部日誌02 『海央のココロを捜せ』

 


32世紀。

場所は地球の日本。舞台は横浜関内の私立。

海央学園(かいおうがくえん)中等部。園芸部部室。
『目安箱』なんて箱が部室のテーブル上に置かれていた。

「で、これが件の目安箱。ま、この中のPCがメール受け取るだけだから気にすんな。園芸部部室向かいの空部室が『よろづ部』の部室になるから」
ノンフレーム眼鏡の少年は集まった面々の顔を見渡し、ニヤリと笑う。

典型的『日本人』の特徴である黒髪・黒目。
少し利口そう見える太目の眉・全体的にひょうきんな印象を受ける顔立ちをしている。
海央の『宰相』こと井上 悠里(いのうえ ゆうり)

つい数時間前に発足した『よろづ部』副部長である。

「へーへー、お任せしますよ」
学園の象徴と謳われた王という人物。
初代の王が去りそのまま空欄だった王の座が目出度く埋まる事となり、その二代目が机に座り気だるげに目安箱を一瞥する。

霜月 涼(しもつき りょう)

子供から男へと成長途中だが、脂ぎっていない肌。美しく孤を描く眉。
男にしては長い睫毛。やや、つり目気味の大きな瞳。筋の通った鼻。
ふっくらとした唇。
世に言う美少年系な顔立ち。金髪・緑眼も相まって美丈夫にも見える。

「涼、そんなに投げやりにならないで。僕達も協力するし。本格的に動くのは来月からでしょ?」
お馴染みになった紅茶を人数分淹れて、運びながら涼を宥める物好き一人。

基、海央の『王子』こと星鏡 和也(ほしかがみ かずや)

艶のある黒髪。
切れ長の瞳に絶妙なバランスの二重。
そこそこ長い睫毛の持ち主。
甘いマスクに成長するであろう予感を抱かせる二枚目顔で、育ちの良さを感じさせる少年。

「けっ」
対する涼は不機嫌そのもので和也の言葉にそっぽを向く。
和也の裏の性格も知り尽くした涼だ。
和也が表面上だけ涼を宥めたのに気づいている。
本当は面白がっているはずだ。

「悠里、僕等なんかが『有志』で大丈夫なの?」
不安げに悠里へ挙手して意見するのは眼鏡の少年。

黒ぶちのどこかドンくさい雰囲気を感じさせる眼鏡。
一重でごく平均的な大きさの瞳。
普通の太さの眉に、癖毛の黒髪。
これといって特徴もない普通の典型的日本人。気の弱そうな。

平凡の塊のような少年は『京極院 彩(きょうごくいん さい)』

大学キャンパスで有名な『京極院ツインズ』の実弟だ。
破天荒なツインズとは正反対の堅実派。どこまでいっても平和主義。

「彩と未唯は二人で特殊能力発動なんだろ?京極院ツインズからの強い推薦を受けた」
悠里は己のPCデータ端末を操作し仕入れた知識を本人に確かめる。
「そうでーすっ。未唯と彩は一心同体なのv」
慌てふためいて「兄さん達の馬鹿野郎〜!!」と叫ぶ彩とは対照的。

彩に腕を絡めて少女は不敵な笑みを浮かべた。
腰まで届く長い黒髪と、薄赤色の猫を思わせる瞳。
白い肌と鼻の周囲に散ったソバカスが印象的な少女は『京極院 未唯(きょうごくいん みい)』
所謂人間ではなく異星人の血を引く少女で、京極院家に居候中の訳有り。
去年一年間かけて培った彩との愛情を現在も育んでいる。去年3学期からの転入組。

「なら問題なし」
幼等部時代に嫌というほど初代王の『力』の被害にあってきた悠里だ。

うまく立ち回れば特殊能力者を恐れる必要は無い。
という事実を体で学んでいる。

つまり偏見を持っていないということだ。
事務的に己の端末を叩いて彩と未唯のデータを入力する。

「生徒会とのパイプ役ということで、わたしも参加。
京極院君達とは『初めまして』だね?わたしは笹原 友香(ささはら ともか)
幼等部からの持ち上がり組で、そこにいる悠里や和也とは顔馴染み。王とは友達」
最後に口を開くのはお団子頭の少女。

