どっちの『うちは』ショー
五代目火影候補・綱手を探す旅。
自来也と一緒なのは不本意。
ドベの演技をするのも面倒ならば大蛇丸と連絡を取れないのも不便で。
ナルトは密かに辟易しているところへ。
初代下僕が手下を連れてやってきた。
「……人間?」
大柄の鬼鮫を指差しイタチへ疑問系で問いかける。
鬼鮫は大胆なナルトの問いかけに内心驚きイタチの反応を待つ。
「ああ、人間だ」
無表情のまま答えるイタチ。
「ふぅん? 人間ねぇ」
ジロジロ不躾な視線を鬼鮫に送り、ナルトは腕組みしたままひとりごちる。
イタチは恭しくナルトの前に跪き、むき出しの足爪先に口付けを落とした。
この行動に動じないのはナルト。鬼鮫は驚いて瞬時に固まる。
イ、イタチさんが……壊れた???
混乱する鬼鮫を他所に次に、イタチはナルトの手を取り手のひらに口付け。
ナルトは口元だけを持ち上げ笑うのみ。
先に宿屋で見かけたナルトとはまるで違う。
「ナルト、俺と一緒に……」
「ちょっと待った――――っ!!」
言いかけるイタチを遮る第四の声。
写輪眼全開で宿屋二階廊下へ滑り込む黒い塊。
「おやおや、今日は珍しい日ですね。二度も違う写輪眼が見れるとは」
我を取り戻した鬼鮫が飛び込んできた黒い塊を一見して一言。
「うちは イタチ……アンタを殺す」
俺とナルトの将来の為に!!! ←復讐は二番目だ! (サスケ談)
低い憎しみと嫉妬の篭った声でサスケはイタチへ宣言した。
「ナルトの下僕一号はこの俺だ。二号」
ふん。
サスケを鼻で笑ってイタチは言い切る。
鬼鮫を除く三人には通じる話でも、鬼鮫には通じない。
顎を抜かさんばかりに大口開けて再度固まる鬼鮫。
サスケは憤怒に顔を赤くして奥歯をギリギリ噛み締めた。
「俺は常にナルトと一緒だ。それに若い。老けた一号よりかは見込みがある」
大して歳は違わないがサスケが弟なので、確かにイタチは年上だ。
サスケの精一杯の皮肉にイタチが目を細める。
「俺はお尋ね者じゃない。ナルトを面倒事に巻き込まないし、静かな生活を提供できる」
サスケは続けて更に言葉を重ねる。
イタチの額に青筋が浮かび上がった。
「魅力的だな、静かな生活は」
睨み合ううちは兄弟の気迫もなんのその。
微塵も気にせずナルトがのんびり口を挟む。
途端に勝ち誇った笑みを浮かべるサスケに、青筋の数を増やすイタチ。
「サスケ」
幾分目が据わった顔でイタチが弟の名を呼んだ。
サスケとナルトがイタチの声に反応して彼を見上げる。
「俺の方が実力も上でナルトの役に立っている。お前はナルトの荷物にしかならない。腑抜けたお前には相応しい立場だな」
冷笑を湛えたイタチの反撃にサスケは押し黙る。
「俺は定期的に里外の情報をナルトへ届け、時にナルトの望む情報も入手している。ランクから言えばSランクに該当するだろう。
またいざという時ナルトを守れる。未熟なお前にソレが出来るというのか? 里の中で這い蹲って生きるお前に」
仕事の出来る男。
を、前面に打ち出し余裕の笑みを浮かべるイタチに、サスケは返す言葉が無い。
「イタチの情報は細かいから助かっている」
ナルト、またもや自分は至って普通にコメントを漏らす。
ヒートアップする兄弟を横目に鬼鮫は茫然自失。
イタチの意外な側面と何故だか崇められているナルト。
関係がまったく分らない。
だが組織の使命は絶対なので。
一先ず弱そうなサスケから対処することにした。
手にしていた刀を取り出しチャクラを練り……実行、という所で。
「でかいの。気安く人の下僕に手を出すな」
ナルトは鬼鮫に言い訳をする時間を与えず蹴りを放つ。
丁度鬼鮫の脇腹にヒットした蹴りの威力は凄まじく。
廊下の端にまで鬼鮫は吹き飛ばされた。
その間もナルトを挟んで睨み合う、うちは兄弟。
「それで結局どちらを選ぶ」
イタチが遮られた話題を改めて口にした。
「兄様が認めた方」
対するナルトは考えもせず即行で返事を返す。
どっちも認めないだろうよ、あのシスコン妖狐は……。
姿は小鳥・中身は妖。
ナルト溺愛の自称・兄の姿を同時に思い浮かべ。
イタチ・サスケ双方が引き攣った笑みを浮かべる。
「? どうしたの??」
ハイテンションから一気に下降。
どよーん、なんて擬音が似合いそうなほど暗いチャクラを発するうちは兄弟。
小首を傾げてナルトは二人へ尋ねた。
「「なんでもない」」
台詞も同じなら喋るタイミングも同じです。
二人揃って声を合わせる。
アノうちは兄弟がこんなに息の合った行動を取れるだろうか? 否、取れない。
取れるはずが無い。
滅多に見ることの出来ない二人にナルトはクスクス笑い出した。
「……ちっ」
少し顔を赤くしてそっぽを向くサスケに。
「……」
直ぐに何時もの鉄面皮へ戻ってしまうイタチ。
この後タイミング悪く? 自来也が帰還し戦闘と相成るわけだが。
ナルトとの逢瀬を邪魔されて密かに怒っていたイタチの。
八つ当たりの矛先がサスケに向かったのは当然の結果で。
「どっちの料理ショーみたい」
ノされたサスケを見下ろしてナルトが一言。
最近木の葉でも放送が始まった、美味しい料理をどちらか選ぶ番組。
要はナルトにとり、それ位という立ち位置らしいうちは兄弟。
《どちらも駄目だがな》
続けて物陰に隠れた九尾も一言。
自分の妹が狙われた事実には腹が立つが。
今のところナルトにとっては自分が一番だと分かったので九尾機嫌が良い。
お陰で命拾いしたイタチと鬼鮫。
大人しく引いたイタチを鬼鮫は訝しむが、イタチの疲れきった様子に口を閉ざしたのだった。
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