真夜中?は別の顔


薄明るい月の光が零れ落ちる。

昼間は忍の卵たちが一人前目指して勉学に励む学び舎。
忍術アカデミーの一室にて、少女はクスクスと笑う。

寝間着のままだろうか?
太ももまでの上着だけを見につけ、白い足先をブラブラ前後に動かす。
小さな爪が月の光を浴び微かに煌いていた。

指先にとめた小さな小鳥。
薄い黄色の小さな小鳥は夜だというのに目を開けている。
「本当、駄目だねぇ?」
見下ろした先には黒装束の男。切れ長の瞳に黒き長髪。
腕には暗部の刺青があり、ベスト着用から中忍以上だと推察できた。
「イタチ、何故一族を殺した?」
悠然と微笑み見下ろす先は赤い瞳。

木の葉の里でも一二を争う名家の証。
写輪眼。

少女は支配者の顔で男に問うた。
「己の器を図るために」
男は感情を一切見せずに淡々と答える。
「サスケはお前には渡さない。イタチ、お前は誓ったはずだ。力が欲しい、と。その為にアレを利用するのは許さない」
綺麗な蒼い瞳が、イタチという名の男の赤い瞳を捉えた。
「この里を綺麗に壊すための道具。サスケは一番上手く立ち回れる。だから、まだ、お前には渡せない」
物分りが悪い子供に、言い聞かせるように。
少女は己より遥かにとうのたった青年へ不遜な物言いをする。
対して青年は黙って少女の言葉を受けいれるだけ。
「これよりお前は里抜けをしろ。それから伝説の三忍、特に大蛇丸の動向を探れ。定期的に私に報告する事。後は己を磨きながらせいぜい足掻くがいい、私に殺されぬように」
「御意」
深々と一礼をして男は、うちは イタチは去っていった。



少女は月明かりの下、どこか目線を遠くに飛ばしたまま指先の小鳥に話しかける。
「ねぇ? 本当に馬鹿らしいと思わない?
最も綺麗で汚いこの里。今すぐ崩してやりたいけど、外側からじゃ駄目、内側からじゃないと崩れない。
だからイタチは邪魔だったの。だってアイツは誰よりも私に近いから」
《血を好むからか?》
小鳥の目が見る間に赤く染まり、少女へ言葉を返した。
「それもあるけど。あー見えてブラコンだから、イタチは。サスケを適当に使いたいならイタチは邪魔。
それに私の力に触発されて遂に自爆しちゃったじゃん。ばーかみたい。大人しく里に飼い殺されれば良かったものを。
里の意向に逆らい一族を皆殺し。復讐者役に弟を指名するなんて。とんだ失態だね」
うっすら冷笑を口元に浮かべ、少女は心底愉しそうにクスクス笑う。
《これからどうするのだ?》
よくよく聞けば小鳥は落ち着いた男の声音を持つ。
少女の過激ともとれる発言を聞いても怯む様子さえなく。
逆に落ち着き払っている。

「取りあえずは? 九尾の器にされた事さえ知らない哀れな少女。
うずまき ナルトは無謀にも『火影』を目指して日々頑張る。それで……数年後くらいに下忍になれれば御の字かな?
唯一私を知るイタチは里には戻れない。
私が利用するに値する駒を捜すには数年が必要だ。だからそれまでは大人しくしておく」

小さな手のひらを少女は広げた。

「血塗られたこの手で光をつかもうとは思わない。ただ静かな生活が欲しいだけ」
紫色に変色した、手のひらのあざは治りかけ。
後数時間もすれば完全に綺麗に元通りだ。
《毎夜の闇討ちに、毒の食事に、幼児虐待。よくも飽きないな》
小鳥は小さく首を傾げた格好のまま、やや呆れた口調で少女に囁く。
「お陰で騒がしい毎日だ。五月蝿くて敵わない。早く誰かを五代目に据えて、それから一番態の良いのを六代目に据える。そうすれば静かに余生が送れる」
幼いながら全てに疲れ切った顔。
少女は大きく息を吐き出した。
《回りくどい事を》
「恨み辛みを根に持って。
スレたフリして世を儚むのは簡単。
命を限界まで危険に晒せばそれなりに仲間も出来るかもね?でも私が欲しいのは平穏な毎日。
無いなら造ればいい、私にはそれだけの能力がある」
少女は月明かりを反射して淡く輝く金色の髪を後ろへ払いのけた。
「だから兄様。兄様も協力してね?」
魅惑的な笑みを浮かべる幼い少女。
《勿論。我も静かに余生を送る案には賛成だ》
兄と呼ばれた小鳥は即座に同意した。
「兄様? 暫くはその姿で窮屈だろうけど。私が、もう少し上手く立ち回れるようになるまで我慢して欲しいの」
小鳥に頬を寄せうっとりした声音で少女は囁いた。
《構わぬ、妹よ。それに未だ里人や木の葉の傷は癒えぬ。我が姿を見せようものならお前が傷つくだけだろう》
小鳥は嘴の先で少女の頬を軽く突く。
「ええ、分かってる。大丈夫よ、兄様。腐りきった世界をどう切り崩そうが私の勝手。大丈夫、誰も気付かずに傷つかず。極力失わせずに、この世界を回してみせる」
口角を少女は持ち上げる。

「優しい罠なら誰も咎めはしないでしょう。

甘い痛みなら誰も拒みはしないでしょう。

誰にも悟られずに私は私の望む平和を手に入れる。

私と兄様の為に」

少女の姿が教室から消えた。



こっちではイタチ&サスケあたりが下僕街道をまっしぐら(爆)ナルコは静かな余生の為に策略・謀略張り巡らして。女王です。彼女は血なまぐさいの嫌いじゃないんですけど、五月蝿い生活は嫌ってるので裏方に徹したい模様。なんて設定で。
まずはイタチの立ち位置?主従関係もないのに力の差がありすぎるので、イタチは下僕一号です(汗)ファンの方すみません。最初に謝っておきます(土下座)