取り立てて特徴は無いが、日本人らしいアジア系の顔立ち。
よく言えば控え目な印象を受ける顔立ちで、悪く言えば存在感が薄そうな印象を受ける顔立ち。
細めの瞳と低い鼻が標準的日本人の印象を際立たせる。

顔立ちだけなら日本人だが思考回路は国際人?
幼い頃の悠里と和也を知り、それでも彼等を崇拝する立場に無い貴重な存在。
それが友香だ。

「へぇ〜。和也と悠里の知り合い?」
「ええ。京極院さんとは同じ4組だね。これからもよろしく」
値踏みするような未唯の視線も気にせず。友香は右手を未唯へ差し出す。
「未唯?」
意地悪な未唯の態度に彩が名を呼ぶ事で注意を促した。
地球、ひいては日本の慣習等に完全に馴染んでいない未唯への忠告。
「よろしく」
未唯は微かに眉根を寄せたが友香の右手に己の右手を差し出して握手した。
「さて。早速で申し訳ないんだけど、依頼を一件引き受けてもらいます」
2度程未唯と握った手を上下に振り、友香は全員の顔を改めて見渡す。
「は?」
耳に手をあて友香の方へ半分体を向けて。
悠里はオーバーリアクションで友香へ説明を求めた。
「悠里が初代王から『よろづ部』設立を任されていたように、わたしには第一の依頼を伝える役目を任されていたの」

 してやったり。

得意そうに目を細め友香は悠里へ人差し指を左右に振った。

「第一の依頼。初代王からの依頼。
『海央の失われし精神を取り戻せ』これはわたしからの依頼でもあるの。お願いします」
友香は深々と頭を下げる。
「想像するのは簡単だね。王のキャラを考えれば。メッセージかなんかでしょ?」
頬杖付いた和也が友香の視線を捕らえた。
「失われし精神とか言ってるけどよ。つまりは俺等が本当に『よろづ部』の看板を背負うか背負わないか。各自で判断して欲しいってこったろ?」
酷く詰まらなそうな調子で悠里が結論を下す。
「違うよ。言葉通りに受け取ってくれると嬉しいんだけど?
海央の精神を取り戻して。今回は海央の象徴『よろづ部』のメンバー全員が海央精神を学ぶ。
これが今回の依頼」
友香は自分のPC端末を操作し、園芸部備え付けのプリンターから一枚の紙を印刷する。
「では、いってらっしゃい」
用紙を代表者の涼へ押し付け。
友香は『よろづ部』の面々を園芸部室から追い出したのだった。





「さっきの和也の意見に俺は賛成
校庭に出たところで悠里が口を開く。
「じゃ、僕は悠里の意見に賛成」
「あたしは彩の判断に賛成」
彩→未唯の順の発言に和也は微苦笑する。
良くも悪くも互いの判断を無条件で信頼しあう京極院コンビ。
少し羨ましいと感じてしまう。

部の長である涼を除く全員の意見が一致したところで子供達は一番最後を歩く涼へ目線を向けた。

「お前らに任せる」
面倒だからとか。やる気が無いからだとか。ではない。
同意見であり1年しか生活していない海央の内部。
まだ知らない部分もある。
だからこそ海央を良く知る王子と宰相に『任せる』と告げたのだ。

「じゃあ、ちょっとズルだけどいいよね。和也」
彩がいつの間に取り出したのか手に杖を持っている。
「そだね」
和也も胸ポケットから紙切れを取り出して構える。
「捜しモノなら〜、彩と和也が得意なの〜。あたしはきちんとお手伝い〜」
調子ハズレの節で未唯が歌えば、涼と悠里は苦笑して顔を見合わせた。

和也が紙切れを手に呪文のような言葉を呟き、空へ放つ。
淡い光を放つ紙切れが矢印の形に変化しある方向を示す。
次に彩が杖先を地面に押し当て何かを行う。
未唯は両目を閉じて何かを感じ取ろうとする。

数秒後。瞼を開いた未唯はにっこり笑って歩き出した。

未唯が導いた場所。
小等部敷地を通り過ぎ、更に奥。
幼等部校庭である。

未唯が迷い無く歩くのは校舎と校庭隅の大木。
手前で未唯は立ち止まった。
「なーんだ、やっぱりアソコか」

 依頼というより、仕組まれてるな。これって。

一人心地に悠里は呟く。
悠里達が幼等部を卒業してから訪れなくなった『秘密基地』
確信を持ちつつ悠里はゆったりとした足取りで幼等部校舎端の大木。
大木の陰にひっそり立つ物置小屋。

