2002.08.27 横浜 GRASS ROOTS 報告者 K.T.
出演 渡辺勝 野澤享司
横浜 GRASS ROOTS におけるライヴの報告です。今回の出演者は野澤享司と渡辺勝でした。GRASS
ROOTS という店は、客層が大きく二分され、酒を飲みながらの仲間内の談笑を楽しむグループと音楽を聴きにきた人たちとが同一平面上に混在しているために、ライヴが始まってからも客席の談笑の声は止むことなく続くという、環境としてはまことにキビシイところでした。
夜9時を過ぎて、まず、渡辺勝の登場です。すべての曲が、ガット・ギターの弾き語りでした。この店には鍵盤楽器がないのであります。ピアノ弾き語りの渡辺勝を聴きたかった私はいささか不満でありましたが、そんなささやかな不満などすぐに忘れさせてくれるほどの演奏の質と、そして、演奏を聞いていない粗野な人たちの無神経さとの落差に、それからしばらく苦しめられることになりました。
1.立ち止まった夏
2.赤い自転車
3.アムステルダム
4.東京
5.道草
6.OLD FRIEND
7.土埃
8.君をウーと呼ぶ
9.僕の倖せ
10.八月
演奏されたのはこの10曲でした。私の背後には、演奏をまったく聞かないで、仲間内の歓談と馬鹿笑いに余念のないグループがいたため、私は演奏に集中できませんでした。しかし、住んでいる世界の異なる、おそらく言葉の通じないであろう人たちには何を言っても無駄だとあきらめて、黙って耐えていました。渡辺勝の、きびしく選び抜かれた言葉の連なりから成る歌声は、私にとってみればまさしく珠玉にほかならないのでありますが、豚には真珠のねうちなどわかるはずがない。
続いて野澤享司の登場であります。客席の喧噪にはかまうことなく超然として自らの世界を歌い上げていたかのようにみえた渡辺勝とは異なり、野澤享司はうるさい客に殺気を含んだ視線を投げながらの演奏でした。
1.万川集海
2.I walk with my brothers & sisters
3.Come Together 〜 それでも Lucy は空に
4.迷走
5.オーバー・ザ・レインボー
6.悲しみは Blues で
7.Whiskey River Blues
8.大地の鼓動
9.Fender Bender Locomotion
10.君が気がかり(不完全版)
11.Everyday(Over fifty version)
12.Whistle Blues
★以下アンコール★
13.Get Back
14.時の奏でる調べ
15.遥かな海へ
16.The Lucky Old Sun
途中、客席の注意を引くためだったのでしょう、MR.キョリック(マギー享司郎という説もアリ)と化してマジックショーを見せたりの苦心のステージでしたが、傍若無人なうるさい連中が帰ってからは、ようやく落ち着いたいつのも野澤享司に戻っていたようです。
最後の2曲(“遥かな海へ”と“The Lucky Old Sun”)には渡辺勝の過激なガット・ギターが加わって、スリリングなセッションがくりひろげられました。そして、息もつかせぬほどの演奏から一転して、曲の終わりに見せた二人の穏やかな笑顔がとてもステキで、これが見られただけでも十分元が取れたわいと思ったのでした。
なお、渡辺勝はこの時のセッションで右手の人差し指をいため、翌28日の高円寺稲生座におけるライヴでは、ふだんとは違う弾き方でギターを弾かざるを得なかったという話を、後日ご本人から直接うかがっております。その激しさを引き出してしまった野澤享司も、実にコワイひとでありますな。