第四話 『策士策におぼれる?』

 


この世の者ではない異界の住人『妖』(あやかし)
人々の負の感情に寄生し、精神・生命を脅かす・・・。
『妖』から人々を守り、妖を封印・消滅する『妖撃者』(ようげきしゃ)
彼らは今日も闇に蠢く異界の住人と対峙するのだった。


地球は日本。
首都東京のお隣神奈川県。県庁所在地・横浜市。

《ばっかじゃないの?てゆうか、どうすんのよ〜》

鬱蒼と生い茂る木々。
空にかかる雲や月が少し青みがかって見える不可思議な森。
人が二人くらい並んで通れるくらいの小道に、気絶して倒れている十数人の少年少女。
それらを一瞥して、五・六歳前後の少女が半ばキレて少年に食ってかかった。

長い髪を耳から上で二つに分け結ぶ幼い印層を受ける少女。
暗く翳った黒い大きな瞳。太めの眉。幼子特有の小さな鼻。やはり小さな唇。
フリフリの、薄いピンク色のワンピースとカーディガンという軽装姿。

「華蝶が調子に乗るからじゃん。僕だけのせいにしないでよ」
少年は疲れきって木の下に腰をすえ座り込んだ。

艶のある黒髪。ショートボブに近い長さ。切れ長の瞳に絶妙なバランスの二重。
長い睫毛と、どちらかと言えば甘いマスクに成長するであろう予感を抱かせる二枚目顔。
しかしながら現在は色濃い疲労の色に苛まれ魅力も半減中である。

本人が醸しだす『ほや〜』とした雰囲気と相俟って、育ちの良さを感じさせる少年。
真冬の北風に身を晒しくしゃみを漏らす。
見習い妖撃者『星鏡 和也(ほしかがみ かずや)』のトホホな夜が訪れようとしていた。

《なによ、なによ、なによぉぉぉぉぉ〜。アンタの妖撃者お披露目会に華を添えてあげようとしただけじゃない!》

「だ〜か〜ら〜!それが調子に乗ってるって言ってるの」
更なる疲労を感じて少年は少女・・・華蝶へ低い声音で告げる。

《アタシのせいだって言いたいの?ちょっと和也!?》

華蝶は眦吊り上げ和也を睨みつけた。

「何もわざわざ騒ぎを起こすことないじゃん。華蝶悪ノリし過ぎ。後で先生に言いつけるからそのつもりでね」
和也は耳元でギャンギャン騒ぐ華蝶に嫌気が差して、最終的に脅しにかかる。

《ちょっと・・・なにも胡蝶姉様に言うことないじゃない》

これには華蝶も怯んで声のトーンが力を無くす。

「じゃ希蝶に言う」

《もっと駄目じゃないの!希蝶姉様に知られたら・・・アタシ無事に生きていけないじゃない!》

華蝶は文字通り絶叫した。

 だから言ってるんだけどね。

んて思っていても顔に出ない己の顔筋に感謝しつつ和也は木々の間から漏れる月明かりにため息を漏らす。





事の起こりは五時間前。

「気をつけてくださいね。無理は為さらずに落ち着いて。それから・・・」
十数分以上も和也の目の前で説教というか。
注意事項をツラツラ説明する女性。
「コマ・・・三回くらい同じ事言ってるけど」
恐る恐る和也は女性へ・・・コマへこう言った。
「え?あ、そうでしたか?」
コマはキョトンとした顔つきで和也を見下ろした。

小春=コマ。通称コマ。和也の同居人兼保護者。
霊犬という種族で和也一筋七年間。優秀なスーパー家政婦さんでもある。

年齢は二十四歳前後。
百七十近くあるモデル並の長身。肩までの黒髪をゴムで一つに結んでいる。
切れ長の黒い瞳。短めの睫毛。
顔立ちは純日本人で、日本画に出てくる美人絵図の雰囲気を持つ。

「この訓練所から森に入る。色々罠とか仕掛けられてる一本道を駆け抜けてゴールまで辿り着く。
他の見習い妖撃者との合同訓練。
あくまで訓練だから最短の時間を競うものではない。これでいいんだよね?」
昨晩から耳にタコが出来るくらい聞かされた訓練の概要を復唱し。
和也はコマの言葉を封じた。
「はい。和也様が言う通りです」
言いながらもそれでも和也が心配なコマは、和也の持ち物に抜かりはないか小さいリュックを再度開いて確認し出す始末。
「師匠〜たっけて〜」
さっきから二人の遣り取りを面白がって眺めているだけの和也の師匠。
和也は師匠に助けを求めた。

