼ぶ
8.truth
9.白粉
10.いつも一緒に
11.八月

 渡辺勝はヴォーカルに専念し、SIL,BALLAD UNIT が手堅くワキを固めるというこのユニットのよさが最大限に発揮されたライヴであったように思う。必要最小限の音の上に乗って、渡辺勝のヴォーカルが実によく伸びた。セットリストを見ると新味がないような感じがするかもしれない。しかし一曲一曲の完成度はきわめて高かったように思う。60分弱というコンパクトなセットであったが、安定感のある構成であった。
 もちろん個個のメンバーの技量は高く、ベースの永田利樹、ドラムスの高田正則の刻む堅実なリズムには安心して身をゆだねられる。また、今回は新井秀夫のギターの音色がびっくりするほどよかった。以前から達者な人だとは思っていたが、こんな艶のある深い音を出すとは思わなかった。“冬の朝”のギターには泣けた泣けた。加えて今回はグランド・ピアノを弾いた森俊也もすばらしかった。“truth”や“いつも一緒に”における繊細な音色には息をのむばかりであった。聞かせどころはそう多くなかったが、早坂紗知のサックスの音色は流麗で力強かった。わがままをいわせてもらうと、一人二挺サックスケレン吹きが入る“チャーリーのバー”をまた聞いてみたい。
 本拠地であった池袋のシルバラードが2003年に閉店した後は、ライヴ活動にもいろいろとむずかしいところがあるのかもしれない。しかし、このユニット単独でのライヴを、せめて二、三か月に一度ぐらいは開いてほしいものだと切に願っている。



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