2003.02.15  合羽橋 なってるハウス   報告者 K.T.

出演  渡辺勝(vo.g.pf.)  川下直広(Ts.)

 今年の2月15日は太陰暦では1月15日上元節なので、日が暮れてから表に出ると、東の空に元宵団子のようなぶよぶよのお月様が浮かんでいた。めでたいな。しかしこのところの国連の安全保障理事会では、仏独らの道理に押されて米国が劣勢気味なので、属国日本の国民は米国の武力行使を支持し、米国の正義こそが絶対的に正しいのだという正しいメッセージをワシントンに送るために、今こそ提燈行列に打って出る必要があるのである。お月様を見て団子を食っている場合ではないぞ。でも対米追随の象徴、柿ピーならまあいいか。そこで柿ピーとジャズのメッカとして知られる合羽橋なってるハウスにおもむいた。すると、どういうわけだかいつもの柿ピーが出てこなくて、かわりに軽いスナック菓子みたいなものが供せられた。ひどくがっかりしたが、戦時体制下なればこれもやむをえないとあきらめるしかない。だが後日耳にしたうわさによると、日本国内の柿ピーの備蓄量は官民あわせて171日分あるのだそうである。
 当夜のライヴの演奏曲名は、以下のとおりである。曲名のあとに、渡辺勝の担当楽器を記しておいた。pf.はグランドピアノ、g.はガットギターである。川下直広は、すべての曲でTs.を吹いた。
 
1.立ち止まった夏 pf.
2.夢 pf.
3.土埃 pf.
4.OLD FRIEND g.
5.星が生まれたよ g.
6.あの娘はあの娘 g.
7.道草 pf.
8.帰り道 pf.
9.逢いみての pf.
10.僕の倖せ pf.
11.チャーリーのバー g.
12.東京 g.
13.アムステルダム g.
14.冬の朝 pf.
15.白粉 pf.
16.いつも一緒に g.
17.八月 g.
18.花嫁御寮 pf.
19.別れ来る pf.
20.夜は静か通り静か pf.

 ここ数か月のライヴでは定番となっていた“truth”“君をウーと呼ぶ”“斜岩病院(エンディングテーマ)”といったあたりが外れ、セルフリサイクル曲“あの娘はあの娘”や新曲“花嫁御寮”などが加わり、ラストには先月29日と同様“夜は静か通り静か”を持ってくるという構成であった。
 “OLD FRIEND”は、川下直広の sax がからむとまたしみじみと趣深いものである。なお、ある人物が調査したところによると、渡辺勝は蜃気楼が好きで、蜃気楼という語を含有する歌は、“ボクのボロ靴街をけった”“亡命”そしてこの“OLD FRIEND”など、枚挙にいとまがないのだそうである。青い空に白い雲、それに蜃気楼が加われば、向かうところ敵なしの勝ワールド全開ということだろうか。そういえば、“Hello”には歌詞カードがなかったので、“ボクのボロ靴街をけった”の中の“シンキロウクマデ”の意味が判然とせず、“蜃気楼区まで”派と“蜃気楼熊手”派とに分かれて論争したことを思い出す。熊手派は酉の市に“蜃気楼熊手”を買いに行ったものの結局発見できず、泣いて帰ったものだ。もう四半世紀も前の話である。

追記
上記“シンキロウクマデ”については、読者のかたから、“あれは、新記録まで、と歌っているのではないか” というご指摘をいただきました。ありがとうございました。たしかに“新記録まで”なら、前後の文脈にすんなりとおさまるようです。

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