デッド・オア・アライブ?



火影屋敷から不本意ながら盗み出した、禁術の書。
抱えるほどの大きな巻物を背に背負ってナルトは夜の木の葉を駆け抜ける。

「まったく。馬鹿は吐いて捨てるほどだけど、ここまでだと興ざめだ」
静かな夜に起こった小さな騒ぎ。
慌てふためく忍達を尻目に、ナルトは涼しい顔で彼等を眺める。

気配を消し瞬身の術を行使して、影分身を目立つようにある場所へ向わせる。
更にもう一つ。
影分身を火影屋敷へ。

「それに。イルカか」
ナルトの影分身に迫る熱血アカデミー教師。
イルカの気配にナルトは眉間に皴を寄せた。

このペースでイルカが走れば、イルカ到着前にミズキを始末する案は廃案にすべきだろう。
三代目も例の水晶でしっかりナルトの行動を把握していて。
ちゃちな小手先技でも使えば直ぐに見抜かれる。

12年間騙し続けたのに、ミズキ如きでこの計画をお釈迦にするつもりは毛頭ない。

イルカにも悟られないでミズキを痛めつければいいか。
この手でカタをつけるのは、今晩過ぎてからでも遅くはない。
処分は三代目の采配に任せるのも、この際一つの案として考慮しておかなければ。

「おい、ナルト」
暗闇から、闇夜に溶け込む黒髪と黒装束の少年。
下僕二号ことサスケが姿を見せる。
「こんな夜中にどうした?」
心底不思議そうにサスケに尋ねるナルトの台詞。
サスケは憮然とした顔で右手を腰に当てる。
ナルトはサスケの忍び姿を見て小さく息を吐き出した。
「帰れ」

 しっ、しっ。

犬を追い払う飼い主。
邪魔だといわんばかりの横柄な態度。
「お前っ」
声を荒げるサスケ。
忍の気配はそこかしこからするのに。
頭に血が上ると見境が無くなる困った下僕。

それがサスケ。

ナルトは問答無用で口を塞いだ。
当然効果的に自分の唇を使って。

「〜!!!!」
もがくサスケを抱き締め、酸欠寸前まで舌を絡めるディープなキスをお見舞い。
サスケは一撃で屋根上に沈みこんだ。
「ガキ」
顔を真っ赤にしてへたり込むサスケに、腕組みしたナルトは顔色一つ変えずに嘲笑った。
《愚かだな》
トドメの一撃。

小鳥こと九尾の化身がサスケの醜態を鼻で再度嘲笑う。
サスケは前かがみの姿勢のままナルトを睨みつけていた。

「私の邪魔をするならお婿に行けない身体にするけど?」
無表情のままで言い切ったナルトの最後通告に。

次の瞬間サスケはコクコクと首を横に振る。
相手がナルトならなんて思考も過ぎるが、小鳥(九尾)のチャクラが恐すぎる。

イタチのイの字も拝まないうちに死んでしまったら。
本末転倒。
何のためにナルトと修行しているのか分からない。
取りあえずは生きながらえる事が先決だ。

「でも帰ったらお仕置きだから、覚悟しておけ?」
薄っすら冷たい笑みを浮かべたナルトに、サスケは身体に鳥肌をたて、夜の木の葉の民家の屋根。
極力気配を殺して微動だにせず。
数時間は石化していた。

「さて仕掛けるか」
影分身が向った里外れ目指し移動。

火影屋敷に向わせた影分身は変化の術を使い、先ほどナルトが気絶させた見知らぬ中忍に。
ナルトへの憎悪を漂わせ、火影へ直談判。
火影の注意がナルトの変化した中忍に逸れている間は三代目の監視がない。

こうしてまんまと。
ナルトはミズキと三代目の目を盗み、影分身と入れ替わった。
それからミズキの衝撃の告げ口に動揺したフリをして。
遅れて到着するイルカに庇われつつ。

夜の森を巻物持って逃走。
その間も火影はナルトの分身が変化した中忍と会合を儲け、ナルトの対応について語り合っている。
滑稽なほど真剣に。

「ばぁか」
長い髪を背後に靡かせ。
ナルトはミズキに聞こえるようにわざと声を荒げた。
「なっ!?」
気が付けば周囲の森の景色はどこにもない。

塗り固めた闇の空間。
ミズキは驚いて立ち止まる。
音も光もなにもかも。
感覚が狂いそうだ。360度何処を見渡しても、闇・闇・闇。

無意識に身震いしてミズキは目の前のナルトへ顔を向ける。
「まさか……」
柔和な教師の顔が驚愕に歪む。
驚きから絶望へ変化するミズキの顔を眺め、ナルトはクスクス笑っていた。
「ああ? イルカなら偽のミズキと戦い、偽のナルトと師弟愛を確かめ合っている。心配は要らない」
笑いながら結界外の様子を教えれば。

案の定ミズキは身体を振るわせつつクナイを構えた。
開いてはいけないパンドラの箱。
開いてしまった愚者の空気を漂わせ。
「殺しはしない。またお前が私の『存在』を証明できる手立てもない。さあ選べ。私の条件を飲むか、三代目に裁かれるか」
ミズキが投げたクナイを手裏剣で弾き返し。
笑顔のままナルトはミズキに選択を迫る。
「だ、誰が九尾のバケモノなんかと!!」
「残念」
艶めいた微笑を残しナルトの姿は掻き消え、ミズキは気が付けば火影屋敷で拘束されていた。




それから数日後のうちは邸にて。
頬を痙攣させたサスケは鼻歌交じりに墓を作成するナルトを縁側から傍観していた。
「結局。ミズキは三代目によって、長期里外任務に出される事になったの。ただ残念な事に現在行方不明。骨くらい里に戻して上げないと、可哀相でしょう?」
スコップを裏返しにしてトントンと、桜の木下に埋めた骨の上。
土を固める。
園芸が趣味だというナルトらしい手際の良さ?
「……なんで俺の家の庭に埋めるんだよ」
「祟られたりしたらイヤだし。サスケの家なら広いから、骨の一つや二つ。出てきても怪しまれないじゃない」
表面上は愛くるしく笑うナルトに、サスケは口を噤んだ。

下手な暴言は死へ直結している。

生きるか。死ぬか。
選ぶ権利はこちらにあるが、決定するのは目の前の暴君なのだ。


ミズキが消息を絶って数ヵ月後。
不思議と誰もが彼の存在を忘れたのは。
絶対に偶然ではないと確信するサスケであった。


ええっとコメント微妙な話だな〜。お婿にいけない体って言葉を使ってみたかった(爆笑)だけですわ。ブラウザバックプリーズ