2003.03.31  新宿 URGA   報告者 K.T.

出演  渡辺勝 with SIL,BALLAD UNIT  三上寛  南正人(ギター・萩原信義 ウッドベース・永田利樹)

 とちぎポップ資料館所蔵の2002年12月の池袋シルバラードのチラシを見ると、3日が南正人(ギター・萩原信義 ウッドベース・永田利樹)、12日が渡辺勝 with SIL,BALLAD UNIT、20日が三上寛、となっているが、3日の南正人のライヴは諸般の事情で中止になったという話である。しかし、2003年に入り、南正人はライヴ活動を再開した。それを祝おうということで、この豪華メンバーが出演するライヴが花も盛りの3月末日、東京は新宿歌舞伎町の北端、ハローワーク通りに面したコンビニam/pm地下のURGAで開催された。
 最初に登場したのは、渡辺勝 with SIL,BALLAD UNIT である。渡辺勝は今回はヴォーカルに専念し、森俊也(key.) 新井秀夫(g.) 永田利樹(b.) 高田正則(ds.) 早坂紗知(sax. per.他) の5人がワキを固めるという編成であった。演奏曲目は以下のとおりである。

1.立ち止まった夏
2.夢
3.土埃
4.チャーリーのバー
5.東京
6.道草
7.帰り道
8.白粉
9.いつも一緒に
10.八月

 このユニットではおなじみの曲ばかり全10曲というコンパクトな構成で、スキのない緊密な演奏が展開された。渡辺勝は年初来の風邪も完治した模様で、艶のある声が虚空の彼方までよく伸びていた。早坂紗知のアルトサックスは、聞くたびに凄みが増している。今回はフロントに立って吹きまくっていた。中でも“チャーリーのバー”と“八月”では長々とソロを取って、会場を興奮のるつぼと化した。
 休憩をはさんで、三上寛の轟音セミアコ弾き語りがはじまる。ステージに上がって、まずおもむろにチューニングにとりかかるのだが、そこからもうすでに大音量である。チューニングのうるさいことといったら天下一品であろう。そして本篇に入ると、圧倒的な破壊力で聴衆の脳味噌に深刻な打撃を与える。演奏時間は短かかったが、強烈な存在感を示してステージを終えた。
 その後、また休憩をはさんで、当夜の主役、南正人のステージがはじまった。渡辺勝や三上寛にくらべると、南正人は声の出し方がフツーっぽくて、無理がない感じがする。それで脳が鎮静化されたようである。ゆったりとした曲が何曲か続くうちに、ジンの酔いに加えてここ数日毎食後服用している風邪薬が全身にすっかりまわってしまって、途中からはほとんど眠っていた。“海と男と女のブルース”とか“こんなに遠くまで”なんていう大昔の曲もやっていたようだ。客席の八割がたは南正人のお客さんのようで、一緒に歌ったり、自発的に手拍子を打ったりして、楽しそうであった。いずれにせよ、めでたいことであった。

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