『話題休閑静かなる凶鬼2その後』
夜。
は両隣にトウヤとハヤトを並べ、恒例のお月見タイム。
「え!? バノッサって孤児だったのか?」
奇声を発するハヤト。
対するトウヤは納得顔。
「当たり前だろう。両親が揃っていてあそこまで性格が捻じ曲がったら。ある意味それも奇跡だと思うが?」
呆れ果てた調子で
がハヤトを窘める。
「あっ……そっか、そうだよな。日本じゃあるかもしれないけど、サイジェントじゃあそこまで捻くれないよな」
う〜ん。
腕組みして唸るハヤトを見てトウヤが笑う。
「ここは流れる空気が違う感じがするからね。だからカノンは俺やクラレット達に帰るように勧めたんだね?
召喚師の見習いって言っても、クラレットは召喚師の家の子供だし。俺は望むままに召喚術が使える」
カノンの意見にやっと合点がいって、トウヤは北スラムへ目線を向ける。
「自分にナイモノばかりが、ある日突然目の前にずらーって並んだら。そりゃ気分悪いよな。俺だって凹むかもしれない」
トウヤと同じく北スラムへ顔を向けハヤトが独り言のように呟く。
「うん。次元は違うかも知れないけど分るな。小学生くらいの時、よくトウヤと比べられて凹んでたし、俺」
続けて言ったハヤトの発言に、トウヤが驚き。
穴が開くかという勢いでハヤトを凝視。
「……変なこと……言ったか? 俺」
じーっとトウヤに見詰められてハヤトは顔を強張らせる。
「いや。大方トウヤもトウヤで、ハヤトと比べられて凹んだ時期があったのだろう? 互いに無いもの強請りという奴だ」
が顔色を変えずに横から口を挟む。
「「無いもの強請り?」」
幼馴染の絆? を発揮して、トウヤとハヤトの疑問が見事にハモった。
「違うか? 憧れている人が居て、その者の真似をしても当人には成れまい。与えられた己の身体と気質で生き延びるしかないのだ。無いもの強請りであろう?」
「「成る程」」
会得した顔と手を叩く仕草まで同じタイミング。
感心して手を叩いたトウヤとハヤトに、
は片眉だけを持ち上げるに留まった。
同時刻。
北スラムのバノッサの家では。
「?」
己の額に指を当てて念仏でも唱えそうな勢いのカノン。
疑問に想いながらもバノッサはカノンの自由にさせる。
「バノッサさん、気にしないで下さい。え、えっと……そう! おまじないなんですっ」
不審気に細められたバノッサの瞳に、慌てて言い繕うカノンの姿があったそうな。
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