『話題休閑さまよう拳2その後』




フラットに世話になると決めた夜。
ジンガは屋根上に座る の姿を見つけ、自分も屋根上に登った。

「ジンガか?」
屋根に上がった瞬間。
ジンガの方へ顔を向けずに が名を呼ぶ。

「おう! なんか……泊まる所も手配してくれてありがとなっ! 助かったぜ」

お人好しのリプレがジンガを追い出すはずもなく。
ガゼルが渋い顔をしていたが、他のメンバーには温かく迎え入れられたジンガ。

なんだか久しぶりに、人の優しさに触れた気がするジンガである。

「僕に決定権があるわけではない。説明しただろう? 僕とトウヤ・ハヤトは名も無き世界から事故で召喚された異邦人だ。礼ならリプレやフラットのメンバーへ伝えろ」

肌を撫でる夜風が気持ち良い。
全身に涼やかな風を浴びて は大の字に屋根に寝転がった。

ジンガも に倣って大の字に寝転がる。

「皆にならもう言ってきた。なんてゆーかな、おれっち、色々な人間に会ってきてさ。それなりに人を見る目っていうかさ、相手が強いか弱いか位は分るんだ。
は強い。確証は無いんだけど、 はおれっちより強い。間違ってるか?」

額宛を外しジンガが隣の の気配を窺った。

「いや間違ってはいない。ジンガの見立ては正しいと思うぞ」

 体力的には劣るが、僕は神だからな。

言いかけて は止める。

 どの道、この世界の者々は豪胆というか長閑というか。
 我の主張を頭から信用しておらぬ。
 ならば得体の知れぬ高飛車な子供、という立場で居ようではないか。
 クララレット・カシスも秘密を抱える今は。

「へへっ……そっか…… は強いのか」
自分の考えが当たった事と、強者と出会えた喜び。
興奮気味のジンガに、 は己の額に手を当てる。

「予め断っておくが、僕は格闘は嗜まない。よって手合わせは断るぞ」
ジンガの願いを先読みして は釘を刺した。

真っ直ぐで迷いの無い魂の音。
ジンガの奏でる音は荒削りだが素朴な音色を発している。

 ジンガならば問題なかろう。
 迷子になるような音はせぬ。
 一人修行になるかも知れぬが、この街での経験はジンガにとっては貴重であろう。
 我が直々に相手をする必要はない。

にしか視えない音。
目を閉じて は表情を緩める。

「えっ!? 駄目なのか???」
「すまないな。ジンガより手のかかる輩が僕の周りには多いのだ」
酷く残念そうな声音のジンガに は詫びを入れる。

「なんだ……残念だなぁ」
拗ねた口ぶりでジンガは呟いて黙り込む。
「案じなくともジンガの修行の機会は沢山ある筈だ」
月夜を見上げ、 は暫くの間ジンガの発する音を堪能したのだった。


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 別にジンガ嫌いではなく、彼は精神的に案外しっかり系。だから神様も安心(笑)ブラウザバックプリーズ