特殊構造になっていて光の当たり具合により入り口が現れる、ちょっとした仕掛けがある小屋だ。

「僕はあんまり近寄らなかったけどね。ここは初代王がアジトにしてた『秘密基地』悠里は良く王とつるんでたっけ」
悠里が彩の杖を利用して灯りを当てて入り口を開いている。
その横で和也が涼と未唯へ場所の説明をする。

フシューと空気が溢れる音と共に開く扉。

悠里が和也と涼、未唯を手招きする。

 ゴンゴン。

ガラスのような見えない壁。
向こうにはすっかり廃屋と化した『秘密基地』の残骸が見える。
悠里は肩を竦めた。

「見えないガード付き。多分幼稚園児だった、あの時の王が施してったヤツだろ。これ破れる能力者っているのか?」
悠里の問いかけに涼は唇の端を持ち上げる。
無言で何処かから刀を取り出し、居合い抜きの構え。
事情を知っているらしい和也と彩が悠里を後ろへ後退させた。
「破ッ」
白銀が一瞬閃いたかと思えば、直ぐに鞘へ納まる刀身。
瞬き一つする間に納まる素早い動き。
それは確かに見えないガードを切り裂いた。
「さ、さっさと捜して帰ろうぜ」
涼は『秘密基地』内部に一歩を踏み出す。
涼に続いて残りのメンバーも寂れた『秘密基地』へ足を踏み入れる。

埃まみれになった机や椅子。
日に焼けて黄ばんだ紙切れ。
全てが当時のまま。
埃臭いのが難点だったが特に怪しいモノは見当たらない。
気を利かせた彩が窓を開け、全員が思い思いに『秘密基地』内部にあるであろう王の手土産を捜し始めた。

「なーいねぇ?」
数数分は地味に捜していた未唯が誰に言うとは無しに口を開く。
「王って面倒ごと嫌いだから、見つかりやすい場所に置いてある筈なんだけど」
和也も怪訝そうに答えつつ机の中の引き出しを一つずつ開ける。
「そーだよなぁ。面倒臭いコトは避けてたしな〜」
悠里は紙切れを片付け、本棚の本を一冊ずつ確かめていた。
「一回外に出て見てみる?」
彩が涼に尋ねそれから外に出る。
フシューという空気音と共に扉が閉まった。

「「「「あった!」」」」
彩以外の4人の声が綺麗に揃う。

ご丁寧に扉の後ろ側に貼り付けられた一枚のデータCD。
王らしい茶目っ気か。
思いつつ悠里は自分のPCにデータを取り込んで内容を確認。
中身は映像データで、悠里は一先ず映像を再生した。

「え?あったの!?」
滑り込みセーフ。外から慌てて彩が室内に戻ってきた。


 《君は見つけましたか?》


幾分舌足らずな口調。子供特有の高めの声。
ぼやける映像に子供の口元から下だけが映っていると辛うじて分かるほどの、粗末な再生画面。
子供の口が笑みを形作った。

 《まだ出会わない君へ。
 未来の君は見つけましたか?守りたいものを。
 失えないと願うものを。
 あたりまえの毎日がどれだけ素敵かという事を》


将来の己に向けているのか?話しかけるような子供の口調。

画面を食い入るように見ていた悠里が「王・・・」と言葉を漏らす。

悠里の言葉で、王に会ったことのない涼・彩・未唯の三人はこの声の主が在りし日の王だと理解した。


 《特別な何かと引き換えに得る『モノ』には価値が無いと知っていますか?
 それとも大切な何かを手放しちゃったり・・・してないかな?

