2007.03.17  早稲田 JERRY JEFF   報告者 K.T.

出演  野澤享司  渡辺勝

 野澤享司と渡辺勝のジョイント・ライヴは、2003年9月の新所沢ブロックヘッズ以来ということになろうかと思う。JERRY JEFF にはよっぽどのことがないかぎり近寄らないようにしているのだが、この二人のジョイント・ライヴだったらずいぶんよっぽどのことだ。そこで都営地下鉄と都電を乗り継いで早稲田に行き、JERRY JEFF の店内に一歩足を踏み入れると、もやもやと紫煙たなびく春の宵、冗談じゃない、いったいいつになったらライヴハウスを含むあらゆる飲食店が全面禁煙化されるのか。その日が来る前に受動喫煙性肺癌かなんかで死んでしまったら死んでも死に切れない思いがするにちがいない。化けて出ようにもケムリが苦手では迫力を欠くだろう。ついでにいうと線香のケムリも不快なので、そのへんのところにも配慮して追悼してほしい。ちなみに当日はパイプのヒトもいれば紙巻きのヒトもいて、さまざまな芳香にいぶされることとなったわけだが、それはこの記事の本筋ではないのでここにいちいち記さない。また、前のほうに陣取ったヒトたちが演奏中に盛大に私語を交したり、そのうちの一人が演奏中に他の客をかきわけて(店が狭くて細長いので、前の席のヒトが店の後方に移動する際には、何人かのヒトに立ってもらって通してもらわなければならない)トイレに行ったりしたことも、この記事の本筋ではないのでここにいちいち記さない。演奏中にカウンターからタバスコの瓶が飛んできたり、店の電話が鳴ったりしたことも、この記事の本筋ではないのでここにいちいち記さない。
 野澤享司は例のごとくマーティンとエピフォンの二本をとっかえひっかえしての演奏、渡辺勝はギターは使用せず、KORG の N5 というシンセサイザーを使用し、また、野澤享司のバックにまわったときにはピアニカを吹いたりもした。

●第1部 野澤享司ソロ●
1.迷走
2.悲しみは Blues で
3.上を向いて歩こう
4.Whiskey River Blues
5.大地の鼓動
6.I walk with my brothers & sisters
7.夕暮れ
8.Over The Rainbow
9.明日への航海
10.Come Together 〜 それでも Lucy は空に

●第2部 渡辺勝ソロ●
1.アムステルダム
2.夢
3.OLD FRIEND
4.土埃
5.立ち止まった夏
6.夏のスケッチブック
7.夏の終りのラプソディー
8.ラスト・ヴァージン
9.あなたの船
10.道草
11.白粉
12.八月
13.truth

●第3部 野澤享司&渡辺勝●
1.揺籃の振動に身を任せて
2.遥かな海へ
3.夜は静か通り静か

◆アンコール 野澤享司&渡辺勝◆
1.追放の歌


 第1部の野澤享司のソロは、19時20分ごろスタートした。JERRY JEFF ではいつも苦痛に思っていたオープニング・アクトがなかったので、ちょっと拍子抜けするような感じがする。しかし、スタートが早かったせいだろうか、ライヴがはじまってから入店するヒトも何人かいて、ステージの横に店の入口があるので、なかなか演奏に集中することができない。最初のうちはハウリングもキツかった。
 “Whiskey River Blues”の挿入曲は、“Georgia on My Mind”ではなくて、“My Blue Heaven”であった。
 “Come Together 〜 それでも Lucy は空に”には、渡辺勝の変幻自在のサイケデリック・ピアニカが加わって、すさまじいトリップ感に襲われた。これを聞いてしまうと、HAL-2001 なんて子供だましに思えてしまう。

 第2部の渡辺勝は、例のごとく曲の切れ目MC手拍子の強要拍手なしの50分ほどの演奏であった。第1部よりも20分ほど短かったが、充実度は高く、店内の環境がよかったらたいへん満足したことであろうと思わせる質の高いステージだった。KORG N5 の金属的な硬質の音は、重厚なヴォーカルによくマッチして、なかなかいいものであった。
 5曲目の“立ち止まった夏”から、タイトルに“夏”の入った曲が3曲続いた。
 “ラスト・ヴァージン”は、あまり演奏されない曲のようであるから、当日聞いたヒトは得をしたと思ったほうがいい。40 CARAT の芝居の歌だったと思う。

 第3部では、“揺籃の振動に身を任せて”と“遥かな海へ”が野澤享司のヴォーカルで、“夜は静か通り静か”が渡辺勝のヴォーカルだった。今回は二人ともバッキング・ヴォーカルをつけることはなく、渡辺勝はピアニカと KORG N5、野澤享司はハーモニカでバックをつとめた。
 1曲目の“揺籃の振動に身を任せて”は、野澤享司のファースト・アルバム“白昼夢”におさめられている曲である。ライヴで聞くのははじめてかもしれない。
 3曲目の“夜は静か通り静か”は、野澤享司のハーモニカの音がものすごく大きくて、拷問のような“夜は静か通り静か”となった。これもミキシング担当者のいない JERRY JEFF ならではの味わいである。

 アンコールの“追放の歌”は、ヴォーカルは野澤享司のみで、今回は二人の掛け合いで歌われることはなかった。2003年9月に、この二人による“追放の歌”を聞いているだけに、物足りないといえば物足りないところだが、客席はいわば学級崩壊状態であるわけで、そんなところでほかでは聞けないような演奏を聞かされても腹が立つばかりであるから、これはこれでよかったのだということにしておく。



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