2003.07.08  合羽橋 なってるハウス   報告者 K.T.

出演  渡辺勝(vo.g.pf.)  國仲勝男(b.)

 あたり前田のクラッカー、おそれ入谷の鬼子母神、この両者は文の構造は同一であるが、その性質を異にするものである。なってるハウスでアルコール類とともに運ばれてくる小皿に盛られたスナック菓子が前田のクラッカーだったとしても別に驚くには当たらないが、小皿に入谷の鬼子母神が盛られて運ばれてきたらあつかいに困る。これはあってはならないことであると考えたい。
 7月の6日から8日まで、入谷の鬼子母神では朝顔市が開かれていた。その最終日の8日には、なってるハウスで渡辺勝 with 國仲勝男のライヴがあるというので、小雨降りしきる中、少し早めに陋屋を這い出した。朝顔市を見物してからライヴに行こうという魂胆である。山手線の鶯谷駅から線路を越えて言問通りに出ると、みずほ銀行とりそな銀行が相対峙して不良債権の暗雲渦巻く観のある交差点から、いきなり祝祭空間がはじまっていた。言問通りはそこから日比谷線入谷駅近くの昭和通りと交差する交差点まで完全に車両通行止になっていて、センターラインの南側には朝顔を商う露店がずらりと並び、北側には飲食物を商う露店が軒を連ねていた。これでもうすっかり心が浮き立ってしまった。当然のことではあるが、ポリ袋に入ったピンクの綿菓子なんかも売っているのだ。すでに午後7時をまわっていて、朝顔の花の咲いている鉢はほとんどない。せっかくだから一鉢買おうと思うのだが、どんな色の花が咲くのやらさっぱりわからなくて、露店の前でボケーと突っ立っていると、旦那、ご相談に乗りますぜ、どんなのがお好みで、と渋みがかった兄サンに声をかけられた。やや小柄で青みがかった色白、丸顔で細面、と好みを伝えると、よしきた、おあつらえむきのがございやす、ということになり、2,000円の鉢を一鉢購入した。その鉢をぶら下げて、なってるハウスの客となったのである。
 ずいぶん前に西荻のアケタの店で國仲勝男がベースを弾くのを聞いたことがあったが、それは1980年ごろのことで、細部はもうほとんどおぼえていない。しかし、目を閉じてベースを弾いている時の表情は以前と変っていないということに気づいて、妙になつかしくなった。今回の演奏曲名は、以下のとおりである。曲名のあとに、例のごとく渡辺勝の用いた楽器を記しておいた。pf.はグランドピアノ、g.はガットギターである。

 bass solo part 1
1.立ち止まった夏 pf.
2.夢 pf.
3.土埃 pf.
4.アムステルダム g.
5.東京 g.
6.ラストヴァージン pf.
7.僕の倖せ pf.
8.春三月 pf.
 bass solo part 2
9.君をウーと呼ぶ g.
10.パルチザン g.
11.砂とシャベルの日々 g.
12.白粉 pf.
13.道草 pf.
14.八月 pf.
15.truth pf.
16.しゃれこうべと大砲 g.
17.花嫁御寮 g.
18.斜岩病院(エンディングテーマ) g.
19.夜は静か通り静か pf.

 最初と中ごろに、國仲勝男のベース・ソロが入った。両者のデュオについては、あと何回かステージを重ねたら魂が震撼する演奏が聞けるのではないか、と予感させてくれるものがあった。また聞いてみたい。
 “しゃれこうべと大砲”は、“パルチザン”とともに off note の2枚組CD“GLOBE IN THE BOTTLE”に収められている曲。このCDの発売は、7月末ごろになるらしい。




●おまけ・朝顔観察日記●

7月13日(日)くもり
朝までお酒を飲んでいたら、ベランダの朝顔が咲いているのに気づいた。青い花だった。
これまでちっとも咲かなくて、きのうはつぼみがでかくなったと思ったら、つぼみのままで落ちてしまったので、もうだめかと思っていたのだった。
写真をとって寝て、目がさめたら花はしぼんでいた。

7月14日(月)くもり
きょうは青い花が二輪咲いた。
夕方にはしぼんでいた。
近所の野良猫がベランダにきて、朝顔の鉢におしっこをかけた。
とてもくさいのだ。


   おわり




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