迷コンビネーション?


暖かい風に誘われうとうとするナルト。
只今下忍合同任務中。
くらりと傾いだナルトの身体をカカシが拾上げた。
「おーい、ナルトォ。大丈夫か?」
トレードマークのツインテールがだらりと垂れる。

桃色の頬を何度か突きカカシはナルトの覚醒を促した。
基本的にフェミニストなカカシは乱暴はせず、ナルトの意識を覚まさせようと穏やかに行動する。

 ……ちっ。

サスケは無表情のまま内心舌打ちした。

「もう……食べられないってば……」

幸せそうな顔で寝言を呟くナルトに「色気より食い気だね〜」なんて。

イノとサクラは微笑ましく表情を緩ませ。
何故かチョウジは片手に持ったスナックを食べる手を早め。
シノは「餌付け?」等と怪しく呟き。
面倒臭い風を装って欠伸を漏らしながら横目でナルトを盗み見るシカマル。
キバと赤丸は惚けた顔つきで揃ってナルトを凝視。
ヒナタはニコニコ笑いつつもカカシへ向ける笑顔がちょっぴり怖い。

「どうしたんだろうねぇ? うずまきは」
紅が首を傾げつつカカシからナルトを奪還。
表情は普段と変わらないカカシの、ピンクチャクラからナルトを守るためだ。
「最近良く眠れてないみたいだぞ? 今朝から眠そうだったしな」
アスマがナルトの寝顔を覗き込み目の下の隈を示す。
「そう……」
熟睡するナルトを心配そうに見下ろして紅は表情を曇らせた。

任務は任務なのでナルトを起こしてもかまわない。

が、生憎、ココに集ったほぼ全員。

やや常識人のイノとサクラを除いて全員がナルマニアだった。


 に い さ ま。


無意識のナルトが四文字の言葉を紡ぐ。

ナルトと同じ身長の子供で、写輪眼持ちのサスケにしか分らない動き。

ナルトをどうするか揉める馬鹿(サスケ視点)は放置してサスケは一人任務放棄を決意。
気取られぬよう持ち場を離れて移動を始めた。

見知らぬ民家の屋根を飛び、気配を探す。
まあ、あのナルト至上主義の妖狐の事だ。

サスケがナルト関連で動いている事位容易く察知するだろう。
暫く町を駆け抜けていれば、サスケの頭に飛び込む刺々しい言葉。

《何をしている、下僕二号。我が妹から目を離して優雅に散歩とは随分と余裕だな?》
風を切って移動するサスケと平行して飛ぶ小鳥。
九尾は嫌味たっぷりにサスケへ言った。
「仕方ないだろう、お前を探していたんだ。ナルトが寝不足らしい、何故だ?」
ここ数日。サスケの家に姿を見せなかったナルト。

ナルトは静かな空間を好み、その時々の自然を好む。
用がないと彼女が判断すればサスケは放置。
最長で三週間放置された経験を持つサスケである。

《仕方あるまい。我にも仕事がある》
幾分、権高な態度を仕舞い込み九尾が沈んだ調子で声のトーンを落とす。

意外な九尾の返答に思わず屋根から転げ落ちそうになるサスケ。
バランスを激しく崩しながらも懸命に跳躍。
目立たぬ町外れの電柱の上に着地した。

 し、仕事???? この小鳥(九尾)頭が壊れたか?
 いや元から壊れているか。

自分でボケてツッコンで。
サスケが驚いていると、九尾は咳払いをして容赦なくサスケの脳天に嘴で一撃を加えた。

「〜!!!!!」
サスケは脳から頚椎を経由して背骨を突き抜ける痛みに、声も出せず悶える。
そんな下僕の頭に九尾は飛び降りた。

《愚か者めが。妹は三代目の爺や里全体に実力を隠しておるのだぞ? どうやって生活に必要な品を調達していると思っているのだ》
呆れ混じりに、サスケの自尊心をチクチク刺す皮肉たっぷり。
九尾の物言いは一々棘があって会話には相当な忍耐力を必要とする。

下手に逆らえば半殺し確実。
なんせ相手は九尾の狐なのだから。

 た、耐えろ!! 俺。

肉体的な痛みとは別に精神的な痛みも頂戴し、サスケは必死に自分に言い聞かせた。

《妹が消えては怪しまれる。我が人型を取り自由契約の用心棒として働いているのだ。でなければ一流の調度品を妹に与えられぬ。人とはまったくもって愚かだ。妹の純粋さに目を背け非難するとは》
愚痴っぽい九尾の説明に、サスケの脳は理解を拒絶。

 ……ナルトの為に用心棒家業??? アノ、伝説の妖狐が!?

働く九尾自体想像不可能領域だが、誰かの為に汗を流す九尾はもっと想像不可だ。
九尾とナルトの隠れ家には、九尾が選んだという日常の品々やナルトの衣服が置いてある。
九尾の説明通りならどれもが一流品らしい。
眩暈と驚きと現実逃避から激しい頭痛がする。
頭を押さえサスケは乾いた笑みを浮かべた。

《我が寝かしつけておる故、普段は十二分に睡眠を取っていただろうが。ここ数日は我が不在であったからな》
嘆息した九尾はサスケの上着の襟を掴みナルトのチャクラが感じられる方角へ。
目にも留まらぬ速さで飛んでいった。
そんな九尾の目に飛び込んできたのは。
《ほう……??》
ナルトへ向けられる邪チャクラ。
火花を散らす下忍&上忍。

見咎めた九尾は底冷えのする第一声を吐き出す。
九尾の高速移動に吐き気を催していたサスケも口元を抑えたまま、九尾と似た様な気持ちで眼下の光景へ視線を下ろした。

「……」
前述した通り、一部を除きナルマニアが集った合同任務。

意識のないナルトの処遇を巡って醜い争いを繰り広げる彼等に。
無言で写輪眼を回すサスケに、チャクラを倍増させる九尾の煌々と光る禍々しい赤き瞳。


大切なナルトに不埒を働こうとする輩、成敗。


互いにうなずきあってアイコンタクトは完了。
数秒もたたないうちに長閑な下忍任務地は阿鼻叫喚の地獄と化した。





「ん?」
目を擦りながら眠そうに小さく欠伸を漏らすナルト。

幻術の中を彷徨い屍と化した一部のナルマニア&普通に眠らされたくの一。
ぼんやりする頭でナルトは小首を傾げる。

 兄様とサスケって迷コンビ。
 サスケはイタチと同じで独占欲強い。
 本当兄弟揃って似ているね。

 サスケ怒るから言わないけど。

兄と下僕に感謝の言葉を伝えながらナルトは胸の中で結構冷静に考えていた。


ナルトは気に入らない相手には己の正体の欠片さえ掴ませず、常に兄様が守っているという話?? というか、初期の頃はサスケもそれなりに九尾を立ててた?? って話かも。ブラウザバックプリーズ