2003.10.17  合羽橋 なってるハウス   報告者 K.T.

出演  渡辺勝(vo.g.pf.)  川下直広(Ts.)

Guest  有馬忍(vo.g.)   

 8月の中旬から聴覚がおかしくなり、音がダブって聞こえるようになった。ふつうに聞こえる音に加えて、左耳の中で周波数の異なるエコーがかかった音が鳴っているのである。どうにもキモチ悪いので病院に行って検査を受けたところ、左耳の低音域の聴力が低下していて、そのために音がダブって聞こえるという診断であった。感音性難聴という病気だそうである。それでいろいろと薬を処方されて、薬漬けの日々を送っていたのだが、なかなか症状はよくならない。服薬の都合で連日三度三度メシを食うので、ぶくぶくと肥えるばかりである。何度目かの診察の際に、プチ脳梗塞かプチ脳腫瘍の疑いもわずかながらあるかもしれないと医者がいいだした。それで9月下旬にはMRIに入れられて氷頭なますにされた。その結果、脳のほうは問題ナシということになった。それでも音がダブるのは相変わらずだ。こうなったらあとは神仏におすがり申し上げるしかない。病名が感音性難聴であるから、観音様がよろしかろう。そこで願を立てて毎日浅草は金竜山浅草寺のサイトにアクセスして快癒を祈ること三七二十一日に及び、満願の10月17日の未明の夢に観音様が示現していうには、ここ浅草寺の裏を抜けてしばらく行くとマリア観音の湯があるので、そこで湯浴みしてマリア観音に身体を清めていただきなさい、大門と柳が目印だよ、となむ。ワッと飛び起きて横に寝ていた戸籍上の配偶者を叩き起こし、おい、観音様のお告げで吉原に行くから金を出せ。バカいっちゃいけないよ。こんな朝早くからでかけてどうするのかえ。なるほどそれも道理というもの、夜が明けてからふつうに出勤して、日が暮れるのを待って吉原に赴き、マリア観音の洗礼を受けました。(中略)すっかりいい心持ちになって宵の吉原田圃をふらふら歩いておりますと、いつしか合羽橋道具街に入り込みます。ここはひとつなんだな、洗礼を受けたことだし、耳のテストをしなければいけないな、と身勝手な理屈をつけまして、なってるハウスの二重ドアを通り抜けます。
 当夜の演奏曲名は、以下のとおりである。曲名のあとには例のごとく渡辺勝の担当楽器を記しておいた。pf.はグランドピアノ、g.はガットギターである。川下直広は、すべての曲でTs.を吹いた。

1.冬の朝 pf.
2.夢 pf.
3.春三月 pf.
4.アムステルダム pf.
5.僕の倖せ pf.
6.花嫁御寮 pf.
7.東京 pf.
8.あの頃 g.
9.星が生まれたよ g.
10.白粉 pf.
11.道草 pf.
12.砂とシャベルの日々 pf.
13.八月 pf.
14.truth pf.
15.別れ来る pf.
16.友よ(川下直広ソロ)
17.斜岩病院(エンディングテーマ) g.

 5曲目の“僕の倖せ”のあとに、ゲストの有馬忍(女性)が4曲歌った。

 ちょっとびっくりしたのが、3曲めの“春三月”で、“冬の朝”から“夢”へと続けたら次は“土埃”に入ると思い込んでいた自分があさはかであった。そして4曲めの“アムステルダム”は、ピアノを弾きながら歌う。そうすると3フレットのカポタストの呪縛が解けるので、次の曲は“東京”でなくてもよくなって、演奏されたのは“僕の倖せ”であった。“東京”は7曲めで、ここでもピアノが使用される。このあたりは月末のエミグラントのツアーに備えた態勢で臨んでいるのだろうかと短絡的に考えてしまった。
 8曲めの“あの頃”に至って、はじめてギターが使用された。“あの頃”はアルバム未収録曲であるが、歌詞は OLD TIMES BRASS BAND 内のこのへんに公開されているはずなので、興味のあるかたはのぞいてみてください。
 さて聴覚のほうはといえば、音は依然としてダブって聞こえてはいるものの、周波数のズレがほとんどなくなっているらしく、演奏を聞いていても以前感じられたようなキモチ悪さはすっかりなくなっている。マリア観音の御利益、おそるべし。お礼参りに行かなければ。



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