 守りたいものはあります。
 失えないものはあります。

 子供のクセに欲張りです》


自分の胸を示し画面向こうの子供は胸を張る。

 《諦めて走るより、結果を気にせず走れた方が格好良い。
 だからこれからも自分で出来る範囲で走って生きたい。
 自分自身の為に。皆の為に》
王と呼ばれたこのカリスマは当時6歳。
半端じゃない大人びた思考回路。
涼は無意識のうちに唾を飲み込んだ。

威圧感ではなく、圧倒的なオーラ。
人を惹きつけるオーラがある。

 《この映像は、将来自分で見るかもしれない。
 でもきっとこれを見つけるのは別の人。
 だから海央の由来を教えるね》

勿体ぶった王の口調。


 《海律中央学園(かいりつちゅうおうがくえん)設立当初の学園の名前。

 海は横浜が好きで横浜の象徴港町に相応しい一字を取って。

 律は、海は変化が激しく凪いだかと思えば、激しい嵐が襲ってくる。
 そんな海・・・己を常に律せるように一字を取って。

 中央はそんな海、己の中にいても公平に周囲を見渡せる視野を持てるよう。

 中央に立ち冷静になれと願いを込めて。

 そんな風に生徒達が成長できるよう教師を戒めた学園名。

 そして今この映像を再生しているのは、依頼を受けた君達。

 海央の意思を理解し、行動を起こせる人物》


無言で王の言葉に耳を傾けていた和也は仰向けに転がり。

一人心地に呟く「まいったなぁ」と。

猫かぶりだった和也にいち早く気が付いたのは王だろう。
だけど素知らぬフリで、留学しても尚敢えて知らん振りをしている節も感じる。
それはきっと和也自身が己のトラウマを乗り越え歩き出せると思ったから。
その時隣にいるのが自分でなくとも。

だからこそ秘密裏にテープなんかこしらえて今になって見せ付ける。
王らしいといえば、そうだが。性質が悪い。

きっと王が話しかけているのはこの場にいる全員で。
皆、大なり小なり悩みは抱えているのだ。
自分だけが不幸なわけじゃない。

 本当、参っちゃうよね。王には・・・さ。

和也は大きく息を吐き出した。


 《学園という単位は小さい。世の中に比べればすごく小さい。
 小さいけれど学園に集う人たちは海央という『世の中』を形成し、規律を守って生活している。
 その規律を守りたい。

 かつてそうやって海央を守っていた兄のように》


子供の唇が真一文字に引き結ばれる。
それも一瞬で直ぐに次の言葉が紡がれる。


 《まだ見ぬ君を信じるよ。君がこの映像を見て話を聞いて。
 海央の正式名称を訊いて。
 立ち上がってくれると確信している。
 君が、既に素敵な宝を手に入れていることを願って・・・》


映像がここで切れた。

ザーッと灰色の映像が無機質に横に流れる画面だけが映しだされる。

誰もが王の言葉に沈黙し己に問いかけていた。

「俺も内容までは知らされてなかったんだけど、な」
誰に言うとは無しに悠里が口を開く。
「あんな伝言残されたんじゃ、始めから勝負になんかなりゃしねーよ。俺達の負け。大人しく王の手のひらで転がってた方が賢明じゃねぇの?って思うわけよ」
言いながら悠里は映像のスイッチを切った。
「違うよ」
埃まみれの机。
靴のまま上に上がり未唯は全員の顔を見る。
誰もが王の言葉に少なからず衝撃を受けていた。
「違うよ。王は遠い場所に居ても『この気持ち』を感じてくれる人と『大好きな海央』を守っていきたいだけ。義理とかで縛りたいんじゃないの。ただ一緒に頑張りたいだけ」
男の子達が地球人らしい発想で王の言葉を受けたのとは正反対。
未唯は異なる環境で生きてきた自分の考えを加えて結論を下したのだ。
「そして海央での生活を楽しんで欲しいだけだと思う」
未唯が目線を向ければ彩がぎこちなく笑う。
「そうだね。留年しない限りは、一度しか味わえないよね。学生生活って。楽しんだ者勝ちって感じ、すっごく分かるよ」
去年までは外とは縁のなかった彩。
迷って悩んで未唯を受け入れた器の広さは伊達じゃない。
いち早く立ち直りすっきりした顔つきで、固まった体をほぐす。
緊張して映像を見ていたせいで肩が凝った。
「笹原さんも心配してるし、一回帰ろうか」
机の上に上がったままの未唯へ手を差し伸べ、一番建設的意見を述べる彩。
「うんv」
彩の意見になら先ず逆らわないのが未唯。
嬉しそうに差し伸べられた手を取った。

「「「・・・」」」
顔または知恵に恵まれるものの彼女に縁の無い3人。

羨ましそうに学園名物『ラブラブバカップル』の後姿について歩く。

元々幼等部の校舎に徒歩で移動しただけなので、そこから中等部へ戻るのは簡単だ。
8分ほど歩いて面々は友香の待つ『園芸部』部室まで舞い戻った。

「あれ?」
和也が鼻を動かして動きを止める。
いつも和也が淹れる紅茶とは違う、純粋に甘い香り。
甘い香りは部室中から廊下に充満する。
一番最初に気が付き、和也はもう一度香りを胸いっぱいに吸い込む。
「笹原さ〜んvたっだいま〜♪」
未唯が部室の扉を開けば甘い香りは全員の鼻に届く。
まるでこのタイミングで帰ってくるのが分かっていたように友香がココアを人数分淹れていた。
「お帰りなさい、京極院さん。皆」
疲れた顔の男の子達。
今回の依頼に参加した唯一の女の子、未唯だけは元気だ。
友香は微笑んでココアを皆に勧める。
「おーう」
普段ならハイテンションの悠里ですら疲れていた。
友香の好意をありがたく受け取り、甘い香りのするココアを口に含む。

精神的に疲れた場合は甘いものが一番。

ちなみに友香が用意したココアはミルクココア。
甘めでトッピングが蜂蜜という、初代王が好んで飲んでいた数少ない甘い飲み物でもある。

「衝撃だったでしょ〜」
元々口数は多くない涼が黙り込みっぱなし。
友香は確信を持って涼へ言った。
「笹原は内容を知ってたのか?」
留守番を申し出た時点でそれは事実なのだろうが、涼は確かめずにはいられない。
ココアを飲みながら友香を見下ろす。
「え?わたしが撮ったんだもん。
王に頼まれて・・・もち、当時のわたしに王の言葉の意味までは理解できてなかったけど。
この間王と2人でコピーした方を改めて見たの。隠し場所までは知らなかったけど」
悪びれもせずに笑う友香に、悠里と和也が脱力した。
「友香は高く評価されてたよね、王に。でも王は敢えて『名』を与えなかった」
当時を思い出して和也は妙に納得する。
「違うの。わたしが貰わなかったの。欲しいなら言え、って言われたんだけど。断っちゃった。柄じゃないもん」
悪戯の成功した子供のように友香は小さく舌を出す。
「え?拒否権無いんじゃないの?」
彩が驚きに目を丸くした。
「ええ、無いわ。
ただそーゆーのを他人に押し付けないのが初代王。
本人が断っているのを無理矢理押し付けたりしないのよね。
兄世代の人達と揉めたみたいだけど、実力行使に出たって言ってた」
規則は破るためにある。
豪語していた王らしいエピソード。

「「容易に想像がつく」」
最凶の名を欲しいままにした彼の人物を思い出し、悠里と和也はハモって答えた。
「最後に、初代王からの伝言。一緒に『楽しんで』くれますか?」
友香の問いかけに未唯と彩は目線でなにやらお互いに意思を確認し、うなずく。

「こーなったら楽しんだ者勝ちだね」
諦めた調子で呟く和也。

「楽しませてもらいマス」
眼鏡をかけなおしつつ棒読み口調で答える悠里。

「上等。売られた喧嘩は買う主義だ」
作った握り拳をもう片方の手で受け止め涼が最後を締めくくる。

「じゃ、これで『依頼』は成立ねv初部活動お疲れ様でした〜」
済印のついた判子を依頼書に押して友香は部室の掲示板に貼った。
そんなこんなで始動を始める『よろづ部』以降の部活動に乞うご期待?



「あっ。僕埃まみれの机に背中つけちゃったよ・・・あーあぁ、ブレザーが埃まみれだ」
なんていう王子の情けない失態のオマケ付き。


ちょっとはしょり過ぎましたかねぇ(汗)こんな感じで初代王に乗せられてく面々。近代版『中学生日記?』風な物語が続くと思います。お付き合い頂ければ幸い。感想なんか頂ければ書くスピードは確実に上がります。現金な性格なもんで・・・(私が)ブラウザバックプリーズ