2004.07.28 合羽橋 なってるハウス 報告者 K.T.
出演 渡辺勝(vo.g.pf.) 川下直広(Ts.har.)
JR鶯谷駅の改札を抜けて左に折れ、下り坂になっている線路をまたぐ橋を渡ると、歩道はモツ焼きの煙たなびく階段となる。息を止めてその階段を駆け下り、もう少し行くと言問通りに出る。角の不二家のペコちゃんをガンと殴ってお賽銭をあげて、どうかこわれた聴覚をなおしてくださいとお願いしてから、入谷方面に足を向ける。
なってるハウスにおもむくのもずいぶん久しぶりなので、なんだかおぼつかない気がする。交差点にみずほ銀行があって、その先にはもう一つ銀行があったように思うが、それとおぼしきビルはちょうど取り壊されているところで、“ビルを壊してまた一つ閉じたBANKがあった〜よね〜”、などとうそぶきながらその横を通り過ぎて、ようやく銀行名を思い出した。最後には、りそな銀行といっていたはずだ。
職業野球は1リーグ10チームということになる流れだそうである。しかし、銀行の例をみれば、さらに合併が進む事態に進展するであろうことは容易に想像がつく。最終的には読売と阪神の2チームに絞られるのではないか。そうなったら毎日が伝統の一戦である。オールスター戦も日本シリーズも読売と阪神の戦いである。えらいことだ。コウモリ飛び交う川崎球場のガラガラの外野席でBクラス同士のたとえばロッテ対南海のカードを観戦するなどといった贅沢はもはや絶対に許されないのである。
かくてはせめてライヴハウスで贅沢をしてみたいというあさましい魂胆ミエミエの自分を恥じつつ、なってるハウスの客となる。
当夜の演奏曲名は、以下のとおりである。曲名のあとには例のごとく渡辺勝の担当楽器を記しておいた。pf.はグランドピアノ、g.はガットギターである。“東京”の“g. → pf.”は、曲の途中でギターを置いてピアノに切り替えたことを指す。ギターとピアノを同時にガンガン弾いたわけではない。川下直広は、“土埃”で
harmonica を吹き、それ以外の曲ではTs.を吹いた。
1.立ち止まった夏 pf.
2.夢 pf.
3.土埃 pf.
4.OLD FRIEND g.
5.君をウーと呼ぶ g.
6.花嫁御寮 pf.
7.ラストヴァージン pf.
8.アムステルダム g.
9.東京 g. → pf.
10.舞台 pf.
11.白粉 pf.
12.道草 pf.
13.いつも一緒に g.
14.帰還 g.
15.八月 pf.
16.旅する亀 pf.
17.truth pf.
18.路傍 g.
1時間30分を越える演奏が休憩をはさまず続いた。テナー・サックスもギターもピアノも時には強くはげしく鳴っていたし、ヴォーカルもまた時にはかなりの声量で迫っていたように記憶しているが、しかしその演奏が続いている間は、ずっと静謐な時間が流れていたように思えてならない。激情の中に静謐があり、静謐の中に激情が秘められているというのはこのデュオではあたりまえのことかもしれないが、改めてそれを体感することができてしみじみとトクをした気分である。これが贅沢でなくて何であろう。ただ一つ、“あなたの船”が聞けなかったのが残念といえば残念ではあるが、もちろん何か月もライヴをサボっていた者にそんなワガママをいう資格はないのである。反省せえよ。はい、ワガママはいいません。稲生座で聞きたいともいいません。コラ、いうとるやないか。