和也の師匠は凄腕妖撃者。その名を水流 氷(みずながる こお)という。
先ほどから壁にもたれてニヤニヤ笑っている中学生くらいの少年だ。
しかも前世が初代妖撃者の長と言う胡散臭い肩書きを持つ。
強すぎる潜在能力で老けにくいオプション付きの。
よって外見は中学生くらいで実年齢は二十八という大人子供である。

「麗しい家族愛じゃねーか。有難く愛情を感じとけ」
明らかに傍観者に徹して楽しんでいる氷に、和也は殺意を覚えてしまう。
「嘘って分かる、あからまさでおざなりの励まししないでよね!これじゃ出発どころじゃないよ〜」
八つ当たりの矛先を師匠へ向ける辺り和也も出来た弟子なのだが。
氷は黙って肩を竦めお手上げの意を示す。
和也は両頬を膨らませブスーとした顔でコマのなすがまま。
「他の見習い妖撃者の方と出会ってもきちんと挨拶してくださいね。礼儀が大切ですから。それに・・・」
まだ終わりそうにもないコマの心温まる注意事項の数々。





おおよそこのようないきさつで合同訓練へ赴いた和也。

和也を待ち受けていたのは妖撃者が作り上げた罠と。

『和也の合同訓練(お披露目)に華を添えよう』と意気込んだ華蝶の襲撃の嬉しい(?)二点セット。

ついでに華蝶の気配を隠すために和也が無意識に張り上げた結界と相俟って空間は固く密閉された缶詰のような状態へと陥っていた。

《バカバカバカバカ!和也の考え無し〜》

お互い様なのだが華蝶の責任転嫁に和也は苦笑。
華蝶を手招きしてそれからリュックに入れた板チョコを取り出した。

「ご飯にならないけど、なにもないよりマシでしょ」
板を割り半分こ。生来『生(き)』=人間の発する負の感情。
を糧とする妖には意味が無いだろうが和也なりの気遣いだ。
前世で同じ妖として共に生活していたせいか、和也に危機意識はない。
寧ろ華蝶との言葉の遣り取りは楽しいようで積極的に会話している。

《・・・そりゃマシだけど》

渋い顔で板チョコ半分を受け取る華蝶。

「ここで《妖撃者の『生』なんて滅多に味わえるモンじゃないから、一寸だけ》なーんて事になったら先生と希蝶の二人にチクるからねv」
予想範囲の華蝶の台詞を声まで真似て告げる。
和也の口撃に華蝶は板チョコを喉に詰まらせた。
「華蝶・・・器用だね〜」
心の底から感心して言う和也。言いながらも律儀に華蝶の背を擦っている。

《ゴホ・・・こ、このぉ〜。アタシをからかって楽しんでるでしょぉぉぉ・・ッ》

咳き込みつつ涙目で和也を睨む華蝶。

「でも少し考えたでしょ?」
ね?駄目押しで和也が華蝶の顔を覗きこむ。
華蝶は頬をヒクヒクと痙攣させて乾いた笑いを漏らす。
思いっきりど真ん中。
ストライク。
和也は尚もニコニコ笑い付け足した。
「勿論。長の息子である僕の前でそんなことになってみなよ?僕は妖撃者だからね、遠慮なく害を成す妖を退治させてもらうよ」
釘を刺してから自分の分の板チョコを口へ頬張る。

《イヤイヤイヤイヤ〜!!和也性格悪すぎ!》

身悶えし。上半身を左右に振り高音ボイスで華蝶はこの日何度目かの絶叫。

「そりゃどうも」
耳を素早く両手で押さえ和也は平然。

《んなところはあの初代もどきに似なくていいのっ!!》

外見は和也のほうが年上だが、実年齢で数えれば華蝶のほうが断然年上。
ついつい諭すようなお説教のような口調で怒鳴ってしまう。
和也の師匠。の前世を知る華蝶からしてみれば大変に厄介な妖撃者。
それが水流 氷であり和也の師でもある。
また、蛇足ではあるが在る事件で人間へと転生を果たした華蝶の姉の夫でもある。

人間関係・妖関係複雑な絡み合い。

「えー!?なんで僕が師匠に性格まで似なきゃいけないわけ?あんな大人子供と一緒にしないでよね」
心底嫌がって和也が顔を顰めれば、華蝶は少しだけ複雑そうな顔つきになった。

《ヤダ・・・自覚ないわけ?》

「なんの?」
小声で呟く華蝶に素早く和也はつっ込む。
少し逡巡した後《なんでもないわよ》と。
華蝶に誤魔化され有耶無耶になってしまったとしても。
仕方のない話題である。

《それよりよ!この缶詰結界のお蔭で誰も出られないじゃない?効力は多分一晩。和也の力具合じゃそれが限界ね。どうする?》

僅かに元気を取り戻した華蝶は立ち上がり、薄灰色の結界が張り巡らされた空を見上げた。
和也は座ったままで同じように空を見上げる。

「ここで大人しく助けを待った方がいいんじゃないの?」
至極尤も。妥当な案を口にして、爆睡する(正しくは気絶)同期達を見る。
こんなことなら自分も被害にあったフリして暗示でもかけて眠ればよかった。
なーんて考えているのは和也だけの秘密だ。

《無難ね。でも一つ忘れてるんじゃなぁい?》

ち・ち・ち。わざとの舌打ちと人差し指を左右にきっちり三回。
華蝶は中腰になり和也の顔を覗きこんだ。

《助けを待つ間。よ》

「は?」
間抜けた顔で和也が相槌打てば華蝶は呆れた調子で肩を落とした。

《和也って色々な意味でマイペースよね・・・疲れるかも・・・。それよりね、アタシが言いたいのは基本的な事。アタシがこの場に出現すれば門の歪みは必然的に生じてるじゃない?
本来の力を伴って門は潜っていないけど・・・それなりだし。で、その他諸々も一緒でしょ。更にココに仕掛けられた罠もあるしぃ・・・》

指折り数え出した華蝶にちょっとどころか物凄く嫌な予感満載の和也。
内臓がストン、と下方に落下した衝撃を錯覚的感覚として捉えていた。
「考えたくなくなってきた」
あはははは。誤魔化すように笑う和也に華蝶は冷笑を浴びせる。

《フン!今更気づいても遅いの!和也が無意識に缶詰にした結果、妖口密度は鰻上り。反比例してエサは限られてます。さて問題です。このような時どのような現象が起こるでしょう〜?》

「うんわ。考えたくない・・・」
首筋の産毛が総毛立つ。
道端に放置中の同期狙いで移動を開始した・・・ような妖の気配をそこかしこに感じ。
和也は気だるげに立ち上がった。
「あああああ〜!華蝶のせいだからね!ぜーったい言いつける」
これから一晩かけて巻き起こる攻防。
和也は最初に華蝶へ言い切った。

《なっ・・・責任転嫁しないでよね!勘違いしてるんじゃない?元々、和也は妖撃者なんだからアタシとは敵同士なのよ》

和也の隣に立ち。
『言いつける』の脅しが効いているのか手伝う姿勢を見せる華蝶が、腹を立てて言い返した。
「勘違いなら華蝶の方!妖撃者密度の多い場所にノコノコやって来て・・・って?もしかして本気で妖撃者の『生』狙いだったとか?」
はたと思い当たって和也は隣の華蝶を見下ろす。

《んな訳ないでしょ――がっ!》

面白そうだったから。からかい半分冷かし半分。
だったとは口が裂けても言い訳しない華蝶はそれなりに策士である。
和也の的外れの指摘に律儀につっ込み返す。

「だよね〜。・・・あぁーあ。今晩は寝ずの番で皆を守る役か。割に合わないな」
腕時計で時間を確かめ嘆息する和也の脳裏は別の話題がひしめき合う。
特に華蝶を厳しく追及などとする趣味は持ち合わせてないらしい。

 和也がお子様で助かった・・・。

会話の内容が変化して安堵。華蝶は胸をなでおろした。

《責任の一旦はあるし。アタシだってフォローするわよ・・・その代わり、姉様達には内緒よ!内緒!》
それはそれ。これはこれ。交換条件ともいえる申し出。
華蝶の苦肉の策だ。
外見はお子様だが経験豊富な長生き妖。
フォローの代わりに和也の口封じを行えばこの一件は揉み消せる。
畳み掛けるように言えば和也は小首を傾げた。

「手伝ってくれるなら構わないけど・・・同族殺しなんじゃない?人の道ってゆーか、妖道に反したりしてない?」
倫理的見地はともかく。小学生ながらに疑問が胸に湧き上がる。
和也は感じた疑問をそのまま口にした。

《あやかし・・・どう?んなもんある訳ないでしょ。完全実力主義よ、うちは。
それに妖としての形の消滅・封印はあっても、浄化までは全部出来ないでしょ。和也の実力じゃ。
アタシが助けるのは門の向こうへ同族を押し戻すだけ。勘違いしないように》

妖にもそれなりに同族意識はある。
華蝶の自己中心的な性格を差し引いても、そこまで己の考えのままに振る舞いはしない。
無論、姉二人の存在が華蝶のストッパーとなっているのも明白なのだが。

「りょーけー。じゃ、僕もそれなりに頑張るから、華蝶もフォローよろしく」
右片手を軽く上げて欠伸交じりに和也は応じる。
華蝶は肩にかかった毛先を指先で弾いて鼻を鳴らす。
エサ(気絶中の見習い妖撃者)目掛け円形を方陣を形作りソロソロ近づく妖連中の気配。
そこかしこから漂う妖気に和也は肌をチクチクつつかれて、少しだけくすぐったい。
口許をゆがめて笑いを我慢すれば華蝶に肘でつつかれた。

《他所見しない!来たよ》

小道正面・背後。
木の影。
空の雲影。
闇に紛れ空気に潜み。
感知できない多数の妖が上質のエサ(しつこいようだが気絶中の見習い妖撃者達)目掛けて出現。
「長い夜の始まりってね」
太陽が明けきれば和也の陰の結界の威力も半減する。
そうなれば結界外に控えているだろう大人達が救出に来てくれる。
和也は人差し指と中指をあわせ構えた。

《いっけ―――!》

気絶中の見習い達を避ける形で降り注ぐ雷光。
目の奥までチカチカする眩い光に和也は眉を潜める。
雷光の灯りに照らされて断片的に姿を浮かび上がらせる妖。
指先に溜めた力を風に乗せ、相手に気取られぬよう飛ばす。
「・・・」
空いたもう片方の手でポケットから呪符を取り出し、唇を当て小さく術を唱えた。
紙はたちまち和也そっくりに姿を変え、華蝶の隣に立った。
和也本人は足裏に風の力を乗せ空高く飛翔。
沢山飛ばした力を溜めた球体を淡く光らせ一種幻想的な風景の出来上がり。
「せぇーの!」
目を閉じて神経を沢山の球体に集中させる。
華蝶の雷光の軌跡を頭の隅の感覚で捕らえ、球体を経由してあちらこちらへ稲妻を張り巡らせた。
蜘蛛の巣のように縦横無尽に走る稲妻の糸。
和也の陰術もミックスされ、捕まった者はたちまち力を失う。
紙で出来た和也そっくり人型は低級妖の攻撃の的へ。
和也だと勘違いした妖が爪や牙をむき出しにして切り刻んでいる。

《へぇえ?和也にしちゃー、考えたね》

雷製の蜘蛛の巣。
黄色に光る罠に華蝶は素直に感想を述べた。

「蜘蛛の巣の罠は二人ないし、三人で行うトラップだよ。一人が風か水の術。もう一人が光か炎の術。ミックスして妖を絡め取る。ま、もう一人居た場合は封印役にまわるんだけどね」
目を閉じたまま和也は下にいる華蝶へ説明した。
この際手の内を敵に〜なんていうよりかは原理を理解してもらい華蝶のフォローを最大限に引き出したい。
普通の妖撃者なら妖と連携して攻撃だなんて・・・。
等拘ってしまう部分ではあるが生い立ちが特殊な和也にそれがない。

 生き残れてなんぼだし。責任も・・・感じてるからね〜。気合入れますか。

体の表皮。
神経細胞の一つ一つが完全に球体と繋がり、球体を結ぶ空気が電気を伝達する様を感じる。
電気の網に引っかかった下級の妖は消滅。
中・上級の妖は封印され、封珠となって地へ散らばる。

「あくまでもトラップだからキレ者には通用しない。雑魚散らし程度だね。門を開いた時は華蝶が特大のを一発やってくれると助かるなぁ〜」
猫撫で声で華蝶へさり気なく注文をつければ、

《抜け目ないんだから・・・子供のクセに》

渋い口調ながらも了承したらしい華蝶の返事が返された。
華蝶の気まぐれな気性そのままに法則性も欠片もない変則的な雷の雨。
威力も強かったり弱かったり散漫で、両手で雷を操りつつ鼻歌交じりの華蝶の歌声を聞く限りでは。
彼女も本気を出しておらず、言った通りにフォローだけに徹するのだろう。

《そろそろ様子探り終わった連中が本腰入れてるみたいよ?》

一際強く感じる強い妖の気配。
和也は感じ取って風の術を解いた。
軽い浮遊感に包まれ爪先が地の先へ到達。

「気配は全部で六つ。取り囲むように接近中。恐らくは一斉攻撃でもしかけられちゃったりするのかなぁ・・・」
首を左右に振り、解す。和也はぼやき封珠を一つ一つ拾い上げる。

《んーどうかな?アイツ等だってアタシの気配がしてるのは分かってるだろうし。影月の気配でもちらつかせて追い払えば?》

まるっきり他人事で華蝶が呑気に言った。

「したいのは山々だけどね。下手すれば華蝶だって僕だって、『生』を吸われちゃうのがオチでしょ。
妖の力を吸収すれば位も上がるし力もつくし。妖撃者の生を吸えば元気になれるし。
どっちに転んでも美味しいんじゃない?缶詰結界の中。口裏合わせれば何が起きたかなんてどうとでも誤魔化せるよ」
冷たく切り返す和也の台詞に納得。
華蝶は両腕を天へ伸ばし大きく伸びをした。

《本当。どちらに転んでも美味しいですよね》

クツクツ喉奥で笑う声。
女の声だ。

「押し売りの類はお断りなんだけど・・・」
和也は間髪いれず術を繰り出した。空へ向け拍手二回。
全属性を結界天井へぶつける。

《飛んでけ!どっかーん》

華蝶が察してとびきり派手な雷光で相手を威嚇。
地面すれすれに這う雷光を避けるため必然的に少し跳躍する妖。が。

《!?》

「空に門を開くと掃除機みたいになるんだよね・・・」
大口を開けて空に開いた穴を見上げ。
和也は一人心地に呟く。
巨大掃除機口に吸い込まれるように妖は門の向こうへ姿を消した。

《こんな調子の夜・・・かぁ。アタシもつくづくツイてない》

不服も顕に唇の先を突き出した華蝶。
同意見ながらも直ぐ新手に囲まれ息つく間もない和也でありました。





白々と明けきらぬ東の空。地平線との境界線。
今にも仲良く閉じそうな瞼をしっかり見開いて太陽の光を拝む。
有難い・・・気持ちよりもナニよりも。
「疲れたあああぁぁぁ――!!」
低い掠れ声で叫び和也は大の字に地面へ倒れこんだ。
華蝶は結界の薄れたところから早々に退散。
空を悠然と突き抜け、妖撃者の気配を感じない場所まで避難。



《まったく!遊ぼうと思っても全然弱くてお話にならないじゃない、和也の奴。もうちょっと強くなったらそれなりかなぁ》

缶詰結界は予想外だけれど。
骨折り損のくたびれもうけ。楽しくなかった。
策を張り巡らせたつもりが?

《策におぼれちゃったわよ》

文句一つ。零して華蝶は姿を消した。

和也がこの後どんな『お叱り&お仕置き』を受けたかまで見れば。
それなりに華蝶の気持ちも紛れたのかもしれないが。
和也にとっては災難のような仕方のないような。
そんなある夜の孤独な戦いでありました。


和也も地道にパワーアップということで。という話。思いの外長々してて纏り無い(何時もの事)ですが。なんとか纏めて(纏ってない・汗)みました。ブラウザバックプリーズ