姦(かしま)しい+一=?


カカシ・紅・アスマ、彼等が率いるルーキー達は概ね仲が良い。

「なんだってば? それ」
ナルトはまん丸の大きな蒼い瞳を見開いて、イノが手にした薄っぺらい本を見た。
子供らしいナルトの反応にイノはちょっと得意げに「ふふーん」と鼻で笑う。

「これね? うちの父親の中忍時代のお友達の奥さん。元くの一さんが持ってた、当時の木の葉の里の男性忍のビンゴブック。略して『木の葉イケメン名鑑』よ」

「イ、イノちゃん……略してない……」

胸を張ったイノに、ヒナタが顔を赤くして律儀に突っ込んでいる。
イノを嘲笑うサクラの表情をイノは一瞥し。
気まずさを攪拌するように咳払いをした。

「これにさ〜、カカシ先生とうちの担任のアスマが載ってんの! 興味あるでしょ? 後はあんまり面識がないけど、ヒナタの従兄弟の担任、ガイ先生とか、ね」

 だから、あたし達から避難して昼食してる男共にバレないように。
 奇を狙って今読むのよ。

声のトーンを下げ続けて言い放って、イノはナルトを手招き。

 男のランクねぇ?

ナルトにすれば興味はナシ。
ただ、現在進行形で行われている己の監視はどうにかしたい。
もしかしたら弱みを握る糸口は見付かるかも?
そんな単純な気持ちでナルは、イノ・サクラ・ヒナタと共に過去の『木の葉のイケメン名鑑』を眺めたのだった。


数日後の夜。
「……で……お…れ……」
息も絶え絶え。
ボロボロの姿で路上で地面とお友達になったサスケは。
己を見下ろすナルトを見上げた。

重力の法則に逆らって不思議とサスケの身体が浮かび上がる。
無論サスケの襟首を小鳥(九尾)が掴み上げて。
飛んでいるから、なのだが。

「早目に確かめておかなければならない」
サスケのボロボロ度をチェックして、ナルトは満足そうに目を細めた。
何を確かめたいのかサスケは問いかけたいが、口を動かすのも痛くて満足に声も出せずに居る。

「この間、イノが『木の葉イケメン名鑑』なるものを持ってきた。名鑑自体は数年前のもので、大分古いが。カカシの情報が載っていた」
サスケの都合は完全無視。
無視以前にナルトの眼中には入っていないだろう。
とつとつと語り始める。

《あの小五月蝿い監視役。侮れぬ。完全とは言えぬが写輪眼の持ち主。一歩誤れば我と我が愛しき妹の秘密が漏れるやもしれん》
サスケの首元で九尾の化身・小鳥が呟いた。
呟いたというか、脳内に直接思念を伝えてきた。

どうやら今夜はカカシの何かを確かめるらしい。
そこまで推論して何故自分が風呂上りに問答無用でナルトにボコられて。
こんな見知らぬ通りに連れてこられたのか? 謎は果てしなく広がるかに見えた。

「カカシは。十二年前の九尾襲撃の際、多くの友と身内を失くしている様だ。大切な人も亡くしたらしい。気の毒にな」
対して気の毒そうに聞こえない。
ナルトは胸にサスケをかき抱きその耳に囁く。

 た、耐えろっ! 俺……。

サスケはひたすら忍者心得を心の中で唱え、耳筋を這い上がるゾクゾク感をやりすごそうと試みる。
着痩せするタイプのナルトは、外見のスレンダーに反して歳の娘にしては胸が大きい。

しかも。

九尾が調達している不思議な甘い香りの香を常に焚いていて。
眩暈が起きるような甘い香りに胸の柔らかい感触。
ダブルパンチでサスケは鼻の奥がツンとした。

 これしきでナルトに欲情しようものなら。
 一生笑いの種にされる。
 これまでだって散々笑われて来たんだ。
 汚名をこれ以上増やしてなるものか!

「アレは喪失感を埋めるべく、まずは任務に走った。難易度の高いA・Sランクばかりを請け負いひたすら高みを目指した。当時、アレも十四歳、致し方ない」
耳元でボソボソ喋りナルトは舌でサスケの耳を少しだけ舐めた。
「……!!!!」
サスケ、声にならない。

 身体の奥が。奥が……。

「数年後。気が付けばアレはエリート忍者になっていた。容姿も物腰も、まぁ、兄様に劣るとはいえレベルは高い。里のくの一どもは放っておかなかったようだな」

《アレも支えが欲しい時期に入っていたのだ。雄の性にはエリートとて逆らえぬものよ。人の浅ましさの見本だな》

付け加える九尾のコメントには、カカシへの悪意が満ち満ちている。

師の遺産であるナルトへ向ける柔らかな眼差し。
イルカのように師弟愛なら良いが、カカシの場合は微妙で。
九尾としても要注意人物としてチェックはいれていた。

「大方は熱を上げたくの一達が一方的に周囲で騒いでいた。だけらしいが、中々好みが五月蝿いらしくアレはどの女とも。男とも長続きはしなかった」

 ちょっとまて。

薄々自分の運命を察してサスケは全身が総毛立つ。

「どのような上物の女でも長続きがしない。これは怪しいではないか? 好みが狭いと考えれば納得もできるが。ちなみに男と関係があったとは噂だがな。確かめる価値はある」

腕の拘束が解かれナルトとサスケの距離が開いた。
ナルトはサスケの上着の襟を乱し、鎖骨の上に口付け。
ちゅうっと吸い上げる。

 い、いやだ……。俺の、俺の夢は復讐……。

嫌な予感というか。
貞操の危機というか。
全てにおいて絶体絶命。
サスケは思わず目に涙を浮かべた。

「まずは男に反応するか。確かめる」
悲壮な顔で涙するサスケの唇に、癖になった口付けを落とし。
ナルトは薄く笑う。

既に彼女の脳内では決定事項。
サスケの身体がどうなろうがナルトは知ったこっちゃない。
ナルトの心情が分かるだけに、サスケは信じていない神をこの時ばかりは信じ祈った。

「客観的に見てサスケは容姿は美しい。そそるかもしれない。これからアレは夜の任務を終了しここを通りかかる。お持ち帰りされろ。後日確認にサスケの家に行くから」

最後にサスケ陥落技の一つ。
ディープなベロチューして、据え膳サスケの出来上がり。
仰向けにサスケを地面へ転がし、ナルトは決定事項だけを口にした。

《下僕二号よ、せいぜい我等の役に立て。まあ? お前も楽しい夜を過ごすが良い》
九尾の言葉の端端に悪意がひしひし感じられる。

投げれるものならクナイを投げはなって。
鳥焼きにして食ってしまいたい。
サスケは奥歯を噛み締め悔しがった。


ナルトと九尾の計画通りにサスケはカカシにより発見。
カカシの家に保護されるも、別段カカシがソレらしい態度は見せずに翌朝無事開放。

運が悪い事に匿名のタレコミがあり、カカシはサスケとデキている。
なんて噂が。
カカシに保護されたサスケの目撃者も多数いて、暫くの間木の葉で持ちきりになった。

《お前ら害虫は早めに駆除するに限る。下僕二号め、馴れ馴れしく近づくでないわ》

なんて。
妹に張り付く虫退治に勤しんだ兄の涙ぐましい努力の現われだと知るのは。
被害者のサスケ只一人。


「いつか俺は九尾を越える」
どうやらサスケ。
復讐以上に困難な課題を己に課したようだった。


サスケファンを敵に回したかもしれない……あ、愛情は勿論ありますよ(土下座)ナルトは好奇心旺盛なだけです(爆笑)ちょっぴりカカシ先生嫌いな設定で(笑)ブラウザバックプリーズ