2002.04.12 初台 The DOORS 報告者 K.T.
出演 野澤享司 斉藤哲夫 渡辺勝 with SILBALLAD UNIT
4月12日の夜、花の都は東京の新宿から京王線でひと駅、初台の新国立劇場、と道路一本隔てて対峙する居酒屋“村さ来”の地下深くに位置する LIVE-BAR The DOORS において、野澤享司、斉藤哲夫、渡辺勝の三者競演が挙行されました。まずは野澤享司の登場であります。演奏曲目は、以下のとおりです。
1.目覚めと喧噪
2.君の笑顔は
3.Keep on Travelin'
4.悲しみは Blues で
5.Whiskey River Blues(手拍子つき)
6.大地の鼓動
7.Come Together 〜 それでも Lucy は空に
8.Fender Bender Locomotion(手拍子つき)
野澤享司は、安定感のある演奏に円熟味が加わって、自在に遊んでいるという印象でした。ただ、聴衆に手拍子を求めるのは、いかがなものでしょうか。5曲目の手拍子は、間奏の間にみごとに一拍ずれました。8曲目でも最後はしどろもどろの手拍子になりかかりました。2001年11月の梅島yukotopiaにおいては、ご自身が聴衆に手拍子を強要しながら、手拍子がそろわないと、「手拍子、合っていなかったんじゃない?」と言うてはりましたが、手拍子が合わないのは、どこでも同じであります。野澤享司のギターソロのパートで手拍子をキープするのは、通常のリズム感を持った人間でも困難である、という現実を直視してほしいものです。
さて、二番手は斉藤哲夫でした。演奏曲目は以下のとおりです。1曲目は、中塚正人の名曲。2曲目は、1979年にキャニオンから発売されたアルバム“一人のピエロ”(C25A0048)におさめられている“セレナーデ”を、せかせかせかせかとせわしなく歌います。4曲目は、おなじみのあがた森魚の曲。ラストの“さんま焼けたか”もせっかちな感じの歌い方で、さんまは生焼けではないのかと案ぜられます。なお、昨秋発売のニュー・シングル曲“昨日・今日・明日”は、今回は演奏されませんでした。売る気がないのでしょうか?
1.風景
2.セレナーデ
3.斜陽
4.冬のサナトリウム
5.こんなはずじゃなかった
6.どこへ行ったらいいんだろう
7.甘いワイン
8.さんま焼けたか
三番手は渡辺勝です。キーボード、ギター、ベース、ドラムスの4名からなる SILBALLAD UNIT を従えた渡辺勝は、楽器は担当せずにヴォーカルに専念する、という構えでした。全8曲中、アルバム“SIL, BALLAD”から、“立ち止まった夏”と“東京”の2曲、それ以外は、(注)近日録音予定のニュー・アルバムに入るという曲ばかりでした。
1.立ち止まった夏
2.夢
3.OLD FRIEND
4.土埃
5.東京
6.白粉
7.いつも一緒に
8.八月
前作“SIL, BALLAD”ではこの世とあの世の境界をとっぱらって往来自由にしてしまったかのようにみえた渡辺勝は、その世界をいよいよ深化させて、ここがこの世でもあり、またあの世でもある、といった境地に達したように思われます。そして、歌の中では「僕」という主体、「君」という客体が歌われているのですが、その「僕」も「君」も、固有の肉体を脱して、純化された感情だけを抱いて空間を浮遊している存在と化しているように思われてなりません。しかし、こうなったらもうほとんど幽霊の吟詠ですね。けっこうコワイです。はじめて聞いた曲が多かったのですが、どの曲もなんだかなつかしい感じがしました。ニュー・アルバムの完成が待たれるところであります。
最後に斉藤哲夫、野澤享司、渡辺勝の三氏が登場し、“おお、スザンナ”の合奏であります。斉藤哲夫と渡辺勝はギター、野澤享司はブルース・ハープ吹きまくり担当でした。ヴォーカルは斉藤哲夫です。アンコールは渡辺勝の名曲“あなたの船”でしたが、渡辺勝はキーボード担当で、ヴォーカルは斉藤哲夫でした。野澤享司はブルース・ハープで参加したものの、結局のところ、あまり吹くところのない曲で、いささか不完全燃焼気味のようでした。この曲は渡辺勝のソロで、しっとりとやってほしかったと、わがままなことを言っておきます。
(注)“COTT,BALLAD”(JABARA JAB-21) 2002年8月11日に発売された。