『話題休閑・その名を知る者3その後』




は……一体何者なのだろう?


薄れゆく意識の中、レイドはぼんやりと目の前の鬼を見上げ意識を手放した。

「軟弱な」
気絶した騎士を見下ろし は嘆息。

そんな の背後ではクラレットが控えている。
不思議な主従関係にカシスは早速ついていく事を放棄。
トウヤから見るクラレット・ コンビは仲の良さそうな姉弟で。
ハヤトに言わせれば『鬼コーチコンビ』だそうだ。

「クラレット、レイドを回復。そこっ!!! 何度言ったら分かる? ハヤト、剣の振りが遅い。トウヤ、召喚術もきちんと使え」

ベルネット平原に の厳しい声が響き渡る。

  、気合が入っているな〜。今回は連れてきて正解だった。

召喚師の少女二人に教わって召喚術を使えるようになった、トウヤ・ハヤト。
トウヤは考え、 の叱責を受けてサモナイト石に手を添えた。

「だーっ!!!! なんで が一番偉そうなんだよっ!」

誰もが胸の奥に仕舞っていた疑問を、ハヤトがあっさりと口にする。

その間も『外道召喚師』なる人物達が徒党を組んでいる、野盗連中との戦闘は続行中だ。
ハヤトが横なぎに振り下ろした大剣が盗賊の脳天を直撃。
頂頭部を強打されて強盗は目を回し気絶した。

「僕が一番強いからに決まっているだろう!」
いつの間に調達していたのか、短剣の剣先をハヤトに向けふんぞり返る。
の小さな姿とは裏腹の尊大な態度にガゼルが肩を落とす。

「確かにお強いですよね、 さんは」
単独で荒野の野盗を退治した の実力を知るクラレットが笑顔で言い切った。

 クラレット……その確信はドコから!?

召喚魔法。
プチメテオを発動したトウヤと、召喚獣リザディオの攻撃を受け止めたハヤトは同時に思う。

「ガゼル、一番動きが良いのがガゼルだけだ。フォローするならトウヤの近く。戦士系のハヤトにはカシスがフォローに入れ」

クラレットとカシスが合流した夜。
クラレットと密談を終えた の態度は豹変。

それ迄も言動が怪しかったのに。
益々強気な子供にパワーアップ。
戦闘訓練と言い出して、ベルネット平原へフラットの面々を連れ出したのだった。

「へいへい」
ガゼルが の指示に従ってトウヤの近くへ移動する。
魔法発動後の、トウヤの隙を突こうとしたリザディオの足元へ投具を投げつけた。

「助かったよ、ガゼル」
のほほんと笑ってトウヤがガゼルに笑顔を見せる。

行き成り実戦をさせられている最中のマイペースぶり。
ガゼルは少々驚きながらもトウヤの適応の早さに舌を巻いた。

「ハヤト! 避けてよっ!」
小高い丘のリザディオ目掛けてカシスが召喚魔法を発動。
紫色の光を放ち表れるのは小さな悪魔。
指先に絡ませた炎をリザディオへ放つ。

「うわわっ」
咄嗟に斜め前に飛んでハヤトはカシスの炎を避ける。
夏の甲子園で見かけるヘッドスライディングのようなズサササーという、音がした。

「カシス!! 俺を殺す気かぁああぁぁ〜!!!」
半分涙目になってハヤトが拳を振り上げる。
背後のリザディオを包み込んだ炎の熱さはハヤトにも十二分に伝わっていた。

「馬鹿言わないでよ。不思議な力で召喚魔法使いたい放題のハヤトなら、一般人と違ってある程度は召喚魔法への免疫がある筈なの。
は考慮に入れてわたしに指示を出してるんだから」

 べー。

小さく舌を出してカシスがハヤトの文句に説明で答えた。

「そりゃ……そうだけど」

トウヤとハヤトにだけ備わった不思議な力。
召喚獣に懐かれる不思議な力。
その真名を探るのに危険が伴う誓約の儀式を容易くやってのける自分達。

「突然特別だって言われてもさ……誰かの力になれるのは嬉しいけど」

目まぐるしく展開する非日常の連続。
ハヤトだってハヤトなりに戸惑い、悩み、苦しんでいる。
当たり前が当たり前じゃない状況に。

「迷うな。迷うのはこの戦いに勝ってからにしろ。これは夢でもゲームでもない。油断すればハヤトも死ぬぞ」

身体の力が抜けそうになるハヤトの背中に の怒鳴り声が届く。

「わかってらぁあっ!」
悔しいが の言う通り。

ハヤトは数メートル先に転がった剣を拾上げ、リザディオの背後に控えていた外道召喚師目掛けて剣を振るった。
この後たっぷり数時間、ベルネット平原に訪れる無法者達を片っ端からノシていったフラットメンバーである。


「自分の良心が痛むかも……」
ため息ついて気絶している無法者達から金だけを奪い取るトウヤ。

背中に哀愁が漂っている。
トウヤの少し手前で同じ動作をするハヤトは乾いた笑みを浮かべていた。

「綺麗事だけでは生きてはいけない。所詮世の中金だ」
素晴らしいくらいに晴れ渡った青い空。
見上げて がしみじみ呟く。

「そうですねv」
の頭を撫で撫でしてクラレットが に賛同する。
レイドが何か言いたそうに口を開きかけてガゼルに止められた。

「まぁ……わたし達、押しかけてフラットに迷惑掛けてるし。装備品とか、サモナイト石とかは自分で調達した方が良いんじゃないかな〜っとは、思うケド」
気絶した外道召喚師から、未使用のサモナイト石を失敬し。
カシスが比較的前向きな発言をした。

「そうだよな……迷惑は掛けられないよな、あんまり」
諦めてトウヤが次の無法者の懐を漁る。

「リプレ達に武器のお金を貰うのも気が引けるぜ……仕方ねーか」
ハヤトも息を吐き出して、手に握り締めた金貨の感触を確かめたのだった。




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 神様教育を開始するの巻(笑) ブラウザバックプリーズ