2003.01.14  池袋 シルバラード   報告者 K.T.

出演  渡辺勝 with SIL,BALLAD UNIT  渡辺勝(g.vo.) 森俊也(key.) 新井秀夫(g.) 永田利樹(b.) 高田正則(ds.) 早坂紗知(sax. per.)  

 当日の池袋シルバラードは大入り満員の盛況で、通路までぎちぎちに詰まるというたいへんな混雑ぶりであった。そのため中入り後に入場した遅参の客はカウンターにまでたどりつくことができず、ドリンクのオーダーもできない。消防署のほうから興行中止命令が出てもおかしくないほどのにぎわいようで、酉の市と十日戎がいっぺんにやってきたかのような熱気が場内に充溢していた。有料入場者数が1ケタのライヴがあたりまえの昨今においては、まことにおめでたい満員御礼ライヴ、今年はよい年になりそうな予感がする。
 この池袋シルバラードで昨年12月に、アルバムの曲順どおりに演奏するという破天荒なライヴを行なったばかりの渡辺勝 with SIL,BALLAD UNITが今度はどういう奇策を繰り出すのだろうか、と期待していたら、やってくれました、なんと渡辺勝がギターを弾きながら歌うという反則技に走り、また早坂紗知は、“チャーリーのバー”で、同時にサックスを2本吹くという一人二挺サックスケレン吹きを披露して聴衆を悶絶させた。総じて前回12月のこのユニットのライヴよりもワイルド度が増した、といった印象である。
 曲順は以下のとおり。なお、渡辺勝がギターを弾いた曲には、を付しておいた。

1.冬の朝
2.夢
3.土埃
4.アムステルダム
5.東京
6.花嫁御寮
7.君をウーと呼ぶ
8.チャーリーのバー
   〜中入り〜
9.大草原の家に生まれて
10.truth
11.白粉
12.帰り道
13.道草
14.春三月
15.いつも一緒に
16.八月
17.斜岩病院(エンディングテーマ)
18.別れ来る

 渡辺勝 with SIL,BALLAD UNIT は、楽器演奏は SIL,BALLAD UNIT に丸投げして、渡辺勝はヴォーカルに専念するという形態が常態である。したがって、昨年12月のこのユニットのライヴでは、渡辺勝は楽器を弾かなかったし、JABARAから出ている2枚のアルバムでも渡辺勝は楽器を弾いていない。“反則技”と前述したのはそのためである。今回渡辺勝がギターを弾いた3曲は、いずれもこのユニットのアルバムには収録されていない曲、ということは、このユニットが演奏する場合のアレンジがまだ十分に練れていなかった、ということなのかも知れない。
 曲順を見ると、“大草原の家に生まれて”と新曲の“花嫁御寮”を除けば、ここ何か月かのなってるハウスにおける渡辺勝月例ライヴの曲順に近い。おそらくこの流れが今の渡辺勝にとっては自然な流れなのであろう。昨年12月のこのユニットのライヴで感じた微妙な違和感は、アルバムの曲順どおりに演奏した窮屈さによるもののようにも思われるのである。
 今回のライヴでは、ウッドベースの永田利樹が突出して目立っていた。“アムステルダム”や“チャーリーのバー”においては、激しく攻撃的なフレーズを曲の頭からこれでもかこれでもかとぶつけてくる。それを受け流す渡辺勝のヴォーカルもスリリングでゾクゾクものであった。ジャズのベーシストは目立ってなんぼである。これでいいのだ、と思う。おとなしく調和の取れた演奏などは期待していない。どんどん突っ込んでほしい。


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