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机の上に座り少年は窓の外を見ていた。

いや、

正確には窓越しにある男の姿だけを追っていた。

ロロノア・ゾロ。

少年はその男の一挙手一投足を逃すまいとするかのように、

ひたすらにその動きを見つめているのだった。



「おう、また来てんのか、サンジ。」

声の主は自分が腰掛けている机の持ち主で、

それを咎めているわけでもないことを知っていたので、

振り返りもせずに答えを返す。

「ああ。」

悪びれた風もなく返答すれば、

苦笑交じりの、

しかし裏のない明るい笑い声が帰って来る。


「ハハッ、おめえも好きだよな。

そんなに良いか、ロロノア先生。」



聞き様によっては、

そこに失笑が含まれていると感じても仕方のないような言葉ではあったが、

サンジにはすでに彼の性格というものが分っていたので、
     
それについては特に何も言わない。

何を今更と言うようにちらりと視線を動かしかけて、


でも結局、一瞬でも目を逸らすのが惜しいとでも言うように、

サンジは視線を再び男に戻し、

戻しながら少年に背中越しに言った。

「ああ、好きさ。

最高に、好きだね。」

     
そのうっとりとした言い様から、

問いかけた方の少年は、サンジが今浮かべている表情を知る。

微笑。

柔らかな、温かな微笑み。

本当に愛しい者を見るときに浮かべてしまう笑顔というものを、

きっと今サンジは湛えて笑っている―――。



そう思うと、少年は少し切なくなった。

羨ましいだとか、嫉妬だとかいう感情からくるものではなく、

どちらかというと同情に程近いだろうか。

彼にはサンジを憐れむつもりなど毛頭なかったが、

サンジが望む途の険しさを思って少年は、

自らの短い黒髪を少し掻きむしるようにしながら、

ああ、そうだったなとだけ静かに答えた。
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深い河