伝兵衛号との出会い

●過去の車達

  駿河屋の若い頃は単車乗り。
一時は散歩とモトクロスごっこ用(スズキウルフT90)、通学用セミオフロード(ホンダCL250)、ツーリング用(ホンダCB350)の3台を使い分けていた。
車に乗り始めたのは会社に入ってから。就職・結婚しても、まだ未練で持っていたホンダSL90をアパート社宅の庭に置いたまま1975年に海外駐在。
折角アメリカに来たのだからと買ったのがフルサイズBUICK Electraの中古。 本棚やソファーなどの大きな家具を買っても、すっとトランクに入れてバタンの巨体は当時のアメリカでも過去の遺物。売りますの新聞広告を見て訪ねた老夫婦オーナーから、10年乗った愛車だから可愛がってねと念を押されて1500ドルで買ったものだ。(帰国時に1000ドルで売ってきたので、殆どタダで乗っていたみたいなものだ(^_^)v)

  この車は流石に腐っても鯛。 6700CC、300馬力超のエンジンはどんな速度で走っていてもアクセル踏めば前輪が持ち上がる感じの加速感。マフラーの腐蝕脱落以外に大きな故障も無く、イリノイからボストンまでの5000km旅行にも苦も無く耐えた。
当時のアメリカはコンパクト車、サブコンパクト車が流行。日本車も増えていたが、良く見かけたのはカブトムシ。学生の頃、ヒッピー達の背景にいるワーゲンバスの写真を見て良いなぁと思っていた実物が、近所のスーパーの駐車場でピザ屋をやっているの見かけて「可愛いなぁ、いつか欲しいなぁ」と考えていた。

  帰国して乗用車に乗っていたが、下の娘が生まれてワンボックスのいすゞファーゴ(9人乗り)に乗り替えた。そして三菱デリカを経てトヨタのランクル。ファーゴ、デリカは子供の成長と共にあった車。ファーゴで幼稚園帰りの子供達を10人以上乗せて運んだり、駅前の駐輪場で娘の自転車をピックアップしたり。横浜から勝田市に引っ越したのもこの車と一緒だった。

神戸の女子大に行っていた長女殿が神戸地震に遭った時に活躍したのはデリカ。
後部座席を外し、会社や友人がカンパしてくれた医薬品や食品を満載し、市役所から貰った(緊)マークに「救援物資輸送」の横断幕まで付けて神戸入り。避難所に物を届けた後の空車に長女殿の引上げ荷物一式を積み込んで帰った。

ランクルは70型ディーゼル4200CC、FRPトップ、板バンパーにウィンチ付きという可愛い奴。単身赴任の3年間、毎週末にひたちなか市-秦野市の往復400kmの不得意な高速道路の旅も元気に走ってくれた。

  そして今年2月、ワーゲンバス伝兵衛号との出会い。駿河屋56歳にしていよいよ、文句も言わずに良く働く召使としての車から、喜びも苦しみも分かち合う相棒としての車へ。
  ああ、伝兵衛号という相棒を得るまでに駿河屋と時を過ごした全ての車達に幸あれ。

●伝兵衛号との出会い 2002.3.3

  2月16日、ゴルフで茨城の宍戸GCまで遠征した帰路、大船で女房殿と次女殿を拾い、へっころ谷でほうとうを食べた道すがら、車屋のガレージの中に座っている姿をチラと見掛けた。
  フォルクスワーゲンバス。ヒッピー達の集まりの写真背景に良く写っており、良いなぁと思っていた車。アメリカにいた時、スーパーの駐車場でピザ屋をやっていたのを見た車。

  次の日改めて見に行って、オレンジ色の72年製キャンパーが気に入った。でも、欲しいが何かが踏み切れない。古いから? 故障が多そうだから? スピードが出ないから? 左ハンドルだから? エアコンがついてないから? どれも引っ掛かるが、決定的な否定条件ではない。 結局、契約しないで帰ってきた。

---- △△さん、試乗の準備までしてくれたのに、
買わなかった駿河屋をどうぞお許し下さいませ m(_ _)m ----
  数日後、ハッと気がついた。気が進まない最大の理由は、今乗っているランクルと別れるのが嫌なのだ。

  数週後のゴルフの帰路、たまたまいつもと違う道を走って、又、バスを見掛けた。相模原のマルク自動車。一旦はギブアップしたつもりだったが、また出会うとはバスに縁があるのか? ふと<この車に変えたらライフスタイルを変えられるかもしれない>と思った。ゴルフ、買物のアッシー君、年に一度の家族旅行だけの屋外生活を『週末は家族と川辺でゆっくりピクニック』も含めた生活に。
『車は単なる移動手段:どんな悪路でも、どんな悪天候でも、どんな遠くても自分の思い通りに』を『人も車も一緒にゆっくり』に変えられるかも。模範的サラリーマンを目指して30年、そろそろ初老と言われても反論しにくい駿河屋56歳の、それがこれからの生活観なのかと。
  夕方、風邪をひいて寝ている女房殿を残し、次女殿ともう一度見に行って決めた。さて、駿河屋のライフスタイルは変えられるのか? これが今後の課題。
3月16日納車。


伝兵衛号の勇